2018.09.26>不眠症
不眠症(睡眠障害)の漢方薬治療
不眠症に対する中医学的基本病機
主に以下のものが挙げられます。
心脾両虚:脾の運化機能失調により、気血の生成が少なくなる。心に届く血が不足すると「心神」は養分を失い、不眠が生じる。
心陰虚:持続する情志失調のため心陰が消耗して、心陰による滋養を得られないために心陽が旺盛になり、心神が乱されることによって生じる。
心腎不交:心は上焦にあり火を主り、腎は下焦にあり水を主っている。そして、心の陽が下降して腎水の氾濫を制し、腎陰が上昇できないため、心火が亢盛となる「陰虚火旺」によって起こる。
血虚肝旺:肝血虚によって起こる不眠の病気は2つある。①肝血の中に舎っている「魂」が肝血虚によって留まるべき場所を失い外へ出て行ってしまう。②肝陽の上亢(不眠の直接原因ではなく、肝(母)の熱病が心(子)に伝わって心の蔵している「神」を煩わす)
痰熱内擾:痰熱は湿より発生する。湿の密度が濃くなったものが痰。痰の停滞が長びくと熱性をもち、痰と熱は互いに結して痰熱となる。痰熱が熱の性質によって上昇し、心神を犯すと不眠が起こる。
胃気不和:胃気の不足、あるいは暴飲暴食などで胃を損傷したため、水穀を受納し腐熟する機能が失調し、胃椓部」に食滞が起こる。食物が長く胃に停滞して胃気の下降を妨げ、胃気が逆上して、心神を乱すため不眠が起こる。
不眠症漢方薬治療解説
不眠症漢方治療によく用いる漢方薬方は下記の通りです。ただし、体質および病態により、治療漢方薬方が下記のものに限らないでしょう。
【帰脾湯、加味帰脾湯】
心と脾の虚で、貧血・心悸亢進・健忘・不眠症・諸出血などを主目標とする。
患者は顔色蒼白、脈腹ともに軟弱で元気衰え、多かれ少なかれ神経症状を伴っている。軽度うつ状態で、熟眠障害を訴える患者に対して用いられる。
帰脾湯は胸脇苦満のみとめられないものに、加味帰脾湯は胸脇苦満のみとめられるものにそれぞれ用いる。
【酸棗仁湯】
心身ともに疲労しているにもかかわらず、夜間に眼が冴えて眠れないものに対して用いる。
分2~3で単独で用いることもあるが、酸棗仁湯の主薬である「酸棗仁」には、鎮静・催眠作用があるため、ほかの方剤と組み合わせて、就寝前に用いることも多い。
【黄連阿膠湯】
冷え症でのぼせ気味で不眠傾向のあるもの。
【黄連解毒湯】【黄連解毒湯合五苓散】
実証~中間証での、のぼせ、興奮、いらいらを伴う場合に用いる。不眠は、主として入眠困難を訴える患者に対してとくに有効である。実証で便秘を伴う患者には、三黄瀉心湯を用いる。
【三黄瀉心湯】
比較的体力があり、のぼせ気味で、顔面紅潮し、精神不安で、便秘傾向のある者の、高血圧随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重、不眠、不安)
【抑肝散】【抑肝散加陳皮半夏】
肝気が亢ぶって神経過敏となり、起こりやすく、いらいらして性急となり、興奮して眠れないという神経の興奮を鎮静させる働きがある。
神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症
【大柴胡湯】
筋肉かたくしまり、ガッチリした壮健なもので、季肋下部に抵抗、圧痛感があり、便秘気味で、肩がこり、舌に白色または黄色のこけがあるもので、嘔吐や吐き気、頭重、喘息、耳鳴り、不眠などを伴うもの。
【加味逍遙散】
本来は、中間証~虚証で、虚弱体質でいらいらなどの精神症状の強い女性や、不定愁訴の多い、いわゆる更年期障害患者に用いる方剤であるが、男性や高齢者に用いてもよい。
【柴胡桂枝乾姜湯】【柴胡桂枝湯】
胸脇が微かに実し、表に熱があって裏に寒があり、水分不足をきたして乾燥し、気の上衝がある。往来寒熱、身体虚弱、貧血性で脈腹ともに力がない。柴胡証。
神経質で、気を使う仕事をすると数日間疲労感がとれない。動悸、上半身の発汗や盗汗があり、入眠障害もみられる。
【温経湯】
手足がほてり、唇がかわくものの不眠
【桂枝加竜骨牡蠣湯】
体質の虚弱な人で疲れやすく、興奮しやすい者の次の諸症:神経症、不眠症、小児夜泣き、小児夜尿症、眼精疲労
【柴胡加竜骨牡蠣湯】
体質的には実証に属し、胸脇苦満、心下痞があり、臍辺の動悸を認めることが多く、上衝、心悸亢進、不眠、煩悶などの症状があり、驚きやすく、あるいはイライラして怒りやすく、甚だしいときは狂乱、痙攣などの神経症状を伴う。小便不利、便秘の傾向がある。
【血府逐瘀湯】(柴胡、芍薬、枳殻、甘草、桃仁、紅花、当帰、川芎、地黄、桔梗、牛膝)
柴胡体質で、瘀血があり、不眠、頭痛、腹痛、発熱などの病症がある。
【温胆湯】【竹茹温胆湯】【十味温胆湯】
やや虚弱体質のものか、病後の疲れがまだとれないというもの、あるいは胃下垂症などに併発している不眠症、神経症などを目標とする。体もやや虚状で、腹部緊張が少なく、心下痞を訴え、胃内停水を認めることが多い。
【五苓散】【猪苓湯】
胃内その他の体腔管外の水を血中に送り、血液は潤って口渇は止み、血液が潤うために自然に尿利がつき、煩躁も止んで眠れるようになる。
【半夏瀉心湯】
心下痞硬、悪心、嘔吐、食欲不振、胃内停水、腹中雷鳴、下痢を伴う、不眠、あるいはノイローゼ
【甘草瀉心湯】
不眠、心下痞鞕、悪心、下痢
老化にともなう早朝覚醒
腰や膝が弱く、足のほてりまたは冷えがある、排尿困難や頻尿がみられる。高齢の方、体力の弱った方にみられます。
老化を司る「腎」を補う漢方処方です。
「睡眠」に関する漢方治療は上記のように体質、症状で一人一人異なります。お悩みの方はぜひ一度、ご相談ください。
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