更新日:2025.10.17皮膚科:アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
ニキビに効く漢方とは?|体質から整える改善例

ニキビ(尋常性ざ瘡)は、思春期だけでなく大人になってからも繰り返しやすい肌トラブルです。
スキンケアや皮膚科の治療を続けてもなかなか改善しない場合、体の内側に原因がある可能性があります。
東洋医学では、ニキビの発生を「気・血・水(き・けつ・すい)」の乱れによるものと捉え、体質から整えることで根本改善を目指すのが特徴です。
本記事では、ニキビの原因と治療方針を解説し、実際に漢方治療で改善した症例をご紹介します。
外からのケアでは治りにくい慢性的なニキビにお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。
1. ニキビとは
ニキビは、毛穴を中心に発生する慢性的な炎症性疾患で、主な原因とメカニズムは、毛穴(皮脂腺)の出口が皮脂や古い角質でふさがれ、アクネ菌が増殖して炎症を起こすことにあります。
このとき、皮脂の過剰分泌やホルモンバランスの乱れ、ストレスによる自律神経の不調などが関係し、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が乱れると、毛穴が詰まりやすくなります。
東洋医学では、体内の「気・血・水」のバランスが乱れると、血行不良や新陳代謝の低下を引き起こし、皮脂や古い角質が正常に排出されなくなると考えられています。その結果、毛穴に汚れが溜まり、炎症が起こることでニキビが発生します。
2. ニキビの原因と悪化メカニズム
ニキビの原因と悪化メカニズムは、主に皮脂の過剰分泌と毛穴の詰まりによって、アクネ菌(Cutibacterium acnes)が増殖し、炎症を起こすことにあります。
この炎症反応は、ホルモンバランスの変化やストレス、生活習慣の乱れなどの内的要因に加え、季節や環境などの外的要因によっても悪化します。
また、ターンオーバー(皮膚の新陳代謝)の乱れにより、角質が厚くなって毛穴がふさがることも、ニキビの発生を助長する重要なメカニズムです。下記はニキビができる原因や悪化する要因として挙げられます。
- ストレス:自律神経の乱れによる皮脂分泌の増加
- 不規則な食生活:糖質や脂質の過剰摂取
- 睡眠不足:ホルモンバランスの乱れ、皮膚の修復機能低下などを引き起こす
- 便秘:腸内環境の悪化による皮膚トラブル
- 環境の変化:気候や生活リズムの変化による肌の負担
- ホルモンバランスの乱れ:生理不順や更年期による卵巣機能の低下
3. ニキビの治療方法
ニキビの治療には、体の外側からのスキンケアと、内側からの体質改善の両方を意識することが大切です。
①外側からのケア
まずは何よりも皮膚表面を清潔に保つことが大事で、以下の4点を心がけると良いでしょう。
- 肌を清潔に保ち、適度な水分補給と保湿を心がけることでバリア機能を維持
- 過度な洗顔は皮脂の過剰分泌を招くため注意
- 枕カバーやタオルを清潔に保ち、雑菌の繁殖を防ぐ
- 手で頻繁に触れないようにする
最近では、皮膚科でのニキビ治療に、抗生剤や過酸化ベンゾイルを含む外用薬が使用されることが多く、炎症を抑える効果が期待できます。また、当店では、敏感肌の方でも安心して使える、炎症を抑える生薬成分を含んだスキンケア製品を各種取り揃えております。
②内側からのケア
次に、ニキビを効果的に治療するには日常生活を見直し、バランスの取れた食事や適度な運動、質の良い睡眠を意識することも重要です。
- バランスの取れた食事(脂っこい食べ物・辛い物・糖質の摂取を控える)
- 適度な運動や入浴習慣(新陳代謝を高め、肌のターンオーバーを整える)
- ストレス管理(ホルモンバランスを整えることでニキビの改善につながる)
特に、脂っこい食べ物や辛いもの、糖質の過剰摂取は体内に「熱」を生じさせ、炎症を悪化させる可能性があるため、なるべく控えることが大切です。
また、意識的に適度な運動や入浴習慣を取り入れることは、「気・血・水」の巡りを促し、新陳代謝を高め、肌のターンオーバーを整える助けになります。さらに、ストレス管理や睡眠の質を向上させることも、ホルモンバランスを整え、ニキビの改善につながります。
内側からのケアとして、漢方治療も有効な方法の一つです。
下図は、日本皮膚科学会のガイドラインに基づいた漢方薬の位置づけになります。漢方薬は、ニキビのすべてのステージで使用することができます。
ニキビ治療における漢方薬の位置づけ
コメド | 軽症 | 中等症 | 重症 | |
抗菌薬内服 | – | – | ○ | ○ |
抗菌薬外用 | – | ○ | ○ | ○ |
外用レチノイド | ○ | ○ | ○ | – |
BPO(過酸化ベンゾイル) | ○ | ○ | ○ | ○ |
漢方薬 | ○ | ○ | ○ | ○ |
4. ニキビ治療に用いられる代表的な漢方薬
