更新日:2025.12.26皮膚科:アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
皮膚のかゆみに効く漢方薬とは?原因・体質別の改善法を専門家が解説

季節の変わり目や乾燥する冬になると、皮膚のかゆみや湿疹に悩む方が増えます。皮膚のかゆみは、外的刺激だけでなく体の中の「熱」や「血の巡り」、「潤い不足」などのバランスの乱れが関係しています。本記事では、皮膚のかゆみの原因、タイプ別の特徴、漢方薬による体質改善の方法を、富士堂漢方薬局の専門家が詳しく解説します。
1. 皮膚のかゆみとは?|症状と原因を解説
皮膚のかゆみ(掻痒)は皮膚に何かが起きているサインであると同時に、掻くことで悪化しやすい厄介な症状でもあります。乾燥・アレルギー・摩擦などの外側の刺激だけでなく、体調やストレス、血流・代謝の乱れなど内側のコンディションも絡み合って、同じかゆみでも出方や長引き方が変わります。
以下ではまず、かゆくなるメカニズムを押さえたうえで、原因を外的・内的に整理し、最後に部位別の特徴をまとめて解説します。
❶皮膚のかゆみのメカニズム
かゆみは、皮膚に分布する神経(知覚神経)が刺激され、その信号が脳に伝わることで「かゆい」と認識される現象です。刺激の入り口は主に2つあります。
- 炎症・アレルギー反応(化学的刺激)
アレルゲンや刺激物に反応すると、皮膚の細胞や免疫細胞からヒスタミンをはじめ、さまざまな炎症性物質が放出されます。これらが神経を刺激し、かゆみを引き起こします。ヒスタミンは“かゆみ物質”として代表的ですが、実際にはヒスタミン以外の経路(ヒスタミン非依存性)もあり、抗ヒスタミン薬だけでは治まりにくいかゆみがあるのもこのためです。 - 皮膚バリアの低下(物理的刺激が入りやすい状態)
皮膚表面の角層が乾燥や摩擦で傷むと、水分が逃げやすくなり、外からの刺激が入り込みやすくなります。結果として、衣類のこすれなどの軽い刺激でも神経が反応し、かゆみが出やすくなります。
そして、かゆみで最も重要なのが『かゆみ→掻破(そうは)→炎症→更なるかゆみ』という悪循環です。掻く行為そのものが皮膚を傷つけ、炎症を増やし、神経を過敏にして、範囲も強さも拡大していきます。夜に無意識に掻いてしまい、朝に悪化しているのは典型例です。
❷主な原因(外的・内的)
かゆみの原因は「外側」と「内側」に分けて整理すると、自分の状況を捉えやすくなります。実際は両方が重なっているケースが多く、外的に見える症状が、内側の乱れで長引くことも少なくありません。
外的要因:皮膚を直接刺激するもの
- 乾燥(ドライスキン)
冬・季節の変わり目・入浴や洗浄のしすぎで皮膚の水分と油分が減ると、バリア機能が落ち、刺激に敏感になります。粉を吹く、つっぱる、細かいひび割れがある場合は乾燥が関与しやすいです。 - アレルギー(花粉・ハウスダスト・食物・動物など)/接触刺激(洗剤・化粧品・金属など)
赤みや湿疹、じんましん様の膨らみが出ることも。新しい化粧品、柔軟剤、ボディソープ、アクセサリーなどがきっかけになる場合があります。 - 衣類の摩擦・汗・温度変化
ウールや化学繊維、タグのこすれ、汗の刺激で悪化しやすいタイプ。暖房で体が温まったタイミングや運動後に増悪することもあります。 - 掻く・こする習慣
かゆみがあると無意識に触ってしまい、皮膚が荒れてさらにかゆくなる悪循環に入ります。
内的要因:体のコンディションがかゆみを“続かせる”もの
