2021.09.30所長・COVID-19記事
【東洋医学会シンポジウム】漢方医学の証、漢方の効き方|所長報告
「風邪には葛根湯ですよね!漢方薬は西洋薬と何が違うの?」
風邪なら葛根湯、頭痛には五苓散、などの漢方薬は一般的に有名ですが、果たして本当にそれがあなたに合った漢方薬なのでしょうか…?
その答えは、風邪という病、頭痛という症状だからといって、必ずしも葛根湯や五苓散が効くわけではありませんです。
例えば、葛根湯。臨床では、葛根湯がよく効く場合がありますが、効かないどころか食欲が低下して弱ってしまう方もいらっしゃいます。
”この病気だからこの漢方薬” ではなく、「葛根湯証を持った人か否か」を見極めることこそが、大事なポイントなんです。
富士堂漢方薬局・研究所所長 医学博士の許志泉先生は、漢方医学の根幹、最重要課題を「証とは何か」及び「方証対応関係をどう求めるか」として、日々研究・教育に取り組んでいます。
この課題について理解を深めてもらうために、今回は、先日開催された第71回日本東洋医学会学術総会における許先生の発表内容を要約してお伝えしたいと思います。
第71回 日本東洋医学会学術総会(2021年8月13日~15日 WEB開催)
東洋医学会学術総会URL⇒ https://convention.jtbcom.co.jp/71jsom/index.html
特別発表として許志泉先生が「証に随う、とは?」というテーマでー10か月間の不明熱に漢方が奏功した症例ーについて発表。
「証の三要素―症候・体質・病」「証の求め方」「方と証の対応関係」を解説しました。
私(所長 許志泉)の提唱する「SCI方証医学」およびそれに基づいた方証診断アプローチ法(1)に沿った臨床実践により、顕著な治療効果が多く見られます。
今回の発表では、不明熱の症例を通して、SCI方証医学での証に対する理解や方証診断プロセスを紹介しました。
ー症 例ー
30歳 女性 160㎝ 55Kg BMI=21.48
主訴 不明熱・咽痛10か月
現病歴
X-1年7月:多忙な仕事や精神ストレスなどに悩まされる。
X-1年8月: 突如37℃後半~38℃前半ほどの発熱、悪寒、咽頭痛が出現した。
X-1年11月ごろまで:毎月3回発熱し、熱が出ると1週間続いた。
X-1年12月~X年4月まで:週に1回、1-2日間の発熱がある。
⇒病院にて精査したが、熱発時のWBC(白血球)、CRP(炎症や細胞・組織破壊が起こると血中に増加するタンパク質)の上昇以外に異常は見られなかった。
熱発時はプレドニン25㎎、コルヒチン1㎎、シメチジン錠800mg/dを服用し熱は下がるが、服用しないと発熱が再燃する状態。
医師もステロイド剤のむやみな使用には抵抗があったとのこと。
X年5月~:微熱~38℃以上の熱が毎日出るようになった。
X年5月14日~:左首・肩・鎖骨のあたりに疼痛が出現。
X年5月25日~:左首・肩・鎖骨のあたりに疼痛が左脇にまで広がる。
X年5月31日:西洋薬での根治に中々至らず、先が見えない不安を抱え漢方治療のため来店される。
【漢方医学的所見】
-発熱は夕方に多く、熱発時は上半身や首に熱感と汗を伴い、寒気は伴わない。
-咽頭痛、頭痛、左首から左脇にかけての疼痛がみられた。
-2日に1回の排便で便は硬い。疲れを感じるが、仕事へは行けており30分~1時間の通勤時間にもこれといった不便は感じていない。
-1日1.5~2Lの水を飲み、尿は1日4-5回、色黄。
-腹厚力中、心窩部に軽い抵抗があり、脈浮沈中、力中。脈の左右差はない。
-舌暗紅苔薄黄。舌下静脈がやや怒張。
【漢方治療の経過】
X年5月31日:上記所見より薬証としては石膏証、人参証、大黄症、芒硝証があり、病としては熱病・陽明病・初証と本証にまたがる病態、方証としては「白虎加人参湯合大承気湯の証」だと診断し、白虎加人参湯合大承気湯の煎じ薬(石膏15g、知母5g 、甘草2g 、粳米8g 、人参3g 、大黄1g 、厚朴3g 、芒硝3g 、枳実3g)を2週間分投与した。
