更新日:2025.10.09>アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
乾燥性皮膚炎の痒みが漢方薬で軽快、自律神経の乱れも改善
冬場など気温が低く乾燥しがちな季節になると増える主訴が『皮膚のかゆみ』です。
繰り返すかゆみに悩まされ、夜も熟睡できないことが数年以上続く、そんなケースも珍しくありません。
今回は10年以上、皮膚のかゆみに悩まされてきた60歳の患者様の症例について見ていきましょう。
乾燥性皮膚炎とは|症状と原因
乾燥性皮膚炎は、皮膚の水分や皮脂の不足により皮膚のバリア機能が低下し、外的刺激に対して過敏になることで起こる皮膚疾患です。主に秋冬の乾燥した季節に悪化しやすく、高齢者に多く見られます。
主な症状
- 皮膚の乾燥とカサつき
- 強いかゆみ(特に夜間に悪化)
- 皮膚の赤み・発疹
- 掻き壊しによる色素沈着
- ひび割れや皮むけ
原因
乾燥性皮膚炎の発症には、以下の要因が関与します:
- 加齢による皮脂分泌の減少(50代以降で約40%減少)
- 環境要因(湿度50%以下の乾燥環境、暖房による室内湿度低下)
- 入浴時の過度な洗浄
- ストレスや睡眠不足による自律神経の乱れ
- ホルモンバランスの変化(更年期)
統計によると、65歳以上の高齢者の約60%が乾燥性皮膚炎の症状を経験しており、特に関東地方では冬季の湿度が30-40%まで低下するため、症状が悪化しやすい傾向にあります。
乾燥性皮膚炎の治し方|西洋薬と漢方薬
西洋薬での治療
西洋医学では症状に応じた対症療法が中心となります:
外用薬
- ステロイド外用薬(炎症・かゆみの抑制)
- 保湿剤(ヘパリン類似物質、尿素軟膏)
- 免疫抑制剤(タクロリムス軟膏)
内服薬
- 抗ヒスタミン薬(かゆみの軽減)
西洋薬は即効性がありますが、根本的な体質改善には限界があり、長期使用による副作用の懸念がある場合もあります。
漢方薬での治療
漢方医学では、「乾燥性皮膚炎」を単に皮膚の症状としてではなく、体全体のバランスの乱れとして捉えるのが特徴です。例えば、以下のような体質があります。
- 血虚(けっきょ):血が不足して皮膚や全身に栄養が行き届かず、乾燥や炎症が生じること
- 気虚(ききょ):エネルギー不足により皮膚を守る力が低下し、外部刺激に弱くなること
- 陰虚(いんきょ):体の潤い不足によって皮膚が乾燥し、熱感を伴う湿疹が出ること
- 風邪(ふうじゃ):外部からの刺激により皮膚にかゆみや炎症が生じること
- 湿熱(しつねつ):体内の湿と熱が結合して皮膚に赤みや分泌物を伴う炎症が発生すること
これらは乾燥性皮膚炎の原因を考察するための材料の一例に過ぎませんが、このように、漢方では「なぜ皮膚に炎症が起こるのか?」を体質ごとに分析し、そこに合った処方を考えていきます。
富士堂漢方薬局における乾燥性皮膚炎の治療法
前項では、漢方医学における一般的な乾燥性皮膚炎の体質分類についてご紹介しましたが、実際の臨床においては、こうした分類のみでは治療方針を決定するうえでの情報として不十分である場合が少なくありません。
許志泉先生(富士堂漢方医学研究所・富士堂漢方薬局)が長年の研究及び臨床経験に基づいて提唱したSCI方証医学の視点から、より詳細な体質チェックを行っています。SCI方証医学とは、従来の中医学・漢方医学を西洋医学の概念と結合させて、「症候・体質・病」から客観的に分析するメソッドです。
この理論を活用することで、一人ひとりの体質に的確かつ精密に適合する漢方薬を選び出すことが可能となり、より効果的な漢方治療を実現しています。
例えばSCI(証候分類)を活用して、皮膚症状を以下のようにタイプ分けし、それぞれに適合する生薬や傾向を判断します:
- 地黄証:陰虚による皮膚の乾燥とほてり感を伴う慢性的な炎症のタイプ
- 当帰証:血虚による皮膚の乾燥と栄養不足で起こるかさつきや炎症のタイプ
- 黄連証:熱毒による皮膚の赤みや強いかゆみ、分泌物を伴うタイプ
- 防風証:風邪による突発的で移動性のあるかゆみや皮疹のタイプ