- 血行不良・冷え・巡りの低下
皮膚は血流から栄養と潤いを受け取ります。巡りが落ちると乾燥しやすく、治りも遅れやすい。冷えやすい、くすみやすい、同じ場所に繰り返し出るなどの背景として疑われることがあります。 - ストレスによる自律神経の乱れ(かゆみの増幅)
ストレスや不安が続くと、かゆみが増え、かゆみが眠りを妨げ、さらにストレスが強まる——というサイクルに入りやすいことが知られています。特に「寝る前に気になって掻いてしまう」「考えごとで悪化する」タイプは、この影響が重なっている可能性があります。 - 内臓機能低下や代謝の乱れ(全身のかゆみの背景)
皮膚だけの問題に見えて、体の状態が影響しているケースもあります。たとえば、肝胆道系(胆汁鬱滞)、腎機能、糖代謝、甲状腺など全身状態とかゆみの関連が指摘されています。
皮膚の表面に出ている症状は「外的刺激」だけで説明できないことがあるため、漢方では、こうした“内側のバランス(熱・潤い・巡り・ストレス影響など)”も含めて捉え、再発しにくい方向へ整える発想を取ります。
※ただし、全身に広がるかゆみ、黄疸(皮膚や白目が黄色い)、発熱や強い倦怠感、急速に悪化する湿疹、掻き壊しの化膿などがある場合は、皮膚以外の要因や感染が関係することもあるため、早めに医療機関で評価が必要です。
❸よくある症状・部位別の特徴
どこが、いつ、どんな風にかゆいかは、原因を推定する大きなヒントになります。ここでは代表的な部位ごとによくあるかゆみのパターンをご紹介します。
手・指(手荒れ、指の間)
- 水仕事・洗剤・アルコール消毒で悪化しやすい
- 乾燥+小さな亀裂、赤み、湿疹が出やすい
- 「しみる」「切れる」「かゆい」がセットになりやすい
足(すね、足首)
- 冬に多い典型が乾燥性のかゆみ
- 粉を吹く、白っぽい細かい落屑、掻き跡が残る
- 夜間に増悪しやすく、寝ている間に掻いて悪循環に入りやすい
顔(頬、まぶた周り)
- 化粧品、クレンジング、花粉、マスク摩擦など外的要因の影響が出やすい
- 赤み・ヒリつき・かゆみが同時に出ることも
- 皮膚が薄い部位なので、刺激の強いケアで悪化しやすい
頭皮
- フケ・乾燥、皮脂バランスの乱れ、整髪料、シャンプーの刺激が関与しやすい
- かゆみと同時に「細かいフケ」「ベタつき」「赤み」が出る場合も
- ストレスや睡眠不足が引き金になる人もいます(増幅要因として)
背中・体幹(下着の当たるところ、汗がたまりやすいところ)
- 汗・乾燥・衣類の摩擦が重なりやすい
- 入浴後や暖房で体が温まったときに“ムズムズ”が強まることがある
- 掻き跡が広がりやすく、範囲が大きく見えがち
また、同じかゆみでも、下のような傾向があると、対策の方向性が変わります。
- 掻くと熱くなる/赤みが強い/ほてる
→ 炎症(熱感)が前面に出ているタイプの可能性 - 粉を吹く/つっぱる/冬に悪化/かさかさ
→ 乾燥(潤い不足)優位の可能性 - 夜にかゆくなる/寝る前に悪化/考えごとで増える
→ ストレス・自律神経の影響が増幅している可能性 - 同じ場所に繰り返す/治りが遅い/冷えやすい
→ 巡りの要素や生活習慣が関与している可能性(要確認)
ここまでの整理で大事なのは、「皮膚のかゆみ=皮膚だけの問題」と決めつけないことです。外的刺激(乾燥・摩擦・アレルギー)を押さえつつ、内側の乱れ(熱・潤い・巡り・ストレス影響)が重なると長引きやすいことが傾向としてよく見られ、富士堂ではそれらに対して漢方薬を用いて改善していくアプローチを行います。
