更新日:2025.09.22>高血圧
高血圧を漢方で改善するには|原因・症状・治療法を徹底解説
高血圧は日本人の約4,300万人が罹患するとされる国民病であり、生活の質に大きな影響を与える疾患です。
一方で、治療の現場では「薬を飲み続けることへの不安」「副作用による飲みにくさ」「薬を飲んでも血圧が安定しない」など、さまざまな理由から治療を継続することが難しいと感じる方も少なくありません。
この記事では「高血圧の原因とメカニズム」「西洋医学と漢方医学による治療法」「富士堂漢方薬局における体系的かつ精密な体質診断による漢方治療」について、詳しく解説します。脳卒中や心筋梗塞、慢性腎臓病などの重篤な合併症を予防するためにも、適切な血圧管理は極めて重要です。従来の西洋医療に加え、漢方薬という新たな選択肢についても理解を深めていただければと思います。
高血圧とは
高血圧の定義
血圧とは、血液が血管壁に与える血管内圧のことで、心臓の収縮期に最大血圧(収縮期血圧)、拡張期に最小血圧(拡張期血圧)となります。血圧は神経系、内分泌系、免疫系などの相互作用により、常に一定の範囲に調整されています。
現在、日本で用いられている診断基準(日本高血圧学会ガイドライン2019に準拠)では、高血圧を以下のように定義しています:
- 診察室血圧:収縮期血圧140mmHg以上 かつ/または 拡張期血圧90mmHg以上
- 家庭血圧:収縮期血圧135mmHg以上 かつ/または 拡張期血圧85mmHg以上
さらに、予防意識を高めるため「高値血圧」という区分も設けられました:
- 診察室:収縮期血圧130-139mmHg かつ 拡張期血圧80-89mmHg
- 家庭:収縮期血圧125-134mmHg かつ 拡張期血圧75-84mmHg
(日本高血圧学会:The Japanese Society of Hypertension (jpnsh.jp) 【「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話】cover2 (jpnsh.jp)より引用)
高血圧の主な原因(遺伝・生活習慣・疾患など)
高血圧症は大きく「本態性高血圧症」と「二次性高血圧」の2つに分類されます。
本態性高血圧症(約90%) 原因が特定できない高血圧で、以下の要因が複合的に関与します:
- 遺伝的要因
- 加齢による血管の硬化
- 食塩の過剰摂取(1日6g以下が推奨)
- 肥満(BMI25以上)
- 運動不足
- ストレス
- 喫煙・大量飲酒
二次性高血圧(約10%) 明確な原因がある高血圧で、原因疾患の治療により改善が期待できます:
- 腎性高血圧:腎炎、慢性腎臓病、腎動脈狭窄
- 内分泌性高血圧:原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫
- 血管性高血圧:高安動脈炎、大動脈縮窄症
- その他:閉塞性睡眠時無呼吸症候群、妊娠高血圧症候群など
高血圧の種類
血圧はあらゆる要因で変動し、環境や心理状態も数値に影響を与えます。診察室と自宅で測る場合、下記の種類が想定できます。
①非高血圧:診察室でも自宅でも、測りえた血圧がすべて正常範囲内のことです。
②仮面高血圧:自宅で測ると血圧が高いですが、診察室で測る時は正常です。医者に「血圧が正常だから、大丈夫」と言われがちです。このタイプはそれほど多くないですが、放置したまま状態が悪くなることもあるので、医師に家庭血圧の数値を知らせた方が良いでしょう。
③白衣高血圧:診察室で測ると血圧が高いが、自宅で測ると高くないことです。このタイプはそれほど問題はないですが、今後自宅でも高くなる可能性もあるため、定期的に計測しましょう。
④持続性高血圧:自宅でも診察室でも、血圧が高いことです。治療や管理が必要です。
(日本高血圧学会:The Japanese Society of Hypertension (jpnsh.jp) 【「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話】cover2 (jpnsh.jp)より引用)
血圧と生活習慣
食事、運動、嗜好品、ストレス管理、体重管理、禁煙、節酒などの生活習慣を見直すことで高血圧の予防や改善が期待できます。
具体的には減塩(一日6g以下)、肥満の予防や改善、節酒、禁煙、規則的な生活、ストレスがため込めない、よい運動習慣、食事バランスなどが有効です。その他、防寒(冬でも室温を18℃以上)、お風呂を入る際に大きい温度差を避けることなども大切です。
(日本高血圧学会:The Japanese Society of Hypertension (jpnsh.jp) 【「高血圧治療ガイドライン2019」解説冊子 高血圧の話】cover2 (jpnsh.jp)より引用)
高血圧の治し方|西洋薬と漢方薬
西洋薬での治療
現代医学では、高血圧に対して主に以下の薬剤が用いられます:
- ACE阻害薬・ARB:アンジオテンシンⅡという血管収縮物質の働きを抑える
