2020.05.03所長・COVID-19記事
漢方を用いた新型コロナウイルス肺炎治療の実例
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るい続ける中、PCR検査が迅速に実施されないうえに早期投薬治療もなく、自宅療養中に重症化した例も珍しくはありません。
緊急事態宣言から3週間、未だ新規感染の増加や院内感染、先行きへの不安や万が一かかったらどうしようという恐怖から多くの方々が大変な思いをして過ごしています。
3月から、富士堂漢方薬局にも新型コロナウイルスの予防や治療関連のお問合せが急増しており、特に4月に入ってからは新型コロナウイルス感染症でご相談いただいた方を15例ほど治療しました(いずれもオンライン相談)。ほとんどが軽症例で一週間ほどで治りました。また、3例の中・重症例があり、こちらの治療にも携わらせていただきました。つきましてはこの内1つの重症例の治療経過を皆様に共有し、皆様にも予防・感染後の早期治療には漢方というチョイスがあることを是非心に留めていただければと思います。
◇関連リンク:許志泉がまとめた「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)を理解する20条」はこちら
40歳女性
4/1(発症1日目)
発熱しはじめる。
4/5(発症5日目)
発熱。病院受診で検査をうけ、コロナウイルス感染症ではなさそうだと言われる。解熱剤でいったん熱は下がったが再び高熱。水分を受け付けない。
4/6(発症6日目)
-入院-
4/7(発症7日目)
発熱、咳嗽、肺に影あり。
水分がとれるようになり、睡眠もとれるが、時に心臓部に締め付けられる苦しさと背中の痛み、胃のむかつき、呼吸のしづらさを感じる。
声を出しづらい、においを感じない。
-新型コロナウイルスPCR検査実施-
未投薬で様子見という判断になったそう。
4/8(発症8日目)
-PCR検査陽性が判明-
発熱、咳、背中の痛み、息苦しさ。胃が焼けるように熱く食事もとれない。4/7より悪化。
→ここで漢方治療を決意しオンラインでの相談を行う。
カウンセリングを行った結果:
・体温は37.5℃~38℃を行き来している
・時に寒気がし、倦怠感が強い
・身体や足が冷えたり熱くなったり忙しない
・汗がたくさんでたり、全く出なかったりする
・喉痛、細かくこみ上げる咳はあるが痰はでない
・胸あたりが熱く、息苦しくて呼吸しづらい、動くとさらにひどい
・咳をすると胸や背中あたりが痛むことがある
・時折、胸をギューと締め付けられ、普通に声をだして話すことができない(つまった感じ、出しづらく震えてしまう)
・少し話すと咳が続く
・鼻水はさほどなく、匂いを感じづらい(嗅覚低下)
・胃に不快感があり、焼けるようなヒリヒリやムカムカすることもある
・ゲップがずっと続き、みぞおちをすこしでも押されると痛く嫌で、ゲップがでる
・食欲はなく、食べると胃が熱くなり、熱も上がり始め一気にだるくなるため口にしているのはほとんど水やスープのみ
・のぼせると耳がやたら熱く、尿は出づらく排尿痛あり
・舌苔は一面真っ白
-漢方治療として下記の漢方薬をお出しすることに-
◎柴胡桂枝湯顆粒、半夏厚朴湯顆粒、麻黄附子細辛湯顆粒:1日4回(毎食後、寝る前/1回1包)
◎感應丸:1日2回 (朝夕食後/1回1丸)
4/9(発症9日目、漢方治療1日目)
夜の頭痛がひどい。
4/10(発症10日目、漢方治療2日目)
頭痛が少しやわらぎ、胃の不快感と寒気も少し軽減される。
漢方を飲んだ後、身体が熱くだるくなり体温があがるが、数時間すると37.5℃〜38℃、たまに37℃まで下がる。