2. 皮膚のかゆみの治療法|西洋医学と漢方の違い
皮膚のかゆみは「かゆみを止める(対症)」と「かゆみが起きる土台を整える(再発予防)」の両輪で考えると、選択がブレにくくなります。西洋医学は、炎症やアレルギー反応を速やかに鎮める手段が豊富です。一方、漢方は「なぜその人に、なぜ今そのかゆみが出ているのか」という背景(体質・コンディションの偏り)に着目し、内側からの偏りを調整して、繰り返しにくい状態を目指すのが得意分野です。
❶西洋医学での治療
西洋医学の基本はシンプルで、「炎症を抑える」「皮膚バリアを回復させる」「悪化因子を避ける」です。特に湿疹・アトピー性皮膚炎では、外用薬(炎症コントロール)+保湿(バリア改善)が治療の土台になります。
1)保湿ケア(エモリエント)
乾燥はそれ自体が強い“かゆみスイッチ”です。入浴後など皮膚が乾く前に保湿し、皮膚のバリア機能を立て直すのが基本動作になります。症状が軽い部位では保湿剤のみで改善するケースもあります。
2)外用ステロイド(炎症を鎮める主役)
赤み・腫れ・湿疹など炎症がある場合、外用ステロイドで炎症を落とすことが重要です。アトピー性皮膚炎では外用ステロイドが治療の基本薬剤と位置づけられています。
また、炎症が落ち着いた後は急にやめるのではなく、状態を見ながら漸減・間欠投与などで調整する考え方も示されています。
3)抗ヒスタミン薬(かゆみの補助)
かゆみが強く睡眠に影響する場合などに、抗ヒスタミン薬が補助的に使われることがあります(特にアトピー性皮膚炎の“かゆみ対策”として併用される場面)。
一方で、皮膚瘙痒症(さまざまな原因を含む「皮膚のかゆみ」)に対しては、抗ヒスタミン薬の有効性を高いレベルで裏づける研究が十分ではない、という整理もあります。
4)その他(状態により追加)
症状が強い/長引く/感染が疑わしい、などの場合は追加の治療(外用薬の種類変更、内服、専門治療など)が検討されます。
❷漢方での治療
漢方の発想は「同じ“かゆみ”でも、起き方が違えば処方も変わる」です。代表的には次の3方向で考えます。
- 熱(炎症・ほてり)を冷ます:赤み、熱感、掻くと熱くなる、イライラ・のぼせを伴う
- 血(巡りや栄養)を整える:乾燥、肌のつや低下、冷え、慢性化、掻き壊しが続く
- 湿(じゅくじゅく・分泌物)をさばく:湿疹がじゅくじゅく、分泌物が多い、ベタつき
ここで重要なのが、漢方は「かゆみに効く薬」ではなく、“その人の状態”に合う薬を当てるという点です。添付文書にも、投与にあたって証(体質・症状)を考慮し、経過を観察して改善が乏しければ漫然と継続しない旨が明記されています。
主要処方のイメージ(体質・症状×ポイント)
下表は“覚えやすい臨床イメージ”として整理しつつ、効能効果は医療用添付文書の記載に準拠しています。
| 方剤名 | 主な体質・症状(目安) | 特徴・ポイント |
| 消風散 | 分泌物が多く、かゆみが強い慢性の皮膚病(湿疹、蕁麻疹、皮膚瘙痒症など) | “強いかゆみ×慢性×じゅくじゅく寄り”の軸で検討されやすい。甘草を含むため低カリウム血症などに注意。 |
| 当帰飲子 | 冷え症傾向で、分泌物が少ない慢性湿疹・かゆみ | “乾燥寄り×慢性×冷え”の軸。甘草を含むため血圧・カリウム等に留意。 |
