2020.07.17所長・COVID-19記事
新型コロナウイルス感染症39例の漢方治療レポート
新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)が世界中で猛威を振るい続けるなか、日本、特に東京や大阪などの大都市圏で感染が拡大しつつあり、第二波も押し寄せてきています。
徐々にSARS-CoV-2や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究が進んでいる一方で、漢方を用いた治療の報告が極めて少ないことから、このパンデミックに対して「漢方治療」という選択がなかなかなされていない現状が伺えます。
そのような中、私(富士堂漢方薬局所長・医学博士 許志泉)は今年2月から7/6現在までに3例のCOVID-19肺炎重症者の治療に携わってきました。また、臨床症状経過、接触歴、PCR検査などからCOVID-19であると判断した36例の軽症者に対し、漢方のみを用いた治療を施しました。
COVID-19という新しい病気やそれに対する漢方治療とケアを通じ、数多くの気付きや経験を得ました。そちらについては分析および見解とともに、まとめ次第、共有させていただきたいと思いますが、それに先んじてまずは先述のCOVID-19患者計39名の漢方治療レポートとして、客観的な数値などを公開いたします。性別比、重症度分類、PCR検査の実施状況及び結果、年代、発症時期、発症から相談までの期間、相談時点での症状、そして治療に用いた漢方処方などの統計となります。皆さまのご参考として、また患者様の療養及び心身の回復や社会復帰のために少しでもお力になれたら幸いです。
39例中、男性9名(23%)、女性30名(77%)であった。
39例中、重症肺炎3名、入院歴のある軽症者1名、自宅療養中の軽症者35名であり、自宅療養中の軽症者が90%を占めている。
39例中、全体の74%にあたる29名はPCR検査を受けることができなかった。
PCR陽性患者は6名で全体の16%、陰性患者4名で10%にあたり、陰性患者4名のうち1名(家族に重症肺炎感染者がおり本人も症状がある)は初期に実施したが、他の3名の検査時期は発症から数週間後ないし2か月後であった。
20代10名(26%)、30代11名(28%)、40代10名(26%)となり20~40代をあわせると31名で、全体の80%を占めた。そして50代6名(15%)と60代、70代それぞれ1名ずつであり、比較的若い年代層の感染が多いという流行事実と一致した。
※発祥時期症例数の2月1日~5月30日までの期間で半月ごとに分けて集計
2/1~2/15に1名、2/16~2/29に6名、3/1~3/15に 6名、3/16~3/31に7名、4/1~4/15に13名、4/16~4/30に 4名、5/1~5/15に2名、5/16~5/30は0名であった。
緊急事態宣言発令(4/7)の前後の2週間での発症者が全体の33%を占めた。
※発症から当薬局へ相談するまでにかかった期間
発症1週間以内13名、発症2週間目6名、発症3週間目3名、発症4週間目1名、発症5週間目2名、発症6週間目1名、発症7週間目6名、発症8週間目1名、発症9週間以上6名であった。
半数以上が発症から3週間以上経ってからの相談であり、「漢方によるコロナ治療」に関する情報の浸透が希薄であることや、治療の選択肢の中から「漢方」をチョイスするまでのきっかけの少なさが関連していることが推測される。
微熱27例で一番多く、次に、疲労感・体力低下、咳・痰が15例となる。
悪寒11例、息苦しさ10例となった。消化器症状の下痢は9例もあった。
緊張不安、咽頭痛、頭痛はそれぞれ8例で、ほてり・熱感は6例であった。
鼻水、冷え、胸部の疼痛・つかえ、食欲低下は6例であった。
5名以下の症状は動悸・頻脈(5)、吐気(4)、汗・寝汗(4)、肩こり(3)、体重減少(3)、手足のピリピリ感(2)、味覚低下(2)、背部痛(2)、腹痛(2)、眩暈(2)、憂うつ(1)、耳鳴(1)、筋肉痛(1)であった。
漢方治療未実施の2名を除いた37例に用いた漢方処方は51種類であり、以下の特徴が挙げられる。
半夏剤の応用の多さ:
半夏厚朴湯を用いた数は11例で一番多かった。半夏厚朴湯には去痰鎮咳の作用だけではなく、精神不安・胸部違和感・圧迫感・息苦しさなどにも効果があるためである。
消化器の症状にも対応する半夏剤の藿香正気散6例、呼吸器と消化器や不安をカバーできる竹茹温胆湯(6例)と加味温胆湯(4例)、空咳に効く麦門冬湯3例、四君子湯と喘四君子湯各1例、茯苓飲合半夏厚朴湯1例、半夏瀉心湯1例であった。
炎症に柴胡剤を用いること:
竹茹温胆湯6例、柴胡桂枝湯5例、柴朴湯3例、四逆散2例、柴蘇飲1例、柴葛解肌湯1例、滋陰至宝湯1例があった。
麻黄剤は悪寒・高熱・咳喘に欠かせない:
五虎湯または麻杏甘石湯が4例に使われ、葛根湯4例、大青竜湯と柴葛解肌湯、越婢加朮湯がそれぞれ1例であった。
虚証に対応する処方:
病態に応じて麻黄附子細辛湯、桂姜棗草黄辛附湯、真武湯、生脈散(人参・麦門冬・五味子)、亀鹿仙などが使われた。
関連リンク
⇒LINEでご相談ご希望の方は、下記QRコードを読み取り「漢方相談希望」のメッセージをお送りください
徐々にSARS-CoV-2や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する研究が進んでいる一方で、漢方を用いた治療の報告が極めて少ないことから、このパンデミックに対して「漢方治療」という選択がなかなかなされていない現状が伺えます。
