2021.12.27>空咳
ストレスが原因と考えられる咳症状、2ヵ月の漢方治療で改善
新型コロナウイルス感染後、空咳が改善されず来店した30代女性の漢方治療症例報告です。
西洋薬による治療で効果が見られませんでしたが、2か月の漢方治療で改善に向かいました。
2020年9月:新型コロナウイルス(COVID-19)に感染。
~2021年3月:咳が続き、気温が暖かくなった頃に一度寛解。
2021年8月:咳症状が再発するもPCR検査は陰性。鎮咳薬(コデイン)、去痰薬、吸入薬ともに効果なし。
2021年9月:富士堂漢方薬局に初来店
●患者さまについて
精神:緊張しやすい
睡眠:咳で寝つきが悪い
全身:手指冷え、集中したい時にフワフワ感、浮いた感じが出る(貧血も想定)
動悸:緊張時にあり
飲食:食欲普通、ストレス解消に甘いものを食べる
チョコレート、飴玉で咳が落ち着くことがある
10年ほど前に過呼吸
脈中、やや弦3.5/5、心下痞硬、左右胸脇苦満少し
舌やや老、鮮紅色、痩せ、歯痕なし、苔中、薄白黄
●咳が出やすい条件(増悪条件)
・冷気、乾燥時。
・電車に乗る時、ストレス時。
・家にいて落ち着いた状態の時。
コデインが効かないことから「麻黄証」ではないと判断。
半夏体質:心下痞硬
桂枝体質:動悸、発汗、緊張
⇒処方薬(煎じ薬)蘇子降気湯 7日分
【2回目<漢方服用1週間>】
以前ほど緊張しなくなった。
服用開始後2日間ほど眠気が出たが、今は治まっている。
咳症状は変わらず、空気が乾燥してきたせいか今日は症状が特にひどい。
突発的に咳が出る、吸気時に咳。
気道狭窄感あり。服用前はヒューヒュー音が出ていたが、今は治まっている。
増悪条件:ホコリ、空気の乾燥、電車内
⇒処方薬(煎じ薬)蘇子降気湯 +麦門冬湯 7日分
※鎮咳と潤すために麦門冬湯を追加
【3回目<漢方服用2週間>】
自宅にいてほとんど咳が出なかったが、今朝から再び咳がよく出る。
外出すると咳が出る。人混みやホコリに弱いと感じる。
痰が絡むようになってきた。発熱なし。
ヒューヒュー音が出ているように思えるとのこと。
声がれ、かすれあり。
昨年の新型コロナ感染時は血痰が出るほどであったが、今はそこまでの状態ではない。
気道過敏、腹筋痛(咳のしすぎ)
⇒処方薬(煎じ薬)柴朴湯+桔梗石膏
【4回目<漢方服用3週間>】
咳のみ続いている。
体の冷え、疲れなど他症状は改善してきた。
痰の量が以前より増えた。透明で切れやすい。
声がれ、かすれあり。
外出しない日は比較的落ち着いている。
昨年秋の咳症状発症時はコデイン、メジコン全く効かず。
肺検査、アレルギー検査などで異常なし。
仕事が多忙だった。1ヵ月間休職、帰省した際にも咳は出ていた。
2021年3月頃、仕事が落ち着いてきたら咳症状も改善。
現在は仕事やや忙しい状態。オーバーワーク状態にあることは自覚している。
多忙によるパニック症状か?以前に過呼吸発症歴あり。
痰を抑え、精神安定を図る。
リラックス、ストレス軽減方法を考えてみる。
⇒処方薬(煎じ薬)竹茹温胆湯
【5回目<漢方服用4週間>】
咳の勢いが改善し、痰の量が減ってきた。
最も緊張する仕事が昨日で一段落し、安心した。興奮して昨日は眠れなかった。
手の冷えも改善している。
昨日は緊張のしすぎと仕事のための練習のし過ぎか、腕がしびれていた。今は全く問題ない。
若いころはストレスや緊張をあまり感じなかったが、最近は緊張やストレスから体に不調をきたすようになったと思うそう。
今回から顆粒剤を希望。
⇒処方薬(散剤)半夏厚朴湯を1日3回服用
【6回目<服用6週間>】
かなり体調が良くなった。咳、痰もほとんどなくなった。
緊張は時々あるが、咳症状が落ち着いたので、以前に比べて楽。
たまに飲み忘れ、残薬が数包ある。
⇒処方薬(散剤)半夏厚朴湯を継続、終了
初回相談時は空咳症状が強く出ていたこと、体力があまりないことから、蘇子降気湯を出しました。
しかしあまり効果がなく、柴朴湯に変更。
これまでコデインが全く効いてないことから、麻黄は不要であると判断。