| 温清飲 | のぼせ・血の道症などの背景を伴うタイプに用いられる(体質を見て選ぶ) | サンシシ含有処方は長期投与(多くは5年以上)で腸間膜静脈硬化症リスクが注意喚起されている。 |
| 黄連解毒湯 | のぼせ気味・顔色赤め・いらいら傾向+湿疹/皮膚炎/皮膚瘙痒症など | “熱が強い”側の整理で検討されやすい。乾燥を伴う場合は四物湯が配合された温清飲を検討。サンシシ含有の長期投与リスク、間質性肺炎・肝機能障害など重大な副作用も添付文書で注意喚起。 |
| 十味敗毒湯 | 化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、蕁麻疹、急性湿疹など | “急性の炎症・腫れ・化膿寄り”の初期に検討されることがある。甘草含有の注意あり。 |
どう選ぶ?西洋医学と漢方の使い分け
使い分けるには「スピード重視か」「再発予防まで見たいか」「原因が単純か複合か」に着目していきましょう。
- 赤み・熱感・湿疹が強い/掻き壊して悪化している
→ まずは炎症を落とす(外用ステロイド+保湿を基本に、清熱・止痒の漢方を併用) → そのうえで、再発しやすい背景(乾燥体質、冷え、ストレスによる悪化など)が強い場合には、体質や生活背景を踏まえて、根本的な要因にアプローチする漢方を併用することを検討する - 乾燥が主で、季節・生活ストレスでぶり返す/長引く
→ 保湿の徹底+必要に応じた治療を継続(まず“皮膚の土台”を作る)
→ “乾燥×冷え×慢性”など体質サインがそろう場合は、当帰飲子など体質側からの整理が合うことがある - 原因が複合(ストレス、自律神経、ホルモン、胃腸、冷え、睡眠不足)で説明しにくい
→ 西洋医学的に危険な原因を除外しつつ、漢方で「型」を整理して介入点を作る、という組み立てが有効になりやすい
❸漢方薬の選び方と服用の注意点
1)「症状」だけで決めない(体質とセットで決める)
同じ“かゆみ”でも、
- じゅくじゅく・分泌物が多いのか(湿)
- 赤い・熱い・のぼせるのか(熱)
- 乾燥して粉をふくのか(血・潤い不足)
で、狙う方向が変わります。ここを外すと「効かない」だけでなく、症状が悪化することもあり得ます(例:乾燥が強い皮膚疾患では消風散で悪化し得る。
2)長引く・繰り返す場合は“自己判断ループ”を止める
かゆみは、乾燥やアレルギーだけでなく、肝胆・腎、内分泌、感染、薬疹など幅が広い症状です。改善が乏しい/急に悪化した/全身症状を伴う場合は、専門家に早めに相談し、鑑別と治療設計をセットで進めるのが最短ルートになります。
場合によっては西洋薬と同時並行して漢方薬で治療を進めることがベストになるケースも。富士堂では患者さんひとりひとりの体質や状況に合わせて治療プランを立てていきます。
3. 富士堂の皮膚治療|SCI方証医学による体質別アプローチ
皮膚のかゆみは、外用薬や保湿で一時的に落ち着いても、「季節が変わるとぶり返す」「ストレスがかかると再燃する」「治ったと思ったら別の部位に出る」といった形で、繰り返して悩まされる方が少なくありません。
富士堂では、かゆみを単なる“皮膚表面の炎症”としてだけ捉えるのではなく、症状(Symptom)・体質(Constitution)・病(Illness)の三側面から総合的に分析し、根本原因にアプローチします。
この考え方を体系化したのが、富士堂独自の診療理論である「SCI方証医学」です。難解だったり定義が曖昧になりやすい体質概念を、客観的に整理して見立てと処方選びに落とし込むことで、解釈のブレを抑え、再現性のある治療設計につなげています。