顔が揺れたり手が震えたり自分で止められないことが新たに出現し、動悸も増えた。
夜間に呼吸がきつくなる。
「自分でもなにがなんだかわからない。あちこち痛く、両足も冷たくしびれて痛い。苦しくて意識が朦朧としており、呼吸困難になった時は人の声も遠ざかり聞こえなくなる、もうだめかもしれない。」(ご本人とのやりとりから)
4/11(発症11日目、漢方治療3日目)
熱があがり始めるとさらに呼吸がきつくなる。
呼吸困難の恐怖から漢方も飲めない。
4/12(発症12日目、漢方治療4日目)
一度呼吸困難に陥ったが、昨日から点滴をうっており少し眠れるようになり、今朝起きたら症状が少し良くなった。水分以外も少し口にできるようになったため、漢方も再開。
午後5時の時点で体温37.4℃。食欲は改善。昨日までは水分以外まったく口にできていなかったため、脱水症状もおこしていた模様。今は水分量も増えたが、まだ口の中はカラカラに乾き、匂いもわからない。
声を発したとき、動いたときに咳がでる。
だるさはまだあり、息苦しさや動悸、足の冷えはやわらいだ。
排便はなく、尿量は増えた。
背中やあばらあたりが少し痛む。
気持ちもだいぶ落ち着いてきた。
4/13(発症13日目、漢方治療5日目)
発熱がなくなる。
体温は34.8℃~35.4℃で寒く感じる。(平熱は36.6℃ぐらい)
匂いが少し感じられ、食事量も少し増えた。
だるさがあり大きく息を吸うことができず咳がでる。
昨晩から右眼が痙攣し、右頬にずっと痺れ感。
お昼頃から輸液点滴を中止
午後3時の体温35.3℃。
4/14(発症14日目、漢方治療6日目)
体温35.3℃。
食事は1時間程度かけゆっくりと完食できた。
起き上がっていられる時間も長くなった。咳は今のところほとんどでないが、呼吸はしづらい。
4/17(発症17日目、漢方治療9日目)
少しの消化不良、ゲップ、歯茎の痛み、舌の違和感、少しのだるさあり。
寝つきづらい、イライラする、のどがイガイガする。
食欲はあるので完食できる。
→ここで回復期の漢方を出すことに
4/20(発症20日目、漢方治療12日目)
回復期の漢方薬として
◎加味温胆湯顆粒、麦門冬湯顆粒、麦味参顆粒(1日3回/1回1包)
で治療開始
だいぶ元気になった。
-ホテルへ移動、陰性が確認されるまで滞在-
4/25(発症25日目、漢方治療17日目)
-22日、23日の検査がともに陰性、帰宅-
回復期の漢方を飲みつつ自宅で休む。
以上がこの例の経過となります。
この方は平熱が低く体力が弱いため、柴胡桂枝湯、半夏厚朴湯、麻黄附子細辛湯を組み合わせ、また、呼吸困難や心臓部の圧迫感、意識朦朧を改善すべく感應丸も併用しました。
また、肺炎期の後は倦怠感や体力のなさが目立ち、気道の修復促進も兼ね、回復期用の漢方に切り替えたことでより速い回復に繋がったと思います。
これは臨床データでも示されていますが、早期の漢方治療は免疫応答を円滑にし、抗体のよりよい産生や過剰な炎症連鎖を軽減させます。免疫促進と過剰炎症抑制を併せ持つことは、漢方治療の大きなメリットと言えるでしょう。
まだ新型コロナウイルスに対する特効薬がない状況下、早期の漢方治療が重症化リスクを抑え、回復に向けての力となり、さらには弱った体力をサポートするなどアフターケアにも十分に役立つということをもっと広く認識していただければと思います。
これをうけ、漢方製剤を使用した新型コロナウイルス感染症を初期、肺炎期、回復期の三段階に分けて治療する「三段階治療案」を提唱いたします。実際に、先程の例の方は初期治療の機会こそ逃しましたが、肺炎期に入って以降の治療薬として漢方製剤(2日間の輸液支持療法を併用)で3日目には平熱になり、肺炎を抑え込むことに成功しております。