漢方服用5日目~:発熱・喉の痛みともになくなり、ステロイド剤の服用を中止。左肩の痛みは10段階(自己評価)のうち7に減少。便通は柔らかくなり、便の量も増えている。気分が良くなり出かけることも増えた。
その後、計3か月間の同処方の継続により発熱が再燃しなくなり漢方薬の服用終了となった。
また、初回漢方相談から6ヶ月目と25か月目に1回ずつ電話フォローをし、再燃がないことを確認した。
ー考 察ー
1.証に対するSCI方証医学基本認識
「証に随って治す」とは漢方医学の根本原則である。
証について、奥田謙蔵は「証とは疾病の証拠なり。即ち身体内に於ける病変を外に立証し、以て其の本体を推定し、之を薬方に質すの謂なり」(2)と記した。藤平健は「証とは、その病人について、現在現れている自他覚症状のすべてを生体に現れる闘病反応の漢方的表現方式にしたがって、整理し総括することによって得られる、その病人に対する、漢方的診断であり、同時に治療の指示である」(3)と唱えている。
これら前賢の論述を踏まえ研究を進め、臨床での操作性がより強い「証」の概念、また、証へのアプローチ法=「症候・体質・病から証を見出し、それに合った処方をする」を提唱するに至った。
SCI方証医学の基本模式(図1)では、まず証は症候・体質・病という三要素から成り立っており、この三要素は互いに影響しあう。
そして証とは症候・体質・病の重なり合う部分であり、それに対応した方薬がある、つまり方証対応の関係にある。
2.証の三要素:症候(S)、体質(C)、病(I)について
1.症候(S)について
症候は主観的症状と客観的な徴候を含み、望聞問切の四診および各種検査により症候情報が採取される。
また、症候は主症(ほぼ確実に出現する症候)、客症(時にでる症候)、証に影響しない症候、証に矛盾する症候(反証、仮証とも呼ばれる)の4つに分類できる。
2.体質(C)について
SCI方証医学では薬証による体質分類法を提唱する(図2)。
まず体質は、9種類の薬証体質(麻黄体質、桂枝体質、柴胡体質、半夏体質、大黄体質、石膏体質、黄耆体質、地黄体質、乾姜体質)と、それらの複合体質、そして上記の薬証体質に当てはまらない不明体質に分類することができる。
a.薬証体質…その薬証が長期持続的に存在することからくる体質を指す。
b.複合体質…2つ以上の薬証が長期持続的に存在する体質を指す。
c.不明体質…これらの分類に当てはまらないもの。数多く存在する。
3.病(I)について
まず、病に着目する意義としては、異なる病気なら病位、病因、病機、転帰、予後、治療(法・処方)は異なるものだが、中には共通項が見られる場合もある。そのため病の要素も証の診断につながる大きなヒントになることである。
相違をより重視する現代医学の病を経線とすれば、共通性をより重視する伝統医学の病は緯線である。診療の際、その経緯の線から位置を割り出す、つまり双方から病を把握することで正確に病態を特定できるのだと言えるであろう。
殊に、伝統中医学の病は方証診断に大きなヒントを与えてくれる場合が多い。六経病(太陽・少陽・陽明・太陰・少陰・厥陰)、痰飲病、黄疸、虚労、黄汗、鼓脹、便秘、奔豚気、聚症などである。
3.本症例における方証の診断プロセス
本症例は下記アプローチで診断を行った。
1.症候(S):
まず、寒気を伴わない発熱、口渇、汗が出る、という要素から石膏証は明らかであり、心下の抵抗と身体痛は人参証としてみることができる。従って、これは白虎加人参湯の証である可能性が高いと考えた。
また、便秘、便が硬いことは大黄証、芒硝証ともいえ、夕方の熱発を「日晡所(にっぽしょ)潮熱(ちょうねつ)」としてみると大承気湯の証である可能性も高いと考えた。
2.体質(C):
平素の状況が不明のため体質は判断しがたく、不明体質とした。
3.病(I):
熱病、陽明病、陽明病の初証と本証にまたがる病態と診断した。
そして陽明病の代表処方には白虎湯、白虎加人参湯、大承気湯、小承気湯などが挙げられ、症候で判断した内容との共通点が見えた。
これらの要素を踏まえ、方証的な診断としては白虎加人参湯合大承気湯の証と断定し、処方をした。その結果、5日目には発熱は治まりその後完治へ至った。