❶SCI方証医学における皮膚症状の捉え方
SCI方証医学では、かゆみを「皮膚がかゆい」という一点だけで判断しません。
同じ“かゆみ”でも、起こり方・背景・体の反応は人によって異なるためです。
S(症状):今、皮膚に何が起きているか
まずは、皮膚に表れている現象を具体的に言語化します。
- 掻痒(かゆみ)の強さ:我慢できる/眠れないほど強い、など
- 炎症の出方:赤みが強い、熱感がある、ジュクジュクする、乾燥して粉をふく
- 時間帯・誘因:夜に悪化、入浴後に増える、汗で悪化、衣類で刺激される
- 経過:急性か、慢性で繰り返すか、掻き壊しや色素沈着があるか
ここで重要なのは、症状を“皮膚の現象”として丁寧に拾うことです。
これが、次のC(体質)とI(病)の推定精度を大きく左右します。
C(体質):かゆみを起こしやすい「土台」はどこにあるか
次に、「なぜその人は、同じ刺激でもかゆみが出やすいのか」を体質面から整理します。代表的な考え方の例として、以下のようなタイプが挙げられます。
地黄体質…潤い不足からくるかゆみ
➤ 潤いを保つ力が弱く、皮膚や粘膜が乾燥しやすいタイプです。小腹不仁(下腹部が上腹部より柔らかく力がない状態)を背景に、ほてりやすさ、乾燥、便秘傾向、下半身の力が入りにくいといった特徴を伴うことがあります。
皮膚のバリア機能が低下しやすく、乾燥によるかゆみが出やすいのが特徴で、夜間や季節の変わり目、入浴後などに悪化しやすい傾向があります。
柴胡体質…気の巡りの乱れによるかゆみ
➤ 胸脇苦満(胸からわき腹にかけての張りや詰まり感)を伴い、気の巡りが滞りやすいタイプです。ストレスや緊張が続くことで、自律神経のバランスが乱れ、皮膚症状としてかゆみが現れやすくなります。
石膏体質…過剰な熱がこもって起こるかゆみ
➤ 体の内側に余分な熱がこもりやすく、赤み・熱感を伴うかゆみが出やすいタイプです。汗をかきやすい、口渇が強い、暑がりで冷たい飲み物を好むといった傾向を伴うことがあります。
黄耆体質…皮膚を守る力が弱いタイプ
➤ 皮膚の防御力や回復力が弱く、刺激に対して敏感に反応しやすいタイプです。疲労がたまると症状が出やすい、汗をかくと体調を崩しやすいなど、全体的に体力が低下しやすい傾向があります。
このように、かゆみを単に抑えるだけでなく、「なぜこの人はかゆみが出やすいのか」を体質の土台から整理することで、対症的な対応とあわせて、再発しにくい状態を目指すことが可能になります。
I(病):かゆみを固定化・再燃させる病(西洋医学の病名、症候群、中医学病名)は何か
最後に、かゆみが長引いたり、毎年繰り返したりする背景にある病名(西洋医学の病名、症候群、中医学病名)を捉えます。かゆみで多いのは、次のような傾向です。
アトピー性皮膚炎、急性蕁麻疹、慢性蕁麻疹、接触性皮膚炎、乾燥性皮膚炎、慢性湿疹、皮膚掻痒症、中医学的病態(風・湿・熱・血虚・血熱など)
このように、S(症状)・C(体質)・I(病)を重ねて整理することで、その人に合う生薬の組み合わせを論理的に絞り込みます。その結果、「一時的に抑えるべきかゆみなのか」「体質的な偏りが関与しているかゆみなのか」「再燃を繰り返しやすい背景を持つかゆみなのか」が明確になり、処方選びの精度が上がります。
❷皮膚トラブルに関する治療の流れ