息を吐く時よりも吸うときに咳が出ることから、気管支喘息症状ではないと推測しました。
・咳症状に影響しそうなチョコレートを食べると症状が落ち着く。
・過呼吸発症歴あり。仕事が多忙である。
・肺検査、アレルギー検査で異常なし。
・既往歴として昨冬から今春に同様の症状が出、仕事が落ち着くと症状が改善。
これらから、多忙・ストレスによるパニック症状ではないかと推測し、竹茹温胆湯を選んだところ、痰の量が減少。それに伴い咳症状も減少しました。
ちょうど仕事が一段落ついたこともあり、症状が改善してきたと考えられます。
以降は半夏厚朴湯(顆粒剤)で調整。
年齢を重ねるに伴い、それまでストレスに感じなかったことがストレスになることも多々あります。
患者様は、「今後は仕事の量もご自身で無理なく出来る範囲でやっていきたい」とおっしゃっていました。
漢方相談では、症状だけにとらわれず、患者さんの症状が出る背景も視野に入れることが大切だとあらためて実感した症例でした。
薬剤師・産業カウンセラー入多裕
□関連ブログ
>>喘息における漢方医学の診断と治療
>>病院で治らなかった喘息が漢方で改善しました|体験談
>>原因不明の微熱が漢方2か月で平熱になりました|体験談
>>漢方で肩こり・むくみや疲労感など改善&精神的なフォローで前向きになれました|体験談
□コロナ漢方治療記事
>>「新型コロナウイルス感染症39例の漢方治療レポート」
>>「漢方を用いた新型コロナウイルス肺炎治療の実例」
□喉を潤す漢方茶「爽喉茶」も販売中!
>>https://kampo-fujidou.com/shop/products/detail/8
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
■オンライン相談もご利用ください>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
西洋薬による治療で効果が見られませんでしたが、2か月の漢方治療で改善に向かいました。
主訴
2021年8月末からの空咳。発熱なし、痰は気管の奥にあるが出てこない
現病歴
2020年9月:新型コロナウイルス(COVID-19)に感染。
~2021年3月:咳が続き、気温が暖かくなった頃に一度寛解。
2021年8月:咳症状が再発するもPCR検査は陰性。鎮咳薬(コデイン)、去痰薬、吸入薬ともに効果なし。
2021年9月:富士堂漢方薬局に初来店
症候
●患者さまについて
精神:緊張しやすい
睡眠:咳で寝つきが悪い
全身:手指冷え、集中したい時にフワフワ感、浮いた感じが出る(貧血も想定)
動悸:緊張時にあり
飲食:食欲普通、ストレス解消に甘いものを食べる
チョコレート、飴玉で咳が落ち着くことがある
10年ほど前に過呼吸
脈中、やや弦3.5/5、心下痞硬、左右胸脇苦満少し
舌やや老、鮮紅色、痩せ、歯痕なし、苔中、薄白黄
●咳が出やすい条件(増悪条件)
・冷気、乾燥時。
・電車に乗る時、ストレス時。
・家にいて落ち着いた状態の時。
漢方的評価と漢方服用後の経過
コデインが効かないことから「麻黄証」ではないと判断。
半夏体質:心下痞硬
桂枝体質:動悸、発汗、緊張
⇒処方薬(煎じ薬)蘇子降気湯 7日分
【2回目<漢方服用1週間>】
以前ほど緊張しなくなった。
服用開始後2日間ほど眠気が出たが、今は治まっている。
咳症状は変わらず、空気が乾燥してきたせいか今日は症状が特にひどい。
突発的に咳が出る、吸気時に咳。
気道狭窄感あり。服用前はヒューヒュー音が出ていたが、今は治まっている。
増悪条件:ホコリ、空気の乾燥、電車内
⇒処方薬(煎じ薬)蘇子降気湯 +麦門冬湯 7日分
※鎮咳と潤すために麦門冬湯を追加
【3回目<漢方服用2週間>】
自宅にいてほとんど咳が出なかったが、今朝から再び咳がよく出る。
外出すると咳が出る。人混みやホコリに弱いと感じる。
痰が絡むようになってきた。発熱なし。
ヒューヒュー音が出ているように思えるとのこと。
