2022.01.24>アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
アトピー性皮膚炎(10年以上)が漢方1年で寛解|症例
「アトピー性皮膚炎はどうしたら治りますか?」
「ステロイド外用薬はできる限り使いたくありません。」
そうおっしゃるアトピー性皮膚炎にお悩みの患者様は多くいらっしゃいます。
実際、西洋薬の治療だけでは改善されず、漢方治療にご来店される方を富士堂では数多く治療してまいりました。
本症例は、アトピー性皮膚炎の寛解まで1年、あきらめずに根気よく漢方治療を続けたことで、長年苦しんだ痒みなどが改善に向かった、40代男性の症例報告です。
漢方薬のみならず、保湿や飲食等のアドバイスも並行して行うことで10年来のアトピー性皮膚炎に迅速にアプローチすることができました。
40代男性
①アトピー性皮膚炎10年以上(2004年冬から発症)
②アレルギー体質…幼少期から皮膚が弱い
2004年にバンコクから帰国、その冬にアトピー発症。皮膚乾燥、かゆみ。
病院で小青竜湯をもらって服用していたが改善せず。
今はステロイド軟膏と保湿クリームを使用。
現在:夏→暑さと発汗で刺激、かゆみ。冬→乾燥でかゆみ。
脈:やや沈、数、中
腹壁厚、腹力やや硬、臍中心肥満
心下痞硬、小腹不仁
舌質ややドン、淡紅色、大、歯痕あり。苔やや湿、薄白黄
入浴:ぬるめにして、長時間入らないようにしている。
食欲:普通、食べるのが早い。肉・野菜どちらもよく食べる。油もの苦手。
飲酒:週6回。ビールや日本酒など。
喫煙:なし。
水分:コーヒー、お茶など1日1L。温かいものを飲む。
睡眠:7~8時間、夢は見ない。寝つきはいいがイビキが大きいと家族に言われる。
便:1日1回、普通。
尿:1日3~4回、尿色黄
既往歴:なし
尿:1日3,4回、尿色黄⇒「茯苓、沢瀉、茵陳藁」
健診:慢性胃炎(疑い)、脂肪肝(疑い)⇒「茵陳藁」
心下痞硬、小腹不仁⇒「地黄」
以上を踏まえてお選びした漢方薬
⇒荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
服用後、全体的にやや改善している様子。
特に入浴後の肌のヒリヒリ感が少し改善、花粉症症状も薬が効いているのか今年は酷くないそう。
痒み症状はあったりなかったり。
症状が酷い時は額が赤く腫れる。
尿の回数が1日6~7回に増え、手先の冷えも和らいでいる。
暖かい時の方が調子は良く、急な気温の低下や乾燥が症状悪化の原因に思われるとのこと。
特に上半身に汗をかきやすく、夏は汗が刺激になる。
心下痞硬。
舌質淡紅色、歯痕あり。
苔湿、厚白黄。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
薬を変更して2日目くらいから顔の皮膚がポロポロ剥がれた。
7~10日後に治まり、そこから顔の赤みや痒み症状が減ってきた。
最近口が渇くようになり水分摂取量が増加。
それに伴い尿の回数も1日6~7回、夜間1回と増えた。
便通:変わりなく普通。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
時折、顔の皮膚がポロポロ剥がれることがある。
特に痛みや痒みはなく調子いい。
飲酒:週6日。1回1~2合。
便通:普通。
⇒飲酒の回数を少し減らしてみるように勧める。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
蒸し暑くなっていたので少しかゆみはあるが、以前と比べだいぶ良い。
顔の皮膚がポロポロ剥がれることがたまにある。
尿:1日5~6回。色は薄くなった気がする。
便通:1日1回、普通。
飲酒:週4~5回、休肝日を作ったそう。家飲みなので量は少なく1回1、2杯程度。
顔、額がまだ赤黒く、何とかしたいとのこと。肌自体は以前より艶があり、乾燥も落ち着いてきている。
ステロイド薬はほとんど使わずに済んでおり、保湿のみ。
舌質淡紅色、歯痕多い。
苔薄白膩。
顔の赤み、清熱
漢方薬:荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬)に戻して様子見 28日分
全体的に安静。
採点:初診時を10とした現在のスコア
赤味…3~4、痒み…2~3、乾燥…4~5
これらが1~2になったら次はアトピーの体質改善として荊芥連翹湯+当帰飲子などを使い、皮膚乾燥の改善や皮膚のバリア機能の回復を図る予定
⇒化粧水を塗ってからクリーム(夏場は乳液でも可)を塗るように、また痒みを感じる際は掻かずに冷やして服など布ごしに軽く叩くようアドバイスしました。
漢方薬:荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
痒み症状はかなり改善。
保湿クリームの効きが以前より良くなった気がする。