ニキビの治療に用いられる代表的な漢方薬にはこのような方剤があります。
- 清上防風湯(せいじょうぼうふうとう)
- 桂枝茯苓丸加薏苡仁(けいしぶくりょうがんかよくいにん)
- 荊芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)
- 排膿散(はいのうさん)
- 当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
- 加味逍遥散(かみしょうようさん)
- 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
- 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)
ただし、体質や症状によって適切な処方は異なります。自己判断ではなく、専門家と相談しながら自分に合った漢方薬を選ぶことが大切です。
5. 実際の症例
症例①ストレスを伴うニキビの改善例(20代、女性)
3か月前に大きなストレスがあり、食生活の乱れが続いた後、眉間やおでこに赤いしこりを伴うニキビが多数発生。生理前には顎に赤黒いニキビができ、膿も目立つ。エステに通ったものの効果はなく、皮膚科で抗生剤と外用薬(クリンダマイシンリン酸エステル水和物、過酸化ベンゾイル)を処方されましたが、効果を感じられなかったため、富士堂にご来店されました。やせ型(BMI:17)、胃腸障害無し。
初回
おでこや眉間のニキビには強い炎症や化膿が見られたため、炎症を抑えることと排膿を促す目的で清上防風湯を処方しました。また、生理前の顎ニキビには赤黒く、瘀血の所見が見られたため、桂枝茯苓丸加薏苡仁を併用しました。
漢方薬:清上防風湯+桂枝茯苓丸加薏苡仁(煎じ薬)
1か月後
おでこのニキビは小さくなり、眉間と顎にはニキビ痕のみが残りました。
ニキビ痕の治療には、清上防風湯に四物湯を含んだ荊芥連翹湯に変更しました。
漢方薬:荊芥連翹湯+桂枝茯苓丸加薏苡仁(煎じ薬)
2か月後
ニキビは消失し、ニキビ痕のみが残りました。
エキス剤に変更し、経過観察後、治療終了となりました。
漢方薬:荊芥連翹湯+桂枝茯苓丸加薏苡仁(エキス剤)
考察
初回の清上防風湯をベースにした治療は高い効果を示しましたが、継続使用により体の冷えや、それに伴う胃腸の不調を引き起こすリスクがありました。そのため、ニキビ痕の治療に焦点を当てた1か月後には、速やかに荊芥連翹湯をベースにした処方に切り替え、全身の状態を良好に保ちながら順調に改善へと導くことができました。
症例②便秘、月経不順、PMSを伴うニキビの改善例(30代女性)
3か月前から顎まわりに硬いしこりを伴う黒っぽいニキビが出現し、同時期に職場の異動でストレスがかかり、便秘が悪化しました。また、月経不順が見られ、通常26~30日周期の月経が40日周期に延長しました。月経前には精神的不安も現れました。排便回数は1日1回から3日に1回に減少し、コロコロとした便が続き、残便感やガスも認められました。
その他の症状
・肩や首にこりが感じられる
・食欲は正常~旺盛
・足が冷えやすい
・顔がほてりやすく、赤くなって汗をかきやすい
・むくみや頭痛、動悸、生理痛は見られない
初回
顔のほてり、ストレスを強く感じる、便秘などの症候から桃核承気湯証、
月経不順、月経前の精神不安、足の冷えと顔のほてりなどから加味逍遙散証と判断しました。
漢方薬:桃核承気湯+加味逍遙散(エキス剤)
1か月後
ニキビは小さくなり、突起はほぼ消失しました。便秘も改善し、排便は1日1回のペースに戻りました。生理前の精神的不安定も解消され、安定した状態が続いています。仕事のストレスは依然としてありますが、ニキビの改善により精神的な負担は軽減されました。
漢方薬:桂枝茯苓丸+加味逍遙散(エキス剤)
ポイント:桃核承気湯の連用は二次性の便秘を引き起こす可能性があるため、徐々に桂枝茯苓丸にシフトしました。最終的には瀉下薬を使わなくても、ニキビが改善した状態を維持できるようになりました。
症例③清上防風湯が奏功しなかったニキビの改善例 (19歳、女性)
2年前から常にニキビができて悩まされていたそう。こめかみ、頬、おでこに小さい白ニキビが多数できるのを治療したいと富士堂にいらっしゃいました。
顔全体に皮脂が多く、お風呂上りはのぼせて赤みも気になるとのこと。皮膚科で処方された外用薬は刺激が強くて中止されました。また、清上防風湯を服用したものの効果が感じられなかったとのことでした。
その他の症状
・冷え:手足の先
・食欲:普通。麺類など炭水化物が好きで、たくさん食べるが太らない(BMI:17)。脂っこい食べ物はあまり摂取しない。
・胃腸:冷たいものを食べると便が緩くなることがある。
・汗:出にくい
・浮腫み:下半身にやや浮腫みがある
・運動:なし。大学はリモート授業で家にいる
・便通:良好
・低血圧傾向。脳貧血のような立ち眩みが時々ある
・睡眠:12時~9時。寝起きが悪い
・体力:ずっと横になっていたい。体力と筋力がないと自覚している