緊急事態宣言から3週間、未だ新規感染の増加や院内感染、先行きへの不安や万が一かかったらどうしようという恐怖から多くの方々が大変な思いをして過ごしています。
3月から、富士堂漢方薬局にも新型コロナウイルスの予防や治療関連のお問合せが急増しており、特に4月に入ってからは新型コロナウイルス感染症でご相談いただいた方を15例ほど治療しました(いずれもオンライン相談)。ほとんどが軽症例で一週間ほどで治りました。また、3例の中・重症例があり、こちらの治療にも携わらせていただきました。つきましてはこの内1つの重症例の治療経過を皆様に共有し、皆様にも予防・感染後の早期治療には漢方というチョイスがあることを是非心に留めていただければと思います。
◇関連リンク:許志泉がまとめた「COVID-19(新型コロナウイルス感染症)を理解する20条」はこちら
40歳女性
4/1(発症1日目)
発熱しはじめる。
4/5(発症5日目)
発熱。病院受診で検査をうけ、コロナウイルス感染症ではなさそうだと言われる。解熱剤でいったん熱は下がったが再び高熱。水分を受け付けない。
4/6(発症6日目)
-入院-
4/7(発症7日目)
発熱、咳嗽、肺に影あり。
水分がとれるようになり、睡眠もとれるが、時に心臓部に締め付けられる苦しさと背中の痛み、胃のむかつき、呼吸のしづらさを感じる。
声を出しづらい、においを感じない。
-新型コロナウイルスPCR検査実施-
未投薬で様子見という判断になったそう。
4/8(発症8日目)
-PCR検査陽性が判明-
発熱、咳、背中の痛み、息苦しさ。胃が焼けるように熱く食事もとれない。4/7より悪化。
→ここで漢方治療を決意しオンラインでの相談を行う。
カウンセリングを行った結果:
・体温は37.5℃~38℃を行き来している
・時に寒気がし、倦怠感が強い
・身体や足が冷えたり熱くなったり忙しない
・汗がたくさんでたり、全く出なかったりする
・喉痛、細かくこみ上げる咳はあるが痰はでない
・胸あたりが熱く、息苦しくて呼吸しづらい、動くとさらにひどい
・咳をすると胸や背中あたりが痛むことがある
・時折、胸をギューと締め付けられ、普通に声をだして話すことができない(つまった感じ、出しづらく震えてしまう)
・少し話すと咳が続く
・鼻水はさほどなく、匂いを感じづらい(嗅覚低下)
・胃に不快感があり、焼けるようなヒリヒリやムカムカすることもある
・ゲップがずっと続き、みぞおちをすこしでも押されると痛く嫌で、ゲップがでる
・食欲はなく、食べると胃が熱くなり、熱も上がり始め一気にだるくなるため口にしているのはほとんど水やスープのみ
・のぼせると耳がやたら熱く、尿は出づらく排尿痛あり
・舌苔は一面真っ白
-漢方治療として下記の漢方薬をお出しすることに-
◎柴胡桂枝湯顆粒、半夏厚朴湯顆粒、麻黄附子細辛湯顆粒:1日4回(毎食後、寝る前/1回1包)
◎感應丸:1日2回 (朝夕食後/1回1丸)
4/9(発症9日目、漢方治療1日目)
夜の頭痛がひどい。
4/10(発症10日目、漢方治療2日目)
頭痛が少しやわらぎ、胃の不快感と寒気も少し軽減される。
漢方を飲んだ後、身体が熱くだるくなり体温があがるが、数時間すると37.5℃〜38℃、たまに37℃まで下がる。
顔が揺れたり手が震えたり自分で止められないことが新たに出現し、動悸も増えた。
夜間に呼吸がきつくなる。
「自分でもなにがなんだかわからない。あちこち痛く、両足も冷たくしびれて痛い。苦しくて意識が朦朧としており、呼吸困難になった時は人の声も遠ざかり聞こえなくなる、もうだめかもしれない。」(ご本人とのやりとりから)