健康診断で血圧が少し高めと指摘された。140/90-100くらいで、以前は120/80だったそう。
気温の急激な変化により睡眠が浅い日があったことなどから血圧が上がったのかもしれないとのこと。降圧薬は服用してない。
初回来店時の症状を10とすると今は「2」くらいにまで改善したそう。
漢方薬: 荊芥連翹湯+当帰飲子(煎じ薬)に変更 28日分
服用後、手の皮が剥けてきた。
痒みはほとんどなく、外出し汗をかいてもそれが刺激になり出ていた痒みや痛みがほぼなくなった。
額や手の赤み、皮膚の肥厚も治まってきている。
⇒荊芥連翹湯を温清飲(黄連解毒湯)に替えて様子見。
良好なら次回から減薬を検討(1包を2日間で服用するなど。症状悪化時は1日1包に)
漢方薬:当帰飲子+黄連解毒湯(煎じ薬) 35日分
変更後、体調に変わりはなく、だいぶ軽快したこともありたまに飲み忘れるそう。
⇒今回から減薬。1包を2日間で服用し、症状が悪化するようならこれまで通り1包を1日で服用するよう指示。
漢方薬: 当帰飲子+黄連解毒湯(煎じ薬、今までの半量) 30包(60日分)
痒みは少しあるが、ずいぶん良くなった。
飲酒をしたり2~3時間散歩したりしても、汗をかいても痒みはわずかなものに。
漢方薬: 当帰飲子のみ(煎じ薬) 30包(60日分)
皮膚にやや赤みがあるが、痒みはほとんどない。
飲酒後や食べ過ぎた時などに少し痒い程度。
漢方薬:
当帰飲子(煎じ薬) 30包(60日分)
黄連解毒湯、五苓散(顆粒剤) 頓服
⇒今回で卒業
服用開始後に顔や手の皮膚がポロポロ剥けたのは皮膚のターンオーバーが活性化されたことによるものと考えられました。
長らく悩まされた症状が1年で寛解したのには、漢方薬の服用と保湿を諦めずしっかり継続していたことが功を奏したのだと思われます。
飲酒頻度が高めなので、もう少し回数が減らせればより効果的だったかもしれません。
薬剤師 入多裕
【関連記事】
>>乾燥性皮膚炎の痒みが漢方薬でみるみる軽快。自律神経の乱れも改善!
>>蕁麻疹に対する漢方医学の認識と漢方薬治療
>>アトピー性皮膚炎の原因と漢方薬
>>湿疹(皮膚炎)・アトピー・蕁麻疹の漢方治療と改善例
>>アトピー性皮膚炎の薬物療法とスキンケアのポイント
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
■オンライン相談もご利用ください>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
「ステロイド外用薬はできる限り使いたくありません。」
そうおっしゃるアトピー性皮膚炎にお悩みの患者様は多くいらっしゃいます。
実際、西洋薬の治療だけでは改善されず、漢方治療にご来店される方を富士堂では数多く治療してまいりました。
本症例は、アトピー性皮膚炎の寛解まで1年、あきらめずに根気よく漢方治療を続けたことで、長年苦しんだ痒みなどが改善に向かった、40代男性の症例報告です。
漢方薬のみならず、保湿や飲食等のアドバイスも並行して行うことで10年来のアトピー性皮膚炎に迅速にアプローチすることができました。
主訴
40代男性
①アトピー性皮膚炎10年以上(2004年冬から発症)
②アレルギー体質…幼少期から皮膚が弱い
現病歴
2004年にバンコクから帰国、その冬にアトピー発症。皮膚乾燥、かゆみ。
病院で小青竜湯をもらって服用していたが改善せず。
今はステロイド軟膏と保湿クリームを使用。
症候
現在:夏→暑さと発汗で刺激、かゆみ。冬→乾燥でかゆみ。
脈:やや沈、数、中
腹壁厚、腹力やや硬、臍中心肥満
心下痞硬、小腹不仁
舌質ややドン、淡紅色、大、歯痕あり。苔やや湿、薄白黄
平素
入浴:ぬるめにして、長時間入らないようにしている。
食欲:普通、食べるのが早い。肉・野菜どちらもよく食べる。油もの苦手。
飲酒:週6回。ビールや日本酒など。
喫煙:なし。
水分:コーヒー、お茶など1日1L。温かいものを飲む。
睡眠:7~8時間、夢は見ない。寝つきはいいがイビキが大きいと家族に言われる。
便:1日1回、普通。
尿:1日3~4回、尿色黄
既往歴:なし
評価と漢方治療の経過
尿:1日3,4回、尿色黄⇒「茯苓、沢瀉、茵陳藁」
健診:慢性胃炎(疑い)、脂肪肝(疑い)⇒「茵陳藁」
心下痞硬、小腹不仁⇒「地黄」
以上を踏まえてお選びした漢方薬
⇒荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
【2回目】約1か月後
服用後、全体的にやや改善している様子。
特に入浴後の肌のヒリヒリ感が少し改善、花粉症症状も薬が効いているのか今年は酷くないそう。
痒み症状はあったりなかったり。
症状が酷い時は額が赤く腫れる。
尿の回数が1日6~7回に増え、手先の冷えも和らいでいる。
暖かい時の方が調子は良く、急な気温の低下や乾燥が症状悪化の原因に思われるとのこと。