・月経:30~45日周期。中程度の月経痛。毎月鎮痛剤を服用
・精神面:特に気になることは無し
・舌診:嫩、苔薄、色鮮紅
初回
疲労倦怠(睡眠時間が長く、ゴロゴロしている)、痩せている、筋力が弱いといった所見から、気虚がベースにあり、補中益気湯証と判断しました。また、ニキビは主に小さな白ニキビで、熱や炎症を伴わない丘疹と考えられたため、清熱薬ではなく、排膿散及湯と薏苡仁を併用しました。
漢方薬:補中益気湯+排膿散及湯+薏苡仁(煎じ薬)
生活指導:
① 食事:麺類は炭水化物に偏りがちなので、タンパク質のおかずやスープを追加すること
② 歩く習慣をつける(最寄り駅の隣の駅まで歩く)
2か月後
ニキビの数は2/10に減少し、顔の赤みも5/10に軽減しました。立ち眩みも改善してきました。
漢方薬:補中益気湯+排膿散及湯+薏苡仁(煎じ薬)
3か月後
ニキビの数は1/10に減少し、ほとんど気にならなくなりました。エキス剤に変更し、経過観察後、治療終了となりました。
漢方薬:補中益気湯+排膿散及湯(エキス剤)
6. まとめ|漢方薬でのニキビ治療
ニキビは、単独で発症することもありますが、ストレスや生理不順、不眠、便秘などの他の体調不良を併発していることが多いです。漢方治療では、これらの体調のアンバランスを総合的に調整し、体調を整えていくことが特徴です。
スキンケアや生活習慣に気を付けても改善が見られない方や、皮膚科の治療ではなかなか満足できない方も、漢方を併用することで意外に早く改善し、さらに他の不調も同時に整えることが期待できます。
漢方治療における注意点として、急性期の治療を長期間続けることは、特に虚弱な方にとっては体のバランスを崩すリスクがあります。そのため、タイミングを見計らって体質に合わせた漢方に調整することが、継続的な改善に繋がります。また、症例③のように、一般的にはニキビに使用しない漢方であっても、「証」に合う場合は結果的にニキビの改善につながることもあります。
富士堂では、体質や症状に応じた漢方を、患者様のご希望に合わせて提案させていただきます。ぜひお気軽にご相談ください。
7. Q&A|ニキビ治療に関するよくあるご質問
Q1. なぜニキビは同じ場所に繰り返しできるのですか?
A. 同じ毛穴の炎症が完全に治らず、皮脂分泌のバランスが崩れたままになっているためです。血行不良やホルモンバランスの乱れ、体内に残る「熱」や「瘀血(おけつ)」が原因の場合もあります。体質を整えることで、再発を防ぐことができます。
Q2. 思春期ニキビと大人ニキビの原因は違いますか?
A. はい、異なります。思春期ニキビはホルモン分泌の活発化による皮脂過剰が主な原因ですが、大人ニキビはストレス・睡眠不足・便秘・冷えなど、体調や生活リズムの乱れが関係します。漢方では「気血水」のバランスを整えることで、両者に対応します。
Q3. ニキビは食べ物で悪化しますか?
A. はい。脂っこいものや甘いもの、辛いものを摂りすぎると体内に「熱」や「湿」がこもり、皮脂分泌が増えて炎症が悪化します。肌荒れを防ぐためには、野菜やタンパク質中心のバランスの取れた食事を意識することが大切です。
Q4. ニキビは漢方でどのくらいの期間で改善しますか?
A. 体質や症状の程度によりますが、一般的には1〜3か月程度で変化が現れ、3〜6か月で安定するケースが多いです。炎症の強い急性期から体質改善期へと段階的に処方を調整することで、再発しにくい肌を目指します。
Q5. 皮膚科の薬と漢方を一緒に使っても大丈夫ですか?
A. 多くの場合は併用可能です。皮膚科の外用薬で炎症を抑えながら、漢方で体の内側を整えると、より効果的に治療を進められます。ただし、体質や薬の組み合わせによっては注意が必要なため、医師や薬剤師に相談のうえで使用しましょう。富士堂では病院と並行して治療される患者様も多数診ておりますので、安心してご相談いただけます。
8. 富士堂の漢方が選ばれる理由
- ■オーダーメイドの治療
体質や症状を丁寧に確認し、あなたに合った処方をご提案します。 - ■豊富な臨床経験
年間7,000名以上の患者様にご相談いただいている専門家が対応します。 - ■安心の品質管理
信頼できる国内メーカーの生薬のみを使用し、安全性を徹底しています。 - ■オンライン相談対応
LINE・WeChat・Teamsで全国どこからでも相談可能。薬は配送にも対応します。 - ■カウンセリングの流れ
ご予約 → ご相談 → 漢方薬の選定 → ご確認・お会計 → 調剤・お渡し(発送)
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参考資料
・漢方求真 許志泉著 桐書房, pp.37
・日本皮膚科学会.(2023) ”尋常性痤瘡・酒皶治療ガイドライン2023”. pp.5-8
・清水宏(2018) “付属器疾患”,あたらしい皮膚科学 第3版 pp.363-365
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