胃の不調とあごのニキビ・肌荒れ、妊活でご相談いただいた患者様（30代女性）の症例

●お悩みの詳細

①胃痛

1か月ほど前から。揚げ物、油もので胃痛、下痢。

今年から在宅勤務（パソコン業務）で家族と一緒に夕食をとる機会が増えた。飲酒回数も増加。仕事などのストレスはそれなりにあるが、眠れている。

②ニキビ・肌荒れ

ピル（7年ほど前から）の服用を中止してから発症。

③妊活

高プロラクチン血症でピルを服用していたが妊活を始めるため中止。検査で多嚢胞性卵巣（PCO：超音波下での卵巣所見にネックレスサインが認められるもの。ネックレスサインとは、10個前後の小さな卵胞のこと。これにより卵巣表面が硬くなり排卵が十分にできなくなる）指摘。乳汁分泌なし。生理周期40日、生理痛は5段階中3くらい。20歳から卵巣のう腫あり。

 

●患者様について

食欲：少ない、間食なし、野菜多め。水分摂取：1日500ｍL程度。アルコール：週5回、1回1，2杯。口：渇き、口唇乾燥。咽喉：乾燥。目：疲れ、乾燥、赤目。

肩こり：あり。動悸：なし。発汗：普通、全身にかく。冷え：腰にあり。のぼせやほてりなし。両下肢：浮腫気味。睡眠：7～8時間、多夢。便通：1日1回、普通。尿：1日7，8回。

健診：γ-GTP98。脈：やや沈、中、やや細弱。腹壁：中、腹力やや硬。心下痞、右脇やや硬い、胸脇苦満なし。舌質：ややドン、淡白紅、歯痕なし。舌苔：やや湿、薄白黄。

⇒半夏体質、桂枝体質と判断。

 

●初回の生活指導

冷たいものを控えて、消化のいいものを取るように。

●初回の漢方薬：

桂枝茯苓丸（1日3回）（桂枝体質、活血させる）

半夏瀉心湯（1日3回）（半夏体質、胃腸の不調）

桂枝茯苓丸・半夏瀉心湯の2種類で1日税込792円×28日分

折衝飲（1日3回、生理1日～3日）（生理遅れ、生理痛3/5）1日税込330円×3日分

麦芽（1回4T、1日2回）（PCOS、ホルモンバランス改善）1本税込7560円（約30日分）



●漢方治療の経過

【2回目＜服用4週間＞】

胃腸の調子改善。胃もたれ感なし、下痢なし。あごニキビもなくなった。

⇒半夏瀉心湯中止（症状改善したため）。今後は、生理周期（40日）の改善を中心に治療することに

⇒漢方薬：麦芽、桂枝茯苓丸　※折衝飲は生理期間に服用のため今回はなし。

 

【3回目＜服用2か月＞】

胃腸の具合はすっかり改善。お腹の張り感も改善。

月経周期が徐々に短くなっている（50日→42日→39日）。漢方薬が効いているかも？

・生理痛は多少あるが、鎮痛薬をたまに服用する程度。朝方口の乾燥、寝つきは良好。

・基礎体温はつけているが、不安定でいつ排卵日かわからないためタイミングは取ってない。

⇒半夏瀉心湯は不要。折衝瘀血散は飲みにくいとのことで中止。

漢方薬：

麦芽、桂枝茯苓丸（前回と同じ）

 

【4回目＜服用3か月＞】

前回生理周期：36日。徐々に短くなっている。ニキビもずいぶん改善した。

・前回タイミングを取ってみたが、ダメだった。

⇒まだ生理周期が長いため、卵がうまく育ってない可能性あり。

漢方薬：

麦芽、桂枝茯苓丸+参茸補血丸（1回10Ｔ、1日3回）1本税込6600円（約14日分）を2本追加

 

【5回目＜服用4か月＞】

参茸補血丸服用後、とくに胃腸障害はない。

・睡眠：よく眠れている。最近は眠くてしょうがない。

・生理予定日をすぎたが、生理がきていない。

・水分摂取：1日1000ｍLくらい。

漢方薬：

麦芽、桂枝茯苓丸、参茸補血丸

 

【6回目＜服用4か月半＞】

病院の健診で妊娠5週くらいと言われた（胎嚢の大きさから）。

⇒麦芽、桂枝茯苓丸中止。

漢方薬：

参茸補血丸のみ

 

6週まで1回10Ｔ、1日3回。6週から1回10Ｔ、1日2回に減量。9週から1回5Ｔ、1日2回に減量。

12週以降中止して様子を見ることに。

⇒漢方治療終了までの総額：税込約12.8万円

 

---考察---

胃の不調とニキビで来店された患者さんでしたが、ホルモンバランスが整い、その結果妊娠にも至ることができました。

血行を改善する桂枝茯苓丸やホルモンバランスを整える麦芽を服用することにより、PCOSが徐々に改善し生理周期が整ってきたと考えらます。

さらに強壮・強精作用を持つ鹿茸含有製剤である参茸補血丸を追加することで、無事妊娠につながりました。

漢方治療は、まず患者さんの症候から体質・証を見分け、それに見合う漢方薬、生薬を選択していくことが大切です。いくつかのお悩みも漢方薬で一緒に改善を目指せる場合もありますので、ぜひゆっくりお話を聞かせてください。

担当薬剤師：入多裕

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