富士堂では、皮膚症状の相談でも「見た目の湿疹」だけを見て処方を決めることはしません。症状の背景にある体質や生活要因まで含めて設計するため、カウンセリングのプロセスを丁寧に踏みます。
1)問診
- いつから、どこが、どういう時に悪化するか
- 乾燥・汗・入浴・衣類・化粧品などの刺激要因
- 睡眠、ストレス、食生活、便通、冷え、月経など全身の状態
- 既存治療(ステロイド外用、抗アレルギー薬など)と反応
2)舌・脈・腹診
自覚症状だけでなく、体の反応として現れる所見を確認し、C(体質)・I(病態)の精度を上げます。
これにより「熱が優位なのか」「潤い不足が主体なのか」「巡りの停滞が強いのか」などを立体的に判断します。
3)方剤選定
かゆみが強い時期は炎症・熱・湿の整理を優先し、落ち着いてきたら潤い・巡り・再発予防へ重点を移すなど、段階を分けて設計します。
必要に応じて、養生(スキンケア、入浴、衣類、食事、睡眠)のポイントも併せて提案します。
4)経過観察
皮膚のかゆみは、季節や生活ストレスで揺れやすい症状です。富士堂では、状態の変化を見ながら処方を微調整し、再燃を防ぐ運用を重視します。
- ステロイド減薬の支援:すでに外用ステロイドを使用している方は、医療者の指示と整合する形で、状態が安定する方向へ調整をサポート
- 再発予防:乾燥の季節、汗の季節、ホルモン変動の影響が大きい時期など、悪化しやすいタイミングを見越して先回りの設計
4. 症例紹介|皮膚のかゆみ改善例
富士堂では数多くの皮膚のかゆみにお悩みの患者さんの治療を行ってまいりました。その中でいくつかの症例をピックアップしたいと思います。リンク先に詳細があるので、ぜひそちらも合わせてご覧ください。
症例|20代女性:幼少期からのアトピー(乾燥・赤み・季節で増悪)
>>アトピー性皮膚炎の漢方治療:ストレスと体質改善の成功例(元記事)
幼少期からアトピー性皮膚炎が続き、手指・肘内側・膝裏・首・背中の強い乾燥と、集中時に出やすいかゆみがある20代女性。化膿はなく、ステロイドは基本使わない方針で「漢方で肌状態を整えたい」と来局。季節の変わり目、とくに夏に背中が悪化しやすい傾向がありました。
初期は十味敗毒湯+温清飲(煎じ薬)で開始し、かゆみ・赤疹が軽減。途中、卒論作成によるストレスで背中の赤みや乾燥が目立ったため、乾燥(潤い不足)を重視して当帰飲子+黄連解毒湯へ切り替え。結果、回数を重ねるごとにかゆみと乾燥が改善し、6回目には全身のかゆみがほぼ消失、皮膚のツヤも回復。最終的に散剤中心で安定し、背中・首の軽い乾燥を残す程度で終了しました。
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5. よくある質問(Q&A)
Q1. 皮膚のかゆみは漢方で治りますか?
➤原因や体質に合った漢方の服用や養生を行うことで、症状の改善や、再発しにくい状態を目指すことは十分に期待できます。ただし、皮膚の性質には遺伝的な影響を受ける部分もあるため、すべての方が「完全に治る」と断定することはできません。
かゆみは、乾燥・炎症・アレルギー・ストレス・体調変動など複合要因で起こりやすく、漢方では「熱(炎症)」「潤い不足」「巡り(血の滞り)」「湿(じゅくじゅく)」などの偏りを整理して体質面から整えていきます。
一方で、感染や薬疹、内科的な要因が背景にある場合は、そちらの評価が優先になります。長引く場合や急に悪化する場合は、皮膚科での鑑別と並行して進めるのが安心です。
Q2. アトピーや蕁麻疹にも効果がありますか?
