2022.12.19>緑内障
漢方薬で眼圧を下げ手術が不要になった高齢緑内障1例
漢方薬で眼圧を下げ手術が不要になった高齢緑内障1例
富士堂漢方医学研究所・漢方薬局 所長 許 志泉
緑内障治療において、眼圧のコントロールは特に大切です。しかし臨床では、点眼薬を使っても、手術をしても眼圧が再度高くなり、思うように眼圧を下げられないケースは少なくありません。
今回は漢方薬の服用により眼圧が下がり再手術を免れた高齢緑内障患者の症例をご紹介いたします。
まず、この方は漢方治療を始める前に手術を4回受けており、また点眼薬に房水産生を抑える薬の内服もしていました。それでもなお眼圧が高く、更なる手術を強く勧められ、不安感と憂うつを呈し食事量も体重も減ってしまいました。大変心配したご家族の勧めで富士堂にご来店されました。
最初の2回は来店され対面での漢方相談をし、それ以降はオンライン相談(LINE映像通話)を用いた漢方薬治療を行い、順調に眼圧が下がり安定しました。それに伴い、食欲も増え、不安と憂うつも改善し、慢性便秘も改善されたことでまた人生を楽しめるようになったと喜んでいらっしゃったのが印象的でした。
【症 例】女性、76歳、身長157㎝、体重48㎏、
【初 診】X年7月29日
【主 訴】緑内障(視野欠損:右眼1/3、左眼なし)、高眼圧のため再手術を勧められているが手術はしたくない。不安感と憂うつがみられる。
【現病歴】緑内障(視野欠損:右眼1/3、左眼なし)
X-1年11月~:眼圧が38-44mmHg(以下mmHgは省略)と高かった。点眼薬を使うも思うように下がらなかった。
X年3月4日:手術をし、術後眼圧12にまで下がったが、5月になってまた40前後に上昇した。
X年6月14日/7月12日:右目のバイパス手術、濾過手術をそれぞれ1回受けた(この一年間で計4回の手術)。
その結果、右眼圧12-16に下がったが、未手術の左眼は30のまま。同時に点眼薬(アイファガン0.1%、ブロナック0.1%、トラバダンズ0.004%)と、眼房水の産生を抑えるダイアモックス錠250㎎(2錠)を使用しても下がらないため、左目も手術した方がよいと言われたが、本人としてはどうしても手術を受けたくないとのこと。眼圧が高くなって以来、気分が落ち込み、食欲も減少し、体重は56Kgから48Kgに下がった。
ご本人もご家族も大いに心配し、漢方治療のため来店された。
【現 症】緑内障(視野欠損:右眼1/3、左眼なし)、高眼圧(左眼圧30)。右視野欠損のため、見づらい、時に眩暈がする。3種の点眼薬(トラバダンズ0.004%、ブロナック0.1%、アイファガン0.1%)、ダイアモックス錠250㎎(2錠分2)内服。
肩こり、緊張不安、気分のおちこみ。食欲低下、体重減少、便秘。頭痛はない。
持病(常用薬):高血圧症(アムロジピン2.5㎎)、脂質異常症(アトルバスタチン5㎎)、便秘(酸化Mg、大建中湯)。
腹部表面軟弱、心窩部悸動、舌淡紅嫩、苔少、脈やや数やや浮力中。
【処 方】香砂六君子湯3包(9g)、川芎茶調散料エキス3包(7.5g)、一日3回、毎食後1包ずつ内服、15日分。
【経 過】
漢方治療前からの治療経過まとめ
※年月日(来店時の年=X年):右眼圧/左眼圧…コメント、の順で表記↓
X年07月29日(漢方治療前):右12~16/左30…左目の視野保護のため手術が必要
X年08月06日:右17/左21…左眼圧が9下がった。食欲もでて、しっかり食べていて便通も自然にでるため、便秘薬(酸化マグネシウムと大建中湯)は不要となった。
X年08月26日:右16/左23
X年09月03日 :右13/左21
X年09月17日:右15/左17…眼科受診は3週間毎で大丈夫と眼科医に言われた。元気になり、三食も作れるようになった。
X年10月08日:右13/左13.5
X年11月05日:右15.3/左13.7…右:視野欠損は前と変わらない、左:視野欠損はない。手術は不要となった。安心したとのこと。
X年12月03日:右13/左13…少し食べ過ぎか、多少の胃もたれ。糖代謝に問題はない。
X+1年01月07日:右11.3/左14.3…眼科医も安心しているそう。
X+1年02月09日:右14/左13…視野検査実施
X+1年03月08日:右12/左14…前回の視野、散瞳眼底検査で「落ち着いている」と告げられ、より安心した。
X+1年04月13日:右12/左14…眼底も異常はない、順調だと言われた。
漢方は1日2回に減量
X+1年05月18日:右13/左13…右目は1種類の点眼薬のみになった
X+1年06月23日:右13/左14.5
X+1年08月03日:右13/左11…点眼薬を時に忘れたり、わざとしなかったりしても、眼圧が上がらないため、非常に嬉しい。
X+1年09月15日:右-/左-…視力安定。食欲もあり、気分もよい。内科に受診した際、血圧もよいし特に問題はないと言われた。偶に一人で楽しくでかけている。
漢方は1日2回(満量の2/3)で維持治療継続中
【コメント】
漢方医学では、高眼圧の以外にも着目します。この方の場合は、肩こり、緊張不安、気分の落ち込み、食欲低下、体重減少、便秘、腹部表面軟弱、心窩部悸動、舌淡紅嫩、苔少、脈やや数やや浮力中などの情報から、気うつ、胃腸機能の低下、また首肩、頭部のうつ熱だと判断し、香砂六君子湯で気の巡りを良くし、消化機能を促進するとともに上部のうつ熱を川芎茶調散で解消させた結果、眼圧は順調に下がり、食欲や気分、便秘も改善に至りました。
初診から1年2ヶ月後には、眼圧が下がったまま綺麗に維持できているだけではなく、食欲や気分などの全身症状も改善し、生活の質も大幅に上昇していました。
緑内障の眼圧コントロールにおいて漢方薬での治療は大変有益です。また、眼底の脆弱さを改善する効果もあり、ひいては全身症状や精神ケアにも繋がりますので、緑内障の治療がうまくいっていない方はどうか諦めず一度ご相談いただければと思います。
許 志泉
【関連記事】
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