- カルシウム拮抗薬:血管平滑筋の収縮を抑制する
- 利尿薬:余分な水分・塩分を排出して血液量を減らす
- β遮断薬:心拍数と心収縮力を抑制する
これらの薬剤は確実な降圧効果があり、心血管疾患の予防に重要な役割を果たしています。しかし、副作用や長期服用への不安から、治療継続が困難な場合もあります。
漢方薬での治療
漢方治療のメカニズムは現代医学と共通の部分もあり、また独特な部分もあります。そのため、漢方医学の特徴をよく理解したうえで治療を施すのが望ましいです。単に血圧を下げるのではなく、体質を改善することで根本的な治療を目指すのが特徴です。
漢方医学における高血圧の主な病態分類と処方例:
血液量の調節異常:六味丸・八味丸、五苓散、当帰芍薬散加黄耆釣藤鈎
寒による血管収縮:葛根湯、麻黄湯、続命湯
肥満・積滞(消化不良):防風通聖散、大柴胡湯、大承気湯、通導散
ストレス・精神的要因:柴胡加竜骨牡蛎湯、抑肝散、三黄瀉心湯、黄連解毒湯、大柴胡湯、半夏厚朴湯
気逆(エネルギーの逆流):桂枝茯苓丸、桃核承気湯、釣藤散、抑肝散
瘀血(血流の滞り):桂枝茯苓丸、地黄剤、当帰芍薬散加黄耆釣藤鈎、冠元顆粒
熱毒(体内の過剰な熱):三黄瀉心湯、黄連解毒湯、防風通聖散、大承気湯
痰滞(水分代謝異常):釣藤散、半夏厚朴湯
虚弱による調節障害:当帰芍薬散加黄耆釣藤鈎、真武湯、七物降下湯、釣藤散、抑肝散
このように、漢方では高血圧の背景にある体質や病態を詳細に分析し、それぞれに最適な処方を選択することで、副作用を最小限に抑えながら根本的な血圧改善を図ります。
漢方薬の飲み方や注意点
漢方薬は通常1日2~3回にわけて服用します。煎じ薬の場合は温かい状態で、エキス顆粒の場合はぬるま湯で服用するのが基本です。効果の実感には個人差がありますが、一般的に3ヶ月程度の継続服用が目安となります。
副作用は比較的少ないとされていますが、体質に合わない処方では胃腸障害や皮疹などが現れることがあります。また、他の薬剤との相互作用もあるため、必ず専門家の指導のもとで服用することが重要です。妊娠の可能性がある場合や、他疾患の治療中の方は、事前に医師や薬剤師にご相談ください。
富士堂での高血圧治療|SCI(証候分類)による高血圧のタイプ分析と漢方治療
前項では、漢方医学における一般的な高血圧の体質分類についてご紹介しましたが、実際の臨床においては、こうした分類のみでは治療方針を決定するうえでの情報として不十分である場合が少なくありません。
許志泉先生(富士堂漢方医学研究所・富士堂漢方薬局)が長年の研究及び臨床経験に基づいて提唱したSCI方証医学の視点から、より詳細な体質チェックを行っています。SCI方証医学とは、従来の中医学・漢方医学を西洋医学の概念と結合させて、「症候・体質・病」から客観的に分析するメソッドです。
この理論を活用することで、一人ひとりの体質に的確かつ精密に適合する漢方薬を選び出すことが可能となり、より効果的な漢方治療を実現しています。
高血圧のタイプ分類(SCI方証医学)
高血圧は単に血圧が高いという現象ではなく、体質や背景によって複数のタイプに分けられます。以下は代表的なタイプの一部です。
- 地黄証(小腹不仁):加齢による衰えや、血管の老化が関与するタイプ。
- 当帰証(血虚・血滞):血液の質の低下や血管の栄養不足により起こるタイプ。
- 大黄証(結滞・熱毒):体内にこもった「熱毒」が血管に影響し、血圧上昇を伴うタイプ。
- 柴胡証(胸脇苦満):慢性的なストレスなどが関与するタイプ。日内変動タイプにも
- 茯苓証(水液停滞、眩、悸):水分代謝の停滞により、浮腫を伴いやすいタイプ。
- 桂枝証(衝逆症):自律神経の乱れによる血管収縮・血流異常が関与するタイプ。
※実際には「柴胡+地黄」など、複数の特徴が重なった複合タイプも多く見られます。
高血圧に用いられる代表的な漢方薬
許志泉『漢方求真』を参考にすると、高血圧症に対しては以下の処方がしばしば用いられます。
- 麻黄剤:葛根湯、続命湯、麻黄湯
- 桂枝剤:桂枝茯苓丸、桃核承気湯、五苓散
- 柴胡剤:大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蠣湯、抑肝散、冠脈通塞丸(柴胡地黄剤)
- 黄耆剤:当帰芍薬散加黄耆釣藤鈎、七物降下湯(地黄黄耆剤)
- 大黄剤:三黄瀉心湯、防風通聖散、大黄牡丹皮湯、九味梹榔湯、通導散、大承気湯
- 地黄剤:八味丸(六味丸、知柏地黄丸、牛車腎気丸、味麦地黄丸)、四物湯
- 半夏剤:釣藤散(半夏石膏剤)、半夏厚朴湯
- 芩連剤:黄連解毒湯、三黄瀉心湯、葛根黄芩黄連湯
- 附子剤:真武湯
- 丹参製剤:冠心逐瘀丹
- 川芎製剤:川芎茶調散
上記処方は、あくまでも一例となります。体質と証に合わない処方では、逆効果になることもあるため、専門家のアドバイスのもとでの服用が大切です。
Q&A:高血圧症の漢方治療に関するよくあるご質問
Q1: 漢方薬だけで高血圧は治りますか?