これをSCI方証医学の模式図に当てはめると下図(図3)のようになる。
図3の通り、
症候では石膏証、大黄証、芒硝証、人参証が見られ、体質としては不明体質となるため証的な意味はなく、病では熱病・陽明病・初証と本証のまたがる病態だと考えた。
→陽明病初証には白虎湯、白虎加人参湯が対応し、本証の治療処方として大承気湯が代表的である。これらによって、症候と病の重なりあう部分、つまり証は、白虎加人参湯合大承気湯の証という結論に至った。
ーまとめー
「証に随う」とは「証の三要素:症候、体質、病」という三者の重なりあう部分と薬方との対応関係を求めるプロセスである。
症候、体質、病という三要素から薬証方証をより厳密に定めることができ、より客観的に証の本質を求めることができると言える。
歴代の文献、現代の研究から「証の三要素」を抽出し、研究を深めまとめることにより方証医学の発展に大いに貢献できるであろう。
参考文献
(1)許志泉:漢方求真 体質・症候・病から探求する薬方の証、桐書房、東京、P10、2018
(2)奥田謙藏:傷寒論講義、医道の日本社、東京、P175-176、1965
(3)木村 康一、藤平 健:証ということ、日本東洋醫學會誌、182(2)、P41-43、1967
(所長 医学博士 中医師 許志泉)
西洋医学とは異なるアプローチで、あなたの症状や体質に合う富士堂の漢方治療をしてみませんか?原因不明の症状が続く方はぜひ一度、ご相談ください。
□漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
□オンライン相談について詳しくはこちら>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
関連ブログ>>原因不明の微熱が漢方2か月で平熱になりました|体験談
風邪なら葛根湯、頭痛には五苓散、などの漢方薬は一般的に有名ですが、果たして本当にそれがあなたに合った漢方薬なのでしょうか…?
その答えは、風邪という病、頭痛という症状だからといって、必ずしも葛根湯や五苓散が効くわけではありませんです。
例えば、葛根湯。臨床では、葛根湯がよく効く場合がありますが、効かないどころか食欲が低下して弱ってしまう方もいらっしゃいます。
”この病気だからこの漢方薬” ではなく、「葛根湯証を持った人か否か」を見極めることこそが、大事なポイントなんです。
富士堂漢方薬局・研究所所長 医学博士の許志泉先生は、漢方医学の根幹、最重要課題を「証とは何か」及び「方証対応関係をどう求めるか」として、日々研究・教育に取り組んでいます。
この課題について理解を深めてもらうために、今回は、先日開催された第71回日本東洋医学会学術総会における許先生の発表内容を要約してお伝えしたいと思います。
■日本東洋医学会学術総会シンポジウムでの発表
第71回 日本東洋医学会学術総会(2021年8月13日~15日 WEB開催)
東洋医学会学術総会URL⇒ https://convention.jtbcom.co.jp/71jsom/index.html
特別発表として許志泉先生が「証に随う、とは?」というテーマでー10か月間の不明熱に漢方が奏功した症例ーについて発表。
「証の三要素―症候・体質・病」「証の求め方」「方と証の対応関係」を解説しました。
(参照:https://convention.jtbcom.co.jp/71jsom/index.html)
■10か月間の不明熱に漢方が奏功した症例(許志泉解説)
私(所長 許志泉)の提唱する「SCI方証医学」およびそれに基づいた方証診断アプローチ法(1)に沿った臨床実践により、顕著な治療効果が多く見られます。
今回の発表では、不明熱の症例を通して、SCI方証医学での証に対する理解や方証診断プロセスを紹介しました。
ー症 例ー
30歳 女性 160㎝ 55Kg BMI=21.48
主訴 不明熱・咽痛10か月
現病歴
X-1年7月:多忙な仕事や精神ストレスなどに悩まされる。
X-1年8月: 突如37℃後半~38℃前半ほどの発熱、悪寒、咽頭痛が出現した。