4/11(発症11日目、漢方治療3日目)
熱があがり始めるとさらに呼吸がきつくなる。
呼吸困難の恐怖から漢方も飲めない。
4/12(発症12日目、漢方治療4日目)
一度呼吸困難に陥ったが、昨日から点滴をうっており少し眠れるようになり、今朝起きたら症状が少し良くなった。水分以外も少し口にできるようになったため、漢方も再開。
午後5時の時点で体温37.4℃。食欲は改善。昨日までは水分以外まったく口にできていなかったため、脱水症状もおこしていた模様。今は水分量も増えたが、まだ口の中はカラカラに乾き、匂いもわからない。
声を発したとき、動いたときに咳がでる。
だるさはまだあり、息苦しさや動悸、足の冷えはやわらいだ。
排便はなく、尿量は増えた。
背中やあばらあたりが少し痛む。
気持ちもだいぶ落ち着いてきた。
4/13(発症13日目、漢方治療5日目)
発熱がなくなる。
体温は34.8℃~35.4℃で寒く感じる。(平熱は36.6℃ぐらい)
匂いが少し感じられ、食事量も少し増えた。
だるさがあり大きく息を吸うことができず咳がでる。
昨晩から右眼が痙攣し、右頬にずっと痺れ感。
お昼頃から輸液点滴を中止
午後3時の体温35.3℃。
4/14(発症14日目、漢方治療6日目)
体温35.3℃。
食事は1時間程度かけゆっくりと完食できた。
起き上がっていられる時間も長くなった。咳は今のところほとんどでないが、呼吸はしづらい。
4/17(発症17日目、漢方治療9日目)
少しの消化不良、ゲップ、歯茎の痛み、舌の違和感、少しのだるさあり。
寝つきづらい、イライラする、のどがイガイガする。
食欲はあるので完食できる。
→ここで回復期の漢方を出すことに
4/20(発症20日目、漢方治療12日目)
回復期の漢方薬として
◎加味温胆湯顆粒、麦門冬湯顆粒、麦味参顆粒(1日3回/1回1包)
で治療開始
だいぶ元気になった。
-ホテルへ移動、陰性が確認されるまで滞在-
4/25(発症25日目、漢方治療17日目)
-22日、23日の検査がともに陰性、帰宅-
回復期の漢方を飲みつつ自宅で休む。
以上がこの例の経過となります。
この方は平熱が低く体力が弱いため、柴胡桂枝湯、半夏厚朴湯、麻黄附子細辛湯を組み合わせ、また、呼吸困難や心臓部の圧迫感、意識朦朧を改善すべく感應丸も併用しました。
また、肺炎期の後は倦怠感や体力のなさが目立ち、気道の修復促進も兼ね、回復期用の漢方に切り替えたことでより速い回復に繋がったと思います。
これは臨床データでも示されていますが、早期の漢方治療は免疫応答を円滑にし、抗体のよりよい産生や過剰な炎症連鎖を軽減させます。免疫促進と過剰炎症抑制を併せ持つことは、漢方治療の大きなメリットと言えるでしょう。
まだ新型コロナウイルスに対する特効薬がない状況下、早期の漢方治療が重症化リスクを抑え、回復に向けての力となり、さらには弱った体力をサポートするなどアフターケアにも十分に役立つということをもっと広く認識していただければと思います。
これをうけ、漢方製剤を使用した新型コロナウイルス感染症を初期、肺炎期、回復期の三段階に分けて治療する「三段階治療案」を提唱いたします。実際に、先程の例の方は初期治療の機会こそ逃しましたが、肺炎期に入って以降の治療薬として漢方製剤(2日間の輸液支持療法を併用)で3日目には平熱になり、肺炎を抑え込むことに成功しております。
富士堂漢方薬局所長・医学博士 許志泉
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