A: 軽度から中等度の高血圧では、漢方薬単独でも効果が期待できることも多いです。ただし、重度の場合や緊急性がある場合は、西洋薬との併用や医療機関での治療が必要です。体質に合った漢方薬を継続することで、根本的な血圧改善が期待できます。
Q2: 高血圧に効く漢方薬はどれですか?
A: 体質により異なりますが、代表的なものに釣藤散、柴胡加竜骨牡蛎湯、八味地黄丸、大柴胡湯、七物降下湯、冠心逐瘀丹などがあります。専門家による体質診断が重要です。
Q3: 高血圧の漢方治療はどのくらいの期間で効果が出ますか?
A: 個人差がありますが、多くの場合2-4週間で頭痛やめまいなどの自覚症状の改善を感じ始めます。血圧数値の安定には3ヶ月程度かかることが多く、体質改善による根本的な効果は6ヶ月以上の継続で実感される方が多いです。
Q4: 高血圧の薬と漢方薬は一緒に飲んでも大丈夫ですか?
A: はい、併用可能です。むしろ西洋薬で血圧をコントロールしながら、漢方薬で体質改善を図ることで、将来的に西洋薬の減量や中止を目指せる場合があります。ただし、相互作用に注意が必要なため、必ず医師と漢方専門家の両方に相談してください。
Q5: 高血圧の漢方治療に副作用はありますか?
A: 漢方薬は一般的に副作用が少ないとされていますが、体質に合わない処方では胃腸障害や皮疹などが起こる場合があります。甘草を含む処方では偽アルドステロン症のリスクもあるため、専門家の指導のもとで服用することが大切です。
Q6: 高血圧の漢方治療に向いている人はどのような人ですか?
A: 特に「ストレスが多い方」「冷えや疲労感がある方」「西洋薬の副作用が不安な方」「頭痛・めまい・肩こりなどの症状を併発している方」「根本的な体質改善を希望される方」に漢方治療が適しています。
Q7: 高血圧の漢方薬はいつ飲むのが効果的ですか?
A: 漢方薬は通常1日2~3回にわけて服用します。煎じ薬は温かい状態で、エキス剤はぬるま湯で服用するのが基本です。1日2-3回に分けて継続的に服用することが重要です。
Q8: 妊娠中の高血圧でも漢方薬は使えますか?
A: 妊娠中でも安全に使用できる漢方薬はありますが、慎重な判断が必要です。特に妊娠高血圧症候群では専門的な管理が必要なため、産婦人科医に相談の上で服用してください。母胎と胎児への安全性を考慮した漢方を選択します。
Q9: 漢方治療中の血圧測定はどうすればいいですか?
A: 家庭血圧を毎日同じ時間に測定し、血圧手帳に記録することが大切です。朝起床後1時間以内と就寝前の測定が推奨されます。漢方薬の効果判定や処方調整の重要な参考資料となりますので、漢方相談時には血圧手帳もお持ちください。
Q10: 富士堂の高血圧漢方相談の特徴は何ですか?
A:従来の漢方医学に加えて、 SCI方証医学に基づく精密な体質診断により、一人ひとりに最適な漢方薬をオーダーメイドにて選定します。初回は60分程度の詳細な問診を行い、継続的なフォローアップで処方を調整していきます。また、遠方の方や毎回の来店が難しい場合は、オンライン相談を選択いただくことも可能です。
富士堂の漢方が選ばれる理由
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一般的な中医学や漢方医学に加えて、西洋医学的な見地や最新の研究成果を取り入れた「SCI方証医学」の理論を活用し、一人ひとりの体質をより精密に見極めていきます。
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富士堂漢方薬局は、東京の飯田橋と渋谷に2店舗を構えるほか、LINEをはじめとするオンライン相談にも対応しています。ご来店が難しい方でも、LINE・WeChat・Teamsを通じて全国どこからでもご相談いただけます。
また、漢方薬は全国へ配送可能ですので、ライフスタイルに合わせて無理なく治療を続けていただけます。
- カウンセリングの流れ
ご予約 → ご相談 → 漢方薬の選定 → ご確認・お会計 → 調剤・お渡し(発送)
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富士堂漢方医学研究所 所長 医学博士 許志泉
>>所長 許志泉のインタビューはこちら
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