2025.02.06>アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
アトピー性皮膚炎の漢方治療:ストレスと体質改善の成功例

アトピー性皮膚炎に悩む方へ:漢方薬治療の症例紹介
アトピー性皮膚炎は、慢性的に症状が現れる皮膚疾患で、多くの方が治療や症状のコントロールに苦慮されています。特にステロイド薬や免疫抑制剤に依存せず、根本的な体質改善を目指したいと考える方が多く、富士堂でもそういった患者様の治療を数多く行ってまいりました。この記事では、富士堂で実際に治療を行った20代女性の症例を詳しくご紹介します。漢方薬治療がどのようにアトピー性皮膚炎の改善に寄与したかを解説するとともに、患者のライフスタイルや治療プロセスに基づいた具体的なアドバイスをお届けします。
アトピー性皮膚炎とは?
アトピー性皮膚炎は、体質、ストレス、環境要因などが複雑に絡み合い発症する慢性疾患です。この疾患は一般的に増悪と寛解を繰り返し、以下のような特徴的な症状が見られる場合があります:
- ○顔面型:首から上に皮膚の赤みや痒みが集中するタイプ
- ○痒疹型:手足や胴体に強い痒みと皮膚の盛り上がりが現れるタイプ
- ○紅皮症:全身に赤みが広がる重篤なタイプ
一般的な治療法として、抗ヒスタミン薬、免疫抑制剤、ステロイド薬が使用されますが、副作用や耐性への懸念から、長期使用に不安を抱える患者も少なくありません。また、スキンケアでは保湿が特に重要であり、乾燥を防ぐことで症状の悪化を抑制できます。
近年の研究では、腸内細菌叢とアトピー性皮膚炎を含む多くの皮膚疾患との関連が注目されています。腸内環境を整えることが皮膚のバリア機能を強化し、症状を軽減する可能性があることが示唆されています。具体的には以下のような食生活の改善が効果的です:
- ○発酵食品(ヨーグルト、納豆、味噌など)の摂取
- ○食物繊維を含む野菜や全粒穀物の摂取
- ○プロバイオティクスの活用
今回の患者様は幼少期からアトピー体質で、掻きむしりによる腕の傷が目立つ状態でした。ステロイド薬の使用を避け、漢方薬での改善を希望されて来店されました。
症例紹介:20代女性の治療経過
患者情報
- ○性別・年齢:女性、20代
- ○身体情報:身長164cm、体重56.0kg、BMI 20.82
初来店時の主訴
- ○幼少期から続くアトピー性皮膚炎
- ○湿疹や腕の傷
化膿はしておらず、ステロイド薬は基本的に使用しない方針とのこと。
現病歴
- ○幼少期からアトピー性皮膚炎を発症。中学3年生の受験時が最も悪化し、顔にも症状が出て乾燥と熱感が酷かった。現在はその当時よりは軽減しているが、漢方薬で綺麗な状態に戻したいとの希望あり。
- ○乾燥:手指、肘内側、膝裏、首、背中で特に乾燥が酷い。
- ○痒み:集中時に発症しやすいが、掻きむしることは少ない。
- ○悪化条件:季節の変わり目に症状が悪化しやすい。特に夏に背中の症状が悪化した。
- ○スキンケア:市販の化粧水と乳液を使用して乾燥を防いでいる。
- ○湿疹:たまに腕に湿疹ができ、一部傷があるが化膿はしていない。
症候
- ○皮膚状態:乾燥、痒み(集中時に強い)、傷あり(化膿はなし)
- ○脈:沈2、遅2、弱細3、緩2
- ○舌:中、鮮紅色、歯痕あり、苔中、薄白黄
- ○その他の症状:
食事:食べるのが遅いが胃もたれなし。油ものや辛い物は問題なく摂取。
汗:首、腕、手足のひらに汗をかきやすい。
生理:周期は22~32日で一定ではないが、月経痛なし。
評価
■体質:地黄
■症候
- ○アトピー性皮膚炎による皮膚の乾燥と赤み
- ○集中時に痒みが出やすい
- ○やや傷が見られるが、化膿はしていない
処方漢方薬➤煎じ薬:十味敗毒湯、温清飲
治療経過と効果
【2回目】
- ○症状の変化:漢方薬の服用後、痒みや赤疹が少し軽減したと患者が実感。
- ○体調:特に食欲不振や症状の悪化などの体調異常は見られない。
処方漢方薬➤煎じ薬:十味敗毒湯、温清飲
【3回目】
- ○症状の変化:肘裏の痒みがかなり改善。一方で、膝裏と背中には乾燥が残り、痒みがある。傷はほとんど消失。
- ○新たな症状:背中と左ふくらはぎに赤みが残り、頭皮も乾燥してきた。
- ○影響要因:卒論作成による多忙がストレスとなり、痒みの悪化が見られる。
- ○体調:背中や手足指先に冷感あり。運動不足の状態。睡眠は十分とれている。
- ○治療方針:乾燥が強く現れているため、保湿を重視する処方へ変更。
