2020.02.09皮膚科:アトピー・皮膚炎・蕁麻疹・乾癬など
アトピー性皮膚炎の症状特徴、発症原因、メカニズムについて
アトピー性皮膚炎において、皮膚の現在の状態を適確に把握することはもちろん、漢方薬の服用だけでなく食養生、スキンケアを含めた生活習慣改善を取り入れることが重要です。食養生を取り入れるだけで軽快する例もあり、また生活習慣改善を含んだ漢方治療を併用することで、より早期に寛解状態に近づけることが可能になるでしょう。ここでは、アトピー性皮膚炎について、詳しくみていきましょう。
1.アトピー性皮膚炎とは
刺激に対する皮膚の免疫反応の異常で、慢性の炎症性皮膚疾患です。
痒みのある湿疹で、良くなったり悪くなったりを繰り返しているものです。
特にアトピー素因(喘息や鼻炎などのアレルギー反応を起こしやすい方、またはアレルギー反応を起こしやすいご家族)をお持ちの方に、アトピー性皮膚炎は起こりやすいと言われています。
2.症状
痒み、炎症を伴う湿疹を主体とします。
またアトピー素因を持つことから、アトピー性皮膚炎の患者は気管支喘息、アレルギー性鼻炎、結膜炎等の疾患を合併しやすいと考えられています。
3.アトピー性皮膚炎に関わると考えられる細胞
〇T細胞
急性期:アレルギー反応を起こすいろいろな物質を作り出します。
慢性期:急性期とは別のT細胞で、アレルギー反応を起こす物質を作ります。
〇抗原提示細胞
アレルギーの原因となる物質を見つけて捕まえ、それを他の細胞に知らせます。
〇角化細胞
1.本来は皮膚の表皮にある細胞で、角質層を形成します。
2.引っ掻いた時などに、炎症に関わる物質やアレルギー反応に関わる細胞を刺激する物質を作り出します。
3.普段は抗菌作用を示すタンパク質を作り出していますが、アトピー発症時はそれが低下し、感染を起こしやすくなります。
〇肥満細胞
アレルギー反応を起こすタンパク質(抗体)と結合し、アレルギーの原因物質と反応。アレルギー反応を起こす物質を作り出します。
〇好酸球
急性期の炎症を起こしている場所に現れ、アレルギー反応を起こす物質を作り、それによって慢性期に現れる細胞を導きます。
〇その他:好中球、単球など
4.アトピー性皮膚炎発症のメカニズム
(1)遺伝的な要因
アレルギー反応を起こすタンパク質(抗体)を作りすぎてしまいます。
(2)皮膚バリア機能の異常
1)皮膚のバリア機能に関わるタンパク質を作り出す遺伝子に異常が起こります。
2)アレルギー反応を起こすタンパク質が、皮膚のバリア機能に関わるタンパク質を作るのを抑えてしまいます。
3)セラミド(肌のうるおい成分)が減少します。
これらの原因により、肌の乾燥が生じ皮膚の表面は荒くなり、いろいろな刺激に過敏となります。感染が起こりやすくなり痒みに対する閾値が低下します。ちなみに急性期では滲出(ジュクジュク)傾向、慢性期になると苔癬化(カサカサ、ゴツゴツ)傾向となりがちです。
(3)免疫学的異常(アレルギー・獲得免疫の異常)
1)アレルギーの原因となる物質が体内に侵入し、免疫に関わる細胞が刺激され、その結果アレルギー反応を起こすタンパク質(抗体)を作り出すようになります。
2)アレルギーの原因となる物質が再び侵入すると、抗体が素早くくっつき、炎症反応を起こす細胞に知らせます。
3)炎症反応を起こす細胞が多くの炎症物質を作り出し、その結果炎症が起こります。
(4)免疫学的異常(自然免疫の異常)
1)皮膚の細胞や体内の免疫に関わる細胞が、細菌やウイルスに対して反応しにくくなります。つまり菌やウイルスをやっつける物質をあまり作らなくなります。その結果、感染を起こしやすくなります。
2)皮膚表面にいる菌が毒素を産生し、アレルギー反応に関わる細胞を刺激、あるいは皮膚の細胞にアレルギー反応を起こす物質をたくさん作らせ、皮膚炎を悪化させます。
(5)知覚神経異常
知覚神経の異常により、痒みに過敏な反応を起こすようになります。
(6)痒みに関わるタンパク質の異常
1)痒みなどの刺激を抑えるタンパク質が低下します。
2)温感によって痒みを起こすタンパク質が強く発現します。
5.症状を悪化させる要因
汗、乾燥。ストレス。食物。ダニ・ハウスダスト。細菌・真菌。花粉。外用薬、スキンケア製品、化粧品etc.
参考資料:
アトピー性皮膚炎診療ガイドライン 2016年版
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/guideline/atopicdermatitis_guideline.pdf
アレルギー・免疫 vol.23,No3,2016 医薬ジャーナル
病気がみえる vol.6 免疫・膠原病・感染症 第1版 メディックメディア(2016)
免疫・アレルギー疾患 イラストレイテッド 田中良哉編 羊土社(2013)
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