- 茯苓証:湿の停滞による皮膚のじくじくした炎症や浮腫を伴うタイプ
上記はあくまでも具体例の一部であり、また「当帰+黄連」などの複数の特徴が合わさった複合タイプも多く見受けられます。
乾燥性湿疹に使われる代表的な漢方薬
乾燥性湿疹に使われる漢方は、例えば以下のものがあります:
- 当帰飲子:血を補い風を除き、慢性的な皮膚の乾燥とかゆみに
- 四物湯:血虚による皮膚の栄養不足と乾燥に
- 温清飲:血虚と熱証が混在する皮膚炎に
- 消風散:風湿熱による急性の皮膚炎やかゆみに
- 白虎加人参湯:強い熱感と口渇を伴う皮膚の炎症に
- 加味逍遥散:ストレスが関与する女性の皮膚トラブルに
- 桂枝茯苓丸:血流の滞りによる皮膚の色素沈着や炎症に
- 温経湯:冷えと血虚を伴う女性の慢性皮膚炎や月経不順に
- 芎帰調血飲第一加減:産後や術後の血虚による皮膚の乾燥と炎症に
- 人参養栄湯:気血両虚による慢性的な皮膚炎で体力低下を伴う場合に
上記処方は、あくまでも一例となります。体質と証に合わない処方では、逆効果になることもあるため、専門家のアドバイスのもとでの服用が大切です。
症例|1年中ひどい痒み。イライラ、不眠、記憶力の低下を伴う
担当 所長・許志泉先生
現病歴
数年前の冬(2月)。皮膚掻痒10年間、口渇、煩躁、集中力や記憶力の低下を訴えた60歳の女性が、漢方治療を求めてご来店。
10年前=50歳(更年期)になってから、冬に背中にかゆみを伴う赤い湿疹が出るようになりました。
症状は年々悪化し冬のみでなく夏以外の季節にも症状が出るようになりました。
最終的には一年中ひどい痒みが出るようになり、皮膚表面はカサカサ乾燥。
2年ぐらい前より腹部、胸部までに広がり、全身に広がりました。
体質・生活習慣など
口がいつも渇き、カラカラでお茶をよく飲む。
膣の乾燥感や痛みを感じる。
物忘れが頻繁にあり、病院で認知症テストをしたが、結果は正常だった。
汗はかかない。
食欲はある。一日一回排便あり。
ドライアイではない。運動習慣はない。
既往歴:3年前に帯状疱疹
薬歴、副作用:ピリン系鎮痛剤で発疹が出る
漢方治療プラン|血を養い、熱毒をさまし、痒みを止める
中医学では、血が虚にして風・燥が生じて痒くなり、風・燥は「熱毒」に化けていると判断。
そこで、漢方治療は血を養い、風を袪し、燥を潤し、熱毒をさまし、痒みを止めることをねらいとした。
漢方薬は当帰・地黄・シツリシ・芍薬・川芎・防風・荊芥・何首烏・黄柏・荊芥・山梔子・黄連・黄柏・黄芩・茵陳蒿などを選択。
漢方服用後の経過|漢方薬の効果を二週間で感じるように。痒みがみるみる軽快
漢方服用後、2週間のうちに効き目を感じた。
痒みがみるみる軽快。その他、のどの渇き・集中しにくい・健忘やボーっとする症状なども改善。
一年間の治療で、すべての症状はなくなり、漢方治療は終了となりました。
本症例から分かる3つのこと|皮膚掻痒・皮膚炎によって不眠、自律神経失調症も生じた
この症例は、三つの段階で捉えることができます。
1、<冬のみ>単純な乾燥性皮膚炎
50歳より毎年冬に出る皮膚乾燥は、乾燥性皮膚炎とみるべきでしょう。
また、膣の乾燥や痛みもあり、乾燥性膣炎ともいえるでしょう。
2、<一年中>皮膚掻痒・皮膚炎
冬のみだった症状が、一年中みられる皮膚掻痒・皮膚炎に変貌しました。
皮膚掻痒および掻き壊すことで皮膚がより敏感になり、一年中痒い状態となってしまいました。
3、皮膚掻痒・皮膚炎による不眠、精神面や自律神経失調症
皮膚掻痒・皮膚炎による眠れない、イライラなどの精神面や自律神経失調症となっている段階です。
皮膚掻痒・皮膚炎による熱毒が生じてきて、イライラ・睡眠障害・喉の乾燥感・記憶低下・自律神経の乱れがでました。
この症例から見えることは、皮膚症状が皮膚の局部だけではなく、全身にも影響することです。
外用薬のみの治療では不足があり、体質を踏まえて根本から、より全体的に漢方治療を行うことが肝要です。
Q&Aよくあるご質問
乾燥性皮膚炎の原因は何ですか?
加齢による皮脂分泌・水分量の減少、環境の乾燥、ストレス、ホルモンバランスの変化などが主な原因です。
なぜ夜中に痒みが強くなるのですか?
