2020.06.25>子宮頸部異形成
子宮頸部異形成の概要、分類、西洋医学および漢方医学の治療
近年、子宮頸がん検診は広く普及しつつあります。細胞診(細胞が構成している組織を採取し、顕微鏡で調べる検査方法)で「子宮頸部異形成」と告げられ、経過観察しかできず不安を抱える方は少なくありません。
ここでは、子宮頸部異形成の概要、分類、西洋医学および漢方医学の治療について解説します。
1.子宮頸部異形成とは
子宮頸部異形成は、子宮頸がんの前段階(前がん病変)です。自覚症状がほとんど無いため、子宮頸がん検診(細胞診)を契機に発見されることが多いです。発症の原因の大半は、HPV(ヒトパピローマウイルス)の長期感染によるものです。
2.子宮頸部異形成の分類
子宮頸部異形成はその病変の程度によって、軽度異形成(CIN1)、中等度異形成(CIN2)、高度異形成・上皮内癌(CIN3)の3種類があります。
ベセスダシステムに基づき、以下の通り分類されます。
NILM(クラスI・II)→正常細胞のみ
ASC-US(クラスII・IIIa)→異形成とは言い切れないが細胞に変化がある
ASC-H(クラスIIIa・IIIb)→高度な細胞異型の可能性がある
LSIL(クラスIIIa)→HPV感染や軽度異形成と考えられる
HSIL(クラスIIIa・IIIb・IV)→中等度異形成・高度異形成・上皮内癌と考えられる
SCC(クラスIV・V)→明らかな扁平上皮癌と考えられる
3.西洋医学治療
軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合は、治療しなくても自然治癒することがあるため直ちに治療するのではなく経過観察をすることが多いです。CIN1やCIN2の場合、5年間で約半数の患者さんが自然治癒し、10年間経過で約7割が自然治癒となります。
高度異形成・上皮内が癌(CIN3)や、CIN2が長期に渡って遷延する場合では、子宮頸部円錐切除術と呼ばれる手術方法で治療します。
4.漢方医学治療
西洋医学では軽度異形成(CIN1)や中等度異形成(CIN2)の場合は経過観察することが多いです。この段階では免疫力の改善や、上皮細胞新陳代謝改善の漢方を使用すれば、高度異形成(CIN3)段階に進むリスクを軽減し、自然治癒時間を短くすることが出来ます。
高度異形成(CIN3)の場合は漢方治療も可能ですが、定期的に3ヶ月~半年ごとの細胞診が必要です。症状が進行している場合、早期に手術をうけた方が良いでしょう。
【子宮頸部異形成の漢方的な考え方】
ウイルス(HPV)は「邪気」と言い、「邪気」が体に入ると「湿熱」に変化、糜爛や出血などの症状が出ます。その「邪気」と戦うのは「正気」、いわゆる体の免疫力です。
免疫力が低下すると、「邪気」を駆逐する力が弱くなり、感染してしまいます。
感染された子宮頸部細胞が分裂する際に異常が生じ、その異常が重なった結果、子宮頸がんになってしまいます。
異常が生じた子宮頸部細胞は「瘀血」と考え、その「瘀血」を除去する治療が必要です。
【タイプ別漢方治療】
-「湿熱」タイプ
熱には清熱薬、湿には除湿薬を使います。
生薬:黄芩、黄柏をはじめ、竜胆、山梔子など清熱薬、朮、茯苓などを選択します。
代表的漢方:黄連解毒湯、竜胆瀉肝湯、茵陳五苓散などが挙げられます。
-「正気不足」タイプ
「正気」=免疫力であり、「正気不足」には補気薬を使います。
生薬:黄耆や人参をはじめ、地黄、当帰などを選択します。
漢方処方:十全大補湯、六君子湯、補中益気湯、柴苓湯、当帰芍薬散などが挙げられます。
-「瘀血」タイプ
「瘀血」を駆逐には、活血薬を使います。
生薬:田七人参をはじめ、紅花、牡丹皮、桃仁などを選択します。
漢方処方:桂枝茯苓丸、折衝飲、芎帰調血飲第一加減、通導散などが挙げられます。
上記以外にもタイプは様々で、また同じ方でもタイプが混在することもあります。
そのため、漢方治療に当たっては、ご自身で判断されず経験豊富な漢方専門家にご相談されることをおすすめします。
漢方の服用以外に、自然治癒力や免疫力向上のために、栄養バランスの良い食事、質の良い睡眠、規則正しい生活も大切です。不健康な食生活や生活リズムは、本来の自然治癒力を低下させ、病気の悪化や回復しにくい原因へとつながります。
富士堂漢方薬局 中国漢方医師 張冬
張先生の紹介・予約日・症例集>>「張先生の漢方治療日記」
子宮頸部異形成に関するその他記事>>
「症例【子宮頸部異形成(中等度)】漢方治療3か月でHSILからLSILに」
「症例【子宮頸部異形成】漢方2か月でCIN2がCIN1、CIN1が正常に」
「症例【子宮頸部異形成】HSIL(Ⅲa)2か月漢方でASC-US(Ⅲa)CIN1に」
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