処方漢方薬➤煎じ薬:当帰飲子、黄連解毒湯
【4回目】
- ○症状の変化:日中の在宅時に背中の痒みが少し悪化。炎症により皮膚に赤みが出現。
- ○改善点:入浴前が最も痒みが強いものの、漢方薬服用前に比べると大幅に改善。肘内側の痒みや赤みもかなり改善。
- ○残る症状:頭皮の乾燥が続いている。
処方漢方薬➤煎じ薬:当帰飲子、黄連解毒湯
【5回目】
- ○症状の変化:背中と腕の痒みがさらに改善。
- ○残る症状:背中とふくらはぎにわずかな赤みが見られる。
- ○乾燥の改善:皮膚の乾燥も以前より改善傾向が続いている。
処方漢方薬➤煎じ薬:当帰飲子、黄連解毒湯
【6回目】
- ○症状の変化:全身の痒みがほぼ消失。皮膚の乾燥も大幅に改善し、ツヤが出てきた。
- ○相乗効果:保湿クリームの継続使用により、さらに効果が向上している様子。
- ○処方の変更:服用しやすさを考慮し、散剤へ切り替え。
処方漢方薬➤散剤:当帰飲子、頓服:黄連解毒湯(痒みが出た際に頓服)
【7回目】
- ○症状の変化:痒みはほぼ解消。背中と首に乾燥がやや残る程度。
- ○今後の方針:留学に備え、今回の処方量を増やして終了。
処方漢方薬➤散剤:当帰飲子
考察
漢方薬を服用した後、皮膚状態は改善に向かい、皮膚のターンオーバーによる落屑は特に見られませんでした。これは、漢方薬の効果が皮膚の再生プロセスに良い影響を与えた結果と考えられます。
また、ストレスが症状の悪化に大きく関与していることが明らかになりました。ストレスが軽減されると治療効果が格段に向上する傾向が見られたため、ストレスの原因を把握し、それをどのように回避または軽減できるかを患者と一緒に考えていくことが重要だと感じています。
さらに、この方の場合、アイスクリームなどの甘味や冷たいものを好む傾向があり、これが体を冷やし、皮膚の乾燥を助長している可能性がありました。今後は腸内環境を整える食生活を取り入れることで、より効果的な体質改善につながると考えられます。
また、日々のスキンケアとして保湿をしっかり行うことが重要です。適切な保湿を習慣化することで、症状の再発を防ぎ、長期的な肌の健康維持につながります。
まとめ
アトピー性皮膚炎の治療には、症状を抑えるだけでなく、根本的な体質改善を目指すことが重要です。本症例では、漢方薬による治療が皮膚状態の改善に大きく寄与しました。また、ストレス管理や食生活の見直し、スキンケアの徹底といった患者自身の取り組みも重要な役割を果たしました。富士堂では今後も患者様一人ひとりに寄り添い、生活全体を見直すアプローチを提案していきます。
参考資料
天野博雄: アトピー性皮膚炎の診断と最新治療 2020:岩手医誌71, 6, 223-228
漢方求真 許志泉著 桐書房 p.177、p.302
漢方診療医典 第5版 p.312
病気がみえる vol.14 皮膚科(第1版) アトピー性皮膚炎
MSDマニュアル プロフェッショナル版 アトピー性皮膚炎(湿疹)
Britta De Pessemier. et.al. Gut-Skin Axis: Current Knowledge of the Interrelationship between Microbial Dysbiosis and Skin Conditions. Microorganisms. 2021 Feb;9(2): 353.
Zhifeng Fang. et.al. Gut Microbiota, Probiotics, and Their Interactions in Prevention and Treatment of Atopic Dermatitis: A Review. Front Immunol. 2021 Jul 14; 12: 720393.
担当の先生・記事監修
入多 裕 薬剤師 国際中医専門員
経歴
1997年 徳島文理大学薬学部卒業
1999年 同大学院薬学研究科修士課程修了(苔類の成分研究)
1999年~2003年 九州、関西の調剤薬局で調剤業務に従事
2003年 上海中医薬大学中医学専門留学勉強
2007年 横浜市内の漢方兼調剤薬局で漢方、調剤業務に従事
2009年 国際中医師(現 国際中医専門員)取得
2017年 富士堂漢方薬局
資格
薬剤師
国際中医専門員
産業カウンセラー
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