X-1年11月ごろまで:毎月3回発熱し、熱が出ると1週間続いた。
X-1年12月~X年4月まで:週に1回、1-2日間の発熱がある。
⇒病院にて精査したが、熱発時のWBC(白血球)、CRP(炎症や細胞・組織破壊が起こると血中に増加するタンパク質)の上昇以外に異常は見られなかった。
表:症例血液検査値(CRP・WBC)
熱発時はプレドニン25㎎、コルヒチン1㎎、シメチジン錠800mg/dを服用し熱は下がるが、服用しないと発熱が再燃する状態。
医師もステロイド剤のむやみな使用には抵抗があったとのこと。
X年5月~:微熱~38℃以上の熱が毎日出るようになった。
X年5月14日~:左首・肩・鎖骨のあたりに疼痛が出現。
X年5月25日~:左首・肩・鎖骨のあたりに疼痛が左脇にまで広がる。
X年5月31日:西洋薬での根治に中々至らず、先が見えない不安を抱え漢方治療のため来店される。
【漢方医学的所見】
-発熱は夕方に多く、熱発時は上半身や首に熱感と汗を伴い、寒気は伴わない。
-咽頭痛、頭痛、左首から左脇にかけての疼痛がみられた。
-2日に1回の排便で便は硬い。疲れを感じるが、仕事へは行けており30分~1時間の通勤時間にもこれといった不便は感じていない。
-1日1.5~2Lの水を飲み、尿は1日4-5回、色黄。
-腹厚力中、心窩部に軽い抵抗があり、脈浮沈中、力中。脈の左右差はない。
-舌暗紅苔薄黄。舌下静脈がやや怒張。
【漢方治療の経過】
X年5月31日:上記所見より薬証としては石膏証、人参証、大黄症、芒硝証があり、病としては熱病・陽明病・初証と本証にまたがる病態、方証としては「白虎加人参湯合大承気湯の証」だと診断し、白虎加人参湯合大承気湯の煎じ薬(石膏15g、知母5g 、甘草2g 、粳米8g 、人参3g 、大黄1g 、厚朴3g 、芒硝3g 、枳実3g)を2週間分投与した。
漢方服用5日目~:発熱・喉の痛みともになくなり、ステロイド剤の服用を中止。左肩の痛みは10段階(自己評価)のうち7に減少。便通は柔らかくなり、便の量も増えている。気分が良くなり出かけることも増えた。
その後、計3か月間の同処方の継続により発熱が再燃しなくなり漢方薬の服用終了となった。
また、初回漢方相談から6ヶ月目と25か月目に1回ずつ電話フォローをし、再燃がないことを確認した。
ー考 察ー
1.証に対するSCI方証医学基本認識
「証に随って治す」とは漢方医学の根本原則である。
証について、奥田謙蔵は「証とは疾病の証拠なり。即ち身体内に於ける病変を外に立証し、以て其の本体を推定し、之を薬方に質すの謂なり」(2)と記した。藤平健は「証とは、その病人について、現在現れている自他覚症状のすべてを生体に現れる闘病反応の漢方的表現方式にしたがって、整理し総括することによって得られる、その病人に対する、漢方的診断であり、同時に治療の指示である」(3)と唱えている。
これら前賢の論述を踏まえ研究を進め、臨床での操作性がより強い「証」の概念、また、証へのアプローチ法=「症候・体質・病から証を見出し、それに合った処方をする」を提唱するに至った。
図1.SCI方証医学の基本模式
SCI方証医学の基本模式(図1)では、まず証は症候・体質・病という三要素から成り立っており、この三要素は互いに影響しあう。
そして証とは症候・体質・病の重なり合う部分であり、それに対応した方薬がある、つまり方証対応の関係にある。
2.証の三要素:症候(S)、体質(C)、病(I)について
1.症候(S)について
症候は主観的症状と客観的な徴候を含み、望聞問切の四診および各種検査により症候情報が採取される。
また、症候は主症(ほぼ確実に出現する症候)、客症(時にでる症候)、証に影響しない症候、証に矛盾する症候(反証、仮証とも呼ばれる)の4つに分類できる。
2.体質(C)について
SCI方証医学では薬証による体質分類法を提唱する(図2)。
図2.薬証体質分類法
まず体質は、9種類の薬証体質(麻黄体質、桂枝体質、柴胡体質、半夏体質、大黄体質、石膏体質、黄耆体質、地黄体質、乾姜体質)と、それらの複合体質、そして上記の薬証体質に当てはまらない不明体質に分類することができる。