夜間は副交感神経が優位になり、血管拡張により痒みを感じやすくなります。また、日中の注意が散漫になることも影響することがあります。
漢方薬だけで皮膚の乾燥や痒みは治りますか?
体質に合った漢方薬であれば根本的な改善が期待できますが、重症の場合は西洋医学との併用をおすすめすることもあります。また、肌質にあったスキンケアも大切ですので、必要に応じてスキンケアのご提案もさせていただきます。
皮膚の乾燥に効果がある代表的な漢方薬は?
当帰飲子、四物湯、温清飲、消風散などが代表的ですが、体質・原因により適した処方が異なります。
漢方薬はどのくらいで効果が出ますか?
個人差がありますが、2週間〜1ヶ月で何らかの変化を感じる方が多く、根本的改善には3〜6ヶ月程度必要なことが多いです。ご相談いただいた際に、ある程度の見通しを立てることが可能です。
他の薬と併用しても大丈夫ですか?
基本的には併用可能ですが、稀に相互作用の可能性もあるため、必ずご相談ください。
妊娠中・授乳中でも服用できますか?
妊娠授乳期に適さない生薬もあるため、必ず妊娠の可能性や授乳状況をお伝えの上、ご相談ください。
皮膚症状が再発することはありますか?
体質改善が不十分な場合や生活習慣の乱れにより再発する可能性はありますが、適切な養生により予防可能です。治療終了後に再発がおこらないための養生についても、しっかりフォローさせていただきます。
富士堂ではどのように皮膚の相談ができますか?
富士堂漢方薬局では、飯田橋店・渋谷店での対面相談に加え、LINEを利用したオンライン相談も承っています。
初回は、詳しい問診と体質チェックを行い、お一人おひとりに合った処方をご提案いたします。オンライン相談をご希望の場合は、事前に患部のお写真をお送りいただけますと、より正確に状態を把握でき、適切なご提案につながります。可能な範囲でご協力いただければ幸いです。
富士堂の漢方が選ばれる理由
- オーダーメイドの治療
体質や症状を丁寧に確認し、あなたに合った処方をご提案します。
一般的な中医学や漢方医学に加えて、西洋医学的な見地や最新の研究成果を取り入れた「SCI方証医学」の理論を活用し、一人ひとりの体質をより精密に見極めていきます。
- 豊富な臨床経験
年間7,000名以上の患者様にご相談いただいている専門家が対応します。
- 安心の品質管理
信頼できる国内メーカーの生薬のみを使用し、安全性を徹底しています。
- オンライン相談対応
富士堂漢方薬局は、東京の飯田橋と渋谷に2店舗を構えるほか、LINEをはじめとするオンライン相談にも対応しています。ご来店が難しい方でも、LINE・WeChat・Teamsを通じて全国どこからでもご相談いただけます。
また、漢方薬は全国へ配送可能ですので、ライフスタイルに合わせて無理なく治療を続けていただけます。
- カウンセリングの流れ
ご予約 → ご相談 → 漢方薬の選定 → ご確認・お会計 → 調剤・お渡し(発送)
➤初回相談は予約優先制。お気軽にご相談ください。
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
■オンライン相談も受付中!>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
まとめ
乾燥性皮膚炎は単なる皮膚の問題ではなく、全身の気血水の流れや体質と深く関わる疾患です。西洋医学による対症療法も重要ですが、漢方医学による根本的な体質改善により、症状の軽減だけでなく再発予防も期待できます。
今回ご紹介した症例のように、長年の皮膚症状が自律神経の乱れや記憶力低下にまで発展することもありますが、適切な漢方治療により総合的な改善が可能です。
お一人おひとりの体質や症状は異なるため、専門家による個別の相談をおすすめします。富士堂漢方薬局では、豊富な経験と専門知識を活かし、あなたに最適な治療プランをご提案いたします。皮膚の乾燥や痒みでお困りの方は、ぜひ一度ご相談ください。
富士堂漢方薬局所長・医学博士 許志泉
関連記事
■漢方相談予約・お問合せ>>「お問い合わせ(LINE,WeChat,Skype,メールフォーム」
■オンライン相談も受付中!>>「オンライン漢方相談|来店なしでお薬お届け」
Category
Archive
- 2025年10月
- 2025年9月
- 2025年8月
- 2025年7月
- 2025年6月
- 2025年5月
- 2025年4月
- 2025年3月
- 2025年2月
- 2025年1月
- 2024年12月
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年11月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年10月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年6月
- 2015年3月
- 2014年7月
- 2014年3月
- 2013年12月
- 2013年8月
- 2012年12月
- 2012年10月