➤ アトピーや蕁麻疹でも、体質や症状の経過に応じて、かゆみや赤みを和らげる対症的な視点と、再発しやすさや体調の偏りに目を向けた体質面からのサポートの両面から、症状の改善が期待できます。 アトピーは外用抗炎症薬と保湿を軸にコントロールし、必要に応じて補助療法を組み合わせます。蕁麻疹は抗ヒスタミン薬が基本となるケースが多いです。
漢方は「赤み・熱感が強い」「乾燥が主体」「ストレスで波が出る」など背景がはっきりしている場合に、治療設計の一部として組み込みやすいです。まずは症状のタイプを整理し、適切な併用プランを立てることが重要です。
Q3. 漢方薬の効果はどのくらいで出ますか?
➤ 早い方は数日〜2週間で「かゆみの波」が変わり、体質改善は1〜3か月以上で評価することが多いです。
皮膚症状は季節・睡眠・ストレスで揺れやすいため、「かゆみの頻度」「夜間の悪化」「赤みの戻り」「掻き壊し」など複数の指標で見ていきます。
一定期間試しても変化が乏しい場合は、方針や処方を見直すのが基本です。漫然と同じ処方を続けるより、「今の症状」と「体質」のズレを修正する方が改善が早い場合があります。
Q4. 他の薬(抗アレルギー薬など)と併用しても大丈夫?
➤ 併用できることは多いですが、自己判断での併用は避け、服薬情報を必ず共有してください。
抗アレルギー薬や外用薬を続けながら漢方を併用するケースは少なくありません。一方で、漢方は複数の生薬から成り、市販の漢方や風邪薬などとの重複が起こりやすいです。
特に甘草(カンゾウ)を含む処方の重複や、利尿薬などとの組み合わせには注意が必要です。既往歴(高血圧・むくみやすい等)も含めて、相談時にまとめてお伝えください。
Q5. 妊娠中・授乳中でも服用できますか?
➤ 妊娠中・授乳中でも処方されることはありますが、状況により可否が変わるため個別判断が前提です。自己判断での服用開始は避けてください。
妊娠週数、授乳の有無、体質、症状の重さ、併用薬によって選べる処方が変わります。安全性を優先し、必要性(得られるメリット)が上回る場合に限って慎重に設計します。
妊活中や妊娠の可能性がある場合も含め、受診時に必ず共有していただくと安全です。
Q6. 富士堂ではどのように皮膚トラブルの相談ができますか?
➤ 症状(S)×体質(C)×病態(I)を整理し、今の炎症を落とす設計と再発予防の体質改善をセットで組み立てます。
部位・時間帯・誘因(入浴、汗、衣類、季節、ストレス)に加え、既存治療(外用薬・内服)や生活背景(睡眠・食事・スキンケア)まで確認し、必要に応じて舌・脈・腹なども含めて評価します。
状態の変化を見ながら処方を調整し、スキンケアや生活面の打ち手も併走させて「波を小さくする」設計を行います。オンライン相談も含め、継続しやすい形でサポートしています。
Q7. 発疹がないのにかゆいのはなぜ?(皮膚掻痒症)
➤ 発疹が見えなくても、乾燥・薬・体調(内科的要因)・神経やストレスなどで「かゆみだけ」が出ることがあります。
冬の乾燥や洗いすぎなど皮膚バリア低下だけでもかゆみは起こり得ますし、薬の影響や全身状態が背景にあるケースもあります。
かゆみが長引く場合、全身に広がる場合、黄疸や強い倦怠感を伴う場合などは、皮膚科/内科での評価をおすすめします。
Q8. 夜だけ(寝る前・入浴後)にかゆくなるのはなぜ?
➤ 体温上昇・皮膚の乾燥・体内リズム・ストレス要因が重なり、夜にかゆみが強く感じやすくなります。
入浴後や就寝前は体が温まりやすく、汗や乾燥、衣類・寝具の刺激も加わりやすいため、かゆみが増幅しやすいです。掻いてしまうことで悪循環に入りやすい点も特徴です。
「入浴後すぐの保湿」「寝室の乾燥対策」「掻き壊し予防(爪管理・刺激の少ない寝具)」をセットで行うと改善しやすいです。
Q9. 保湿は何を選べばいい?どのタイミングが効果的?