特に上半身に汗をかきやすく、夏は汗が刺激になる。
心下痞硬。
舌質淡紅色、歯痕あり。
苔湿、厚白黄。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
【3回目】約2か月後
薬を変更して2日目くらいから顔の皮膚がポロポロ剥がれた。
7~10日後に治まり、そこから顔の赤みや痒み症状が減ってきた。
最近口が渇くようになり水分摂取量が増加。
それに伴い尿の回数も1日6~7回、夜間1回と増えた。
便通:変わりなく普通。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
【4回目】約3か月後
時折、顔の皮膚がポロポロ剥がれることがある。
特に痛みや痒みはなく調子いい。
飲酒:週6日。1回1~2合。
便通:普通。
⇒飲酒の回数を少し減らしてみるように勧める。
漢方薬: 消風散+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
【5回目】約4か月後
蒸し暑くなっていたので少しかゆみはあるが、以前と比べだいぶ良い。
顔の皮膚がポロポロ剥がれることがたまにある。
尿:1日5~6回。色は薄くなった気がする。
便通:1日1回、普通。
飲酒:週4~5回、休肝日を作ったそう。家飲みなので量は少なく1回1、2杯程度。
顔、額がまだ赤黒く、何とかしたいとのこと。肌自体は以前より艶があり、乾燥も落ち着いてきている。
ステロイド薬はほとんど使わずに済んでおり、保湿のみ。
舌質淡紅色、歯痕多い。
苔薄白膩。
顔の赤み、清熱
漢方薬:荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬)に戻して様子見 28日分
【6回目】約5か月後
全体的に安静。
採点:初診時を10とした現在のスコア
赤味…3~4、痒み…2~3、乾燥…4~5
これらが1~2になったら次はアトピーの体質改善として荊芥連翹湯+当帰飲子などを使い、皮膚乾燥の改善や皮膚のバリア機能の回復を図る予定
⇒化粧水を塗ってからクリーム(夏場は乳液でも可)を塗るように、また痒みを感じる際は掻かずに冷やして服など布ごしに軽く叩くようアドバイスしました。
漢方薬:荊芥連翹湯+茵陳五苓散(煎じ薬) 28日分
【7回目】約6か月後
痒み症状はかなり改善。
保湿クリームの効きが以前より良くなった気がする。
健康診断で血圧が少し高めと指摘された。140/90-100くらいで、以前は120/80だったそう。
気温の急激な変化により睡眠が浅い日があったことなどから血圧が上がったのかもしれないとのこと。降圧薬は服用してない。
初回来店時の症状を10とすると今は「2」くらいにまで改善したそう。
漢方薬: 荊芥連翹湯+当帰飲子(煎じ薬)に変更 28日分
【8回目】約7か月後
服用後、手の皮が剥けてきた。
痒みはほとんどなく、外出し汗をかいてもそれが刺激になり出ていた痒みや痛みがほぼなくなった。
額や手の赤み、皮膚の肥厚も治まってきている。
⇒荊芥連翹湯を温清飲(黄連解毒湯)に替えて様子見。
良好なら次回から減薬を検討(1包を2日間で服用するなど。症状悪化時は1日1包に)
漢方薬:当帰飲子+黄連解毒湯(煎じ薬) 35日分
【9回目】約8か月後
変更後、体調に変わりはなく、だいぶ軽快したこともありたまに飲み忘れるそう。
⇒今回から減薬。1包を2日間で服用し、症状が悪化するようならこれまで通り1包を1日で服用するよう指示。
漢方薬: 当帰飲子+黄連解毒湯(煎じ薬、今までの半量) 30包(60日分)
【10回目】約10か月後
痒みは少しあるが、ずいぶん良くなった。
飲酒をしたり2~3時間散歩したりしても、汗をかいても痒みはわずかなものに。
漢方薬: 当帰飲子のみ(煎じ薬) 30包(60日分)
【11回目】約12か月後
皮膚にやや赤みがあるが、痒みはほとんどない。
飲酒後や食べ過ぎた時などに少し痒い程度。
漢方薬:
当帰飲子(煎じ薬) 30包(60日分)
黄連解毒湯、五苓散(顆粒剤) 頓服
⇒今回で卒業
考察
服用開始後に顔や手の皮膚がポロポロ剥けたのは皮膚のターンオーバーが活性化されたことによるものと考えられました。
長らく悩まされた症状が1年で寛解したのには、漢方薬の服用と保湿を諦めずしっかり継続していたことが功を奏したのだと思われます。
飲酒頻度が高めなので、もう少し回数が減らせればより効果的だったかもしれません。
薬剤師 入多裕
【関連記事】
>>乾燥性皮膚炎の痒みが漢方薬でみるみる軽快。自律神経の乱れも改善!
>>蕁麻疹に対する漢方医学の認識と漢方薬治療
>>アトピー性皮膚炎の原因と漢方薬
>>湿疹(皮膚炎)・アトピー・蕁麻疹の漢方治療と改善例
>>アトピー性皮膚炎の薬物療法とスキンケアのポイント
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