a.薬証体質…その薬証が長期持続的に存在することからくる体質を指す。
b.複合体質…2つ以上の薬証が長期持続的に存在する体質を指す。
c.不明体質…これらの分類に当てはまらないもの。数多く存在する。
3.病(I)について
まず、病に着目する意義としては、異なる病気なら病位、病因、病機、転帰、予後、治療(法・処方)は異なるものだが、中には共通項が見られる場合もある。そのため病の要素も証の診断につながる大きなヒントになることである。
相違をより重視する現代医学の病を経線とすれば、共通性をより重視する伝統医学の病は緯線である。診療の際、その経緯の線から位置を割り出す、つまり双方から病を把握することで正確に病態を特定できるのだと言えるであろう。
殊に、伝統中医学の病は方証診断に大きなヒントを与えてくれる場合が多い。六経病(太陽・少陽・陽明・太陰・少陰・厥陰)、痰飲病、黄疸、虚労、黄汗、鼓脹、便秘、奔豚気、聚症などである。
3.本症例における方証の診断プロセス
本症例は下記アプローチで診断を行った。
1.症候(S):
まず、寒気を伴わない発熱、口渇、汗が出る、という要素から石膏証は明らかであり、心下の抵抗と身体痛は人参証としてみることができる。従って、これは白虎加人参湯の証である可能性が高いと考えた。
また、便秘、便が硬いことは大黄証、芒硝証ともいえ、夕方の熱発を「日晡所(にっぽしょ)潮熱(ちょうねつ)」としてみると大承気湯の証である可能性も高いと考えた。
2.体質(C):
平素の状況が不明のため体質は判断しがたく、不明体質とした。
3.病(I):
熱病、陽明病、陽明病の初証と本証にまたがる病態と診断した。
そして陽明病の代表処方には白虎湯、白虎加人参湯、大承気湯、小承気湯などが挙げられ、症候で判断した内容との共通点が見えた。
これらの要素を踏まえ、方証的な診断としては白虎加人参湯合大承気湯の証と断定し、処方をした。その結果、5日目には発熱は治まりその後完治へ至った。
これをSCI方証医学の模式図に当てはめると下図(図3)のようになる。
図3、不明熱の症例における方証のアプローチ
図3の通り、
症候では石膏証、大黄証、芒硝証、人参証が見られ、体質としては不明体質となるため証的な意味はなく、病では熱病・陽明病・初証と本証のまたがる病態だと考えた。
→陽明病初証には白虎湯、白虎加人参湯が対応し、本証の治療処方として大承気湯が代表的である。これらによって、症候と病の重なりあう部分、つまり証は、白虎加人参湯合大承気湯の証という結論に至った。
ーまとめー
「証に随う」とは「証の三要素:症候、体質、病」という三者の重なりあう部分と薬方との対応関係を求めるプロセスである。
症候、体質、病という三要素から薬証方証をより厳密に定めることができ、より客観的に証の本質を求めることができると言える。
歴代の文献、現代の研究から「証の三要素」を抽出し、研究を深めまとめることにより方証医学の発展に大いに貢献できるであろう。
参考文献
(1)許志泉:漢方求真 体質・症候・病から探求する薬方の証、桐書房、東京、P10、2018
(2)奥田謙藏:傷寒論講義、医道の日本社、東京、P175-176、1965
(3)木村 康一、藤平 健:証ということ、日本東洋醫學會誌、182(2)、P41-43、1967
(所長 医学博士 中医師 許志泉)
西洋医学とは異なるアプローチで、あなたの症状や体質に合う富士堂の漢方治療をしてみませんか?原因不明の症状が続く方はぜひ一度、ご相談ください。
□漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
□オンライン相談について詳しくはこちら>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
関連ブログ>>原因不明の微熱が漢方2か月で平熱になりました|体験談
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