そのような中、私(富士堂漢方薬局所長・医学博士 許志泉)は今年2月から7/6現在までに3例のCOVID-19肺炎重症者の治療に携わってきました。また、臨床症状経過、接触歴、PCR検査などからCOVID-19であると判断した36例の軽症者に対し、漢方のみを用いた治療を施しました。
COVID-19という新しい病気やそれに対する漢方治療とケアを通じ、数多くの気付きや経験を得ました。そちらについては分析および見解とともに、まとめ次第、共有させていただきたいと思いますが、それに先んじてまずは先述のCOVID-19患者計39名の漢方治療レポートとして、客観的な数値などを公開いたします。性別比、重症度分類、PCR検査の実施状況及び結果、年代、発症時期、発症から相談までの期間、相談時点での症状、そして治療に用いた漢方処方などの統計となります。皆さまのご参考として、また患者様の療養及び心身の回復や社会復帰のために少しでもお力になれたら幸いです。
1.性別比
39例中、男性9名(23%)、女性30名(77%)であった。
2 重症度
39例中、重症肺炎3名、入院歴のある軽症者1名、自宅療養中の軽症者35名であり、自宅療養中の軽症者が90%を占めている。
3 PCR検査の実施状況及び結果
39例中、全体の74%にあたる29名はPCR検査を受けることができなかった。
PCR陽性患者は6名で全体の16%、陰性患者4名で10%にあたり、陰性患者4名のうち1名(家族に重症肺炎感染者がおり本人も症状がある)は初期に実施したが、他の3名の検査時期は発症から数週間後ないし2か月後であった。
4 年代
20代10名(26%)、30代11名(28%)、40代10名(26%)となり20~40代をあわせると31名で、全体の80%を占めた。そして50代6名(15%)と60代、70代それぞれ1名ずつであり、比較的若い年代層の感染が多いという流行事実と一致した。
5 発症時期
※発祥時期症例数の2月1日~5月30日までの期間で半月ごとに分けて集計
2/1~2/15に1名、2/16~2/29に6名、3/1~3/15に 6名、3/16~3/31に7名、4/1~4/15に13名、4/16~4/30に 4名、5/1~5/15に2名、5/16~5/30は0名であった。
緊急事態宣言発令(4/7)の前後の2週間での発症者が全体の33%を占めた。
6 発症から相談まで期間別の症例数
※発症から当薬局へ相談するまでにかかった期間
発症1週間以内13名、発症2週間目6名、発症3週間目3名、発症4週間目1名、発症5週間目2名、発症6週間目1名、発症7週間目6名、発症8週間目1名、発症9週間以上6名であった。
半数以上が発症から3週間以上経ってからの相談であり、「漢方によるコロナ治療」に関する情報の浸透が希薄であることや、治療の選択肢の中から「漢方」をチョイスするまでのきっかけの少なさが関連していることが推測される。
7 軽症者33例の初回相談時の症状
微熱27例で一番多く、次に、疲労感・体力低下、咳・痰が15例となる。
悪寒11例、息苦しさ10例となった。消化器症状の下痢は9例もあった。
緊張不安、咽頭痛、頭痛はそれぞれ8例で、ほてり・熱感は6例であった。
鼻水、冷え、胸部の疼痛・つかえ、食欲低下は6例であった。
5名以下の症状は動悸・頻脈(5)、吐気(4)、汗・寝汗(4)、肩こり(3)、体重減少(3)、手足のピリピリ感(2)、味覚低下(2)、背部痛(2)、腹痛(2)、眩暈(2)、憂うつ(1)、耳鳴(1)、筋肉痛(1)であった。
8 漢方治療を実施した37例に用いた処方
漢方治療未実施の2名を除いた37例に用いた漢方処方は51種類であり、以下の特徴が挙げられる。
半夏剤の応用の多さ:
半夏厚朴湯を用いた数は11例で一番多かった。半夏厚朴湯には去痰鎮咳の作用だけではなく、精神不安・胸部違和感・圧迫感・息苦しさなどにも効果があるためである。
消化器の症状にも対応する半夏剤の藿香正気散6例、呼吸器と消化器や不安をカバーできる竹茹温胆湯(6例)と加味温胆湯(4例)、空咳に効く麦門冬湯3例、四君子湯と喘四君子湯各1例、茯苓飲合半夏厚朴湯1例、半夏瀉心湯1例であった。
炎症に柴胡剤を用いること:
竹茹温胆湯6例、柴胡桂枝湯5例、柴朴湯3例、四逆散2例、柴蘇飲1例、柴葛解肌湯1例、滋陰至宝湯1例があった。
麻黄剤は悪寒・高熱・咳喘に欠かせない:
五虎湯または麻杏甘石湯が4例に使われ、葛根湯4例、大青竜湯と柴葛解肌湯、越婢加朮湯がそれぞれ1例であった。
虚証に対応する処方:
病態に応じて麻黄附子細辛湯、桂姜棗草黄辛附湯、真武湯、生脈散(人参・麦門冬・五味子)、亀鹿仙などが使われた。
関連リンク
●許志泉がまとめた「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)を理解する20条」はこちら
●「漢方を用いた新型コロナ肺炎治療の実例」はこちら
●オンライン漢方相談について詳しくはこちら「オンライン漢方相談|ご来店なしで漢方お届け」
⇒LINEでご相談ご希望の方は、下記QRコードを読み取り「漢方相談希望」のメッセージをお送りください
Category
Archive
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年11月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年10月
- 2016年6月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年6月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2014年7月
- 2014年3月
- 2013年12月
- 2013年8月
- 2012年12月
- 2012年10月