➤ 刺激の少ない保湿剤を“全身に”、入浴後できるだけ早く塗るのが基本です。
香料など刺激になり得る成分を避け、乾燥が強い時期は油分が多めのタイプを厚めに使うとバリアが整いやすいです。顔や首など敏感な部位は、より低刺激のものが無難です。
保湿は「症状が出たときだけ」ではなく、落ち着いている時期も続けることで再燃予防につながります。
Q10. ステロイドをやめたい/減らしたい。漢方で可能?
➤ 可能性はありますが、自己判断で中止せず、炎症コントロールを保ちながら段階的に設計する必要があります。
ステロイド外用は炎症を鎮める中心的な治療であり、急にやめると再燃しやすいことがあります。漢方は、乾燥・熱感・ストレス増悪など「ぶり返す背景」を整理し、再燃しにくい方向へ整える目的で併用されることがあります。
減薬の可否は病勢や使用量で変わるため、皮膚科の方針と整合させながら進めるのが安心です。
Q11. 子ども(小児)でも飲める?
➤ 小児でも漢方が選択肢になることはありますが、年齢・体重・体質・併用薬を踏まえた個別判断が必要です。
小児の皮膚トラブルは、まず保湿と外用治療を軸に整えるのが基本です。そのうえで、かゆみのタイプや体質傾向(乾燥が強い、汗で悪化、季節変動が大きい等)を整理し、必要があれば漢方を組み込みます。
市販薬の自己判断は避け、アレルギー薬や喘息薬など服用中の薬がある場合は必ず共有した上でご相談ください。
6. カウンセリングの流れ
ご予約 → ご相談 → 漢方薬の選定 → ご確認・お会計 → 調剤・お渡し(発送)
- ご予約:お電話、LINE、メールフォームからご予約ください。初回相談は60〜90分程度お時間をいただきます。
- ご相談:現在の症状、体質、生活習慣などを詳しくお伺いします。舌診、腹診なども行い、総合的に体質を判断します。
- 漢方薬の選定:SCI方証医学に基づいた体質分析を行い、最適な処方をご提案します。効果や服用方法についても丁寧にご説明します。
- ご確認・お会計:処方内容と費用をご確認いただき、ご納得いただいた上でお会計となります。
- 調剤・お渡し(発送):煎じ薬の場合は調合に少しお時間をいただきます。店頭でのお渡し、またはご指定の住所への配送も可能です。
初回相談後、2〜4週間後に経過を確認し、必要に応じて処方を調整します。継続的なフォローアップにより、より効果的な治療を実現しています。
➤ 初回相談は予約優先制。お気軽にご相談ください。
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,メールフォーム)」
■オンライン相談について詳しくはこちら>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
7. まとめ|皮膚のかゆみは「抑える」だけでなく「整える」ことが大切
皮膚のかゆみは、乾燥やアレルギーなどの外的刺激だけで起こるものではなく、体の内側の状態(炎症の起こりやすさ、血の巡り、潤い、ストレスの影響など)が重なって表に出てくることが多い症状です。
そのため、「かゆみを止める」こと自体は大切である一方、かゆみが長引いたり、季節の変わり目や疲労・ストレスでぶり返したりする場合は、対症だけでは悪循環から抜けにくくなります。
富士堂では、独自のSCI方証医学にもとづき今の炎症を落とす治療と、再燃予防のための体質改善をセットで組み立てます。経過を見ながら処方やケアを調整し、「良くなったり悪くなったり」を繰り返す波を小さくすることを重視しています。
乾燥しやすい、夜にかゆくて眠れない、ストレスやホルモン変動で悪化しやすい、薬を使っても再発してしまう――こうしたお悩みがある方はぜひ一度ご相談ください。
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