声がれ、かすれあり。
昨年の新型コロナ感染時は血痰が出るほどであったが、今はそこまでの状態ではない。
気道過敏、腹筋痛(咳のしすぎ)
⇒処方薬(煎じ薬)柴朴湯+桔梗石膏
【4回目<漢方服用3週間>】
咳のみ続いている。
体の冷え、疲れなど他症状は改善してきた。
痰の量が以前より増えた。透明で切れやすい。
声がれ、かすれあり。
外出しない日は比較的落ち着いている。
昨年秋の咳症状発症時はコデイン、メジコン全く効かず。
肺検査、アレルギー検査などで異常なし。
仕事が多忙だった。1ヵ月間休職、帰省した際にも咳は出ていた。
2021年3月頃、仕事が落ち着いてきたら咳症状も改善。
現在は仕事やや忙しい状態。オーバーワーク状態にあることは自覚している。
多忙によるパニック症状か?以前に過呼吸発症歴あり。
痰を抑え、精神安定を図る。
リラックス、ストレス軽減方法を考えてみる。
⇒処方薬(煎じ薬)竹茹温胆湯
【5回目<漢方服用4週間>】
咳の勢いが改善し、痰の量が減ってきた。
最も緊張する仕事が昨日で一段落し、安心した。興奮して昨日は眠れなかった。
手の冷えも改善している。
昨日は緊張のしすぎと仕事のための練習のし過ぎか、腕がしびれていた。今は全く問題ない。
若いころはストレスや緊張をあまり感じなかったが、最近は緊張やストレスから体に不調をきたすようになったと思うそう。
今回から顆粒剤を希望。
⇒処方薬(散剤)半夏厚朴湯を1日3回服用
【6回目<服用6週間>】
かなり体調が良くなった。咳、痰もほとんどなくなった。
緊張は時々あるが、咳症状が落ち着いたので、以前に比べて楽。
たまに飲み忘れ、残薬が数包ある。
⇒処方薬(散剤)半夏厚朴湯を継続、終了
考察
初回相談時は空咳症状が強く出ていたこと、体力があまりないことから、蘇子降気湯を出しました。
しかしあまり効果がなく、柴朴湯に変更。
これまでコデインが全く効いてないことから、麻黄は不要であると判断。
息を吐く時よりも吸うときに咳が出ることから、気管支喘息症状ではないと推測しました。
・咳症状に影響しそうなチョコレートを食べると症状が落ち着く。
・過呼吸発症歴あり。仕事が多忙である。
・肺検査、アレルギー検査で異常なし。
・既往歴として昨冬から今春に同様の症状が出、仕事が落ち着くと症状が改善。
これらから、多忙・ストレスによるパニック症状ではないかと推測し、竹茹温胆湯を選んだところ、痰の量が減少。それに伴い咳症状も減少しました。
ちょうど仕事が一段落ついたこともあり、症状が改善してきたと考えられます。
以降は半夏厚朴湯(顆粒剤)で調整。
年齢を重ねるに伴い、それまでストレスに感じなかったことがストレスになることも多々あります。
患者様は、「今後は仕事の量もご自身で無理なく出来る範囲でやっていきたい」とおっしゃっていました。
漢方相談では、症状だけにとらわれず、患者さんの症状が出る背景も視野に入れることが大切だとあらためて実感した症例でした。
薬剤師・産業カウンセラー入多裕
□関連ブログ
>>喘息における漢方医学の診断と治療
>>病院で治らなかった喘息が漢方で改善しました|体験談
>>原因不明の微熱が漢方2か月で平熱になりました|体験談
>>漢方で肩こり・むくみや疲労感など改善&精神的なフォローで前向きになれました|体験談
□コロナ漢方治療記事
>>「新型コロナウイルス感染症39例の漢方治療レポート」
>>「漢方を用いた新型コロナウイルス肺炎治療の実例」
□喉を潤す漢方茶「爽喉茶」も販売中!
>>https://kampo-fujidou.com/shop/products/detail/8
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
■オンライン相談もご利用ください>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
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