2022.05.23>子宮頸部異形成
中等度子宮頸部異形成が漢方薬3か月服用でほぼ消失|30代女性
子宮頸部異形成とは?
子宮頚部異形成とは、子宮頸がんの一歩手前の状態であり、子宮頚部上皮内腫瘍とも呼ばれています。近年は20~30代の若い女性に子宮頚部異形成または子宮頸がんの患者さんが急増しています。(子宮頸部異形成について詳しく知る)
子宮頚部異形成または子宮頸がんの主な原因は、子宮頚部へのヒトパピローマウイルス(HPV)のへ感染であると知られています。まれに不正出血などの症状が出ることがありますが、異形成の場合ほとんど自覚症状はありません。早期発見、早期治療のためには定期的な検診が重要です。
また、子宮頚部の扁平上皮病変は、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成(CIN3)、上皮内がん…と段階的に進展していきますが、自然に消える場合もあるため軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)の段階では経過観察することも多くあります。
今回の患者さんは、2020年3月に健診で軽度異形成が発覚し、経過観察をされていました。しかし、2021年9月の再検査で中等度に進行しており、3カ月後の健診時にもしさらに進展していた場合は手術をするよう婦人科医に勧められ、できれば手術は避けたいとのことで富士堂にご来店されました。その後、約3か月の漢方治療を経て、異形成がほぼ消失したためその経過をご紹介したいと思います。
症例
女性(30代)、身長:156cm、体重:46kg、BMI:18.9
主訴:子宮頸部異形成
担当:入多先生
症候
現在
生理前後の不調のためピル(マーベロン)を2年くらい服用。
今回の検診後に一旦ピルを中止(中止してから1カ月弱)
平素
生理前:むくみ、便秘 / 生理後 下腹部痛
排卵後:乳房痛、圧迫感
生理痛:ピルでほとんどなし/睡眠:寝つき悪い、寝た気がしない、睡眠5.5~6時間
手指にほてり、精神緊張しやすい、不安感。緊張するとお腹を壊す。
尿 :1日3,4回、夜間1回 / 便通:軟便気味
動悸:たまにある/体力:疲れやすい。たまに立ち眩み/持病:慢性鼻炎
脈中、実4/5、大4/5 / 腹壁中、やや硬い / 心下痞硬。胸脇苦満なし、左下腹部やや硬
舌質中、正常紅、痩、歯痕あり、苔中、薄白黄
評価
桂枝体質:動悸、発汗、腹壁硬い
半夏体質:緊張、不安、心下痞硬
牡丹皮証:下腹部やや張り感
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減
錠剤:田七人参
【2回目 初回から2週間後】
ピル中止後に来た初めての生理で心配したが、胸の張り感なし、経痛少なめ、経量少なめだった。
周期は普段より1、2日早かった。
全身が温まって発汗量が増えた。手のひらが温かい。HPV検査陽性。
時に緊張するが、人前ではあまり緊張しない。
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減、桂枝加竜骨牡蛎湯
【3回目 服用1か月目】
桂枝加竜骨牡蛎湯服用で、睡眠は改善。
漢方薬を服用することで体がずいぶん温まるようになったそう。
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減、桂枝加竜骨牡蛎湯
錠剤:田七人参
【4回目 服用1か月半目】
前回の生理でも痛みはほとんどなかった。
経血量は少なめ。生理2-3日目に多め、1,4日目は少ない。5日目以降はなし。
睡眠は良好。生理前になると少し浅眠。就寝時間が遅めとのこと。
冷えも毎年に比べてずっと良い。
生理前の乳房張り感も今は全くない。
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減、桂枝加竜骨牡蛎湯
【5回目 服用2か月目】
2か月前に3個あった筋腫が消えていることが検診で判明。
生理痛ほとんどなし。生理前の乳房の張り感なし。
経血量はピル服用時よりは増えた。
睡眠が改善したため桂枝加竜骨牡蛎湯を中止し、より異形成に働きかけるために、田七を追加することに。
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減
錠剤:田七人参
【6回目 服用3か月目】
異形成がほぼ消失、目視では無くなったとのこと。
漢方薬
顆粒剤:温経湯、芎帰調血飲第一加減
錠剤:田七人参
考察
この症例では3か月間の漢方薬の服用により中等度の子宮頸部異形成がほぼ消失することに至りました。中等度異形成と診断されてすぐに漢方を服用し始め早期治療ができたことや、お出しした漢方薬が体質に大変合っていたこと、そして欠かさずに継続して服用されていたことが功を奏したと言えるでしょう。
また、「冷え性が改善した、睡眠の質が向上した」とご本人が述べられていることからもわかるように、体温上昇と体力賦活による免疫力の強化も子宮頸部異形成に好影響を及ぼしたと推察されます。
このように、漢方薬を服用することで病状の治癒や寛解が早まり、またその他の不調も同時に改善すると期待されます。
入多 裕
<参考文献>
許志泉. (2018) 漢方求真, 桐書房, pp.24, 40, 280.
長谷川弥人, 大塚恭男, 丁宗鐡. (1999) 改訂版 臨床医の漢方治療指針, メジカルビュー社, pp.386
東亜医学協会. (2006) 漢方の臨床5(9), 東亜医学協会, pp.1525-1534.
東亜医学協会. (2020) 漢方の臨床67(11), 東亜医学協会, pp.1101-1108.
内閣府 食品安全委員会. “種子植物・菌類を利用した健康食品中の有害な成分に関する調査”. 食品安全委員会 Food Safety Commission. 2004-03-31.
https://www.fsc.go.jp/fsciis/survey/show/cho20040300007 (参照2022-05-15)
<関連記事>
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>>症例【子宮頸部異形成(中等度)】漢方治療3か月でHSILからLSILに、9か月後NILMに
>>記事 子宮頸部異形成の概要、分類、西洋医学および漢方医学の治療
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