2018.09.25>風邪・インフルエンザ
風邪症候群の漢方治療
概念
風邪とは、呼吸器系の上気道(鼻腔や咽頭等)の炎症性の症状の事。またその状態を表す総称である。「感冒」、「風邪症候群」と呼ばれる。
症状は、「風邪症候群」と表現されるように、微熱、倦怠感、頭痛、発熱、悪寒、鼻汁の過分泌、鼻づまりなど局部症状(カタル症状)、咽頭痛、咳嗽、嗄声、食欲不振、下痢、嘔吐など。
通常鼻汁は風邪の初期はさらさらとした水様で、徐々に粘々とした膿性に変化する。だが全身症状がことに強く、時に重症化する。俗称として、消化管のウイルス感染によって嘔吐、下痢、腹痛などの腹部症状と上記全身症状を来した状態を、「感冒性胃腸炎」もしくは胃腸かぜと呼ぶこともある。
原因説明: 原因微生物の80~90%がウイルスです。まれに一般細菌、マイコプラズマ、クラミジアなどによる場合もあります。
発症状況や頻度など: 内科領域の日常臨床で最多。一年中に見られます、季節の変り目や冬期間に更に多い。
西洋医学治療概要:
① 抗ウイルス剤・対症療法(解熱・鎮痛製剤・非ステロイド性抗炎症薬)、嗽薬、鎮咳去痰薬、抗ヒスタミン薬など
② 細菌感染の疑いが強い例には抗生剤を投与する)
中医学的な病名、基本病機: 中医学内科学には感冒や傷風などいいます。風邪、夏には暑邪も犯されて、外感熱病です。傷寒論には太陽病(桂・麻)・少陽病(柴胡)・少陰病(麻附辛)編に一部を記載されています。
また温病の一部、気分、衛分の病気にも記載されています。
基本病機は外因と内因二つに分かれています。一つは自然界の邪気、特に風邪と暑邪に犯されます。もう一つは抵抗力が弱いや機能失調(栄衛不和)によりの内因である。
適応薬方解説
【麻黄湯】
悪寒、発熱、頭痛、頭痛、喘咳、関節痛、無汗、脈浮緊などを目標にする。平素から丈夫で体力充実した人の熱性疾患の初期。一般に、腰痛、四肢関節痛、筋肉痛などの身体痛を伴い、時に咳嗽及び喘鳴が見られる。
配伍:麻黄・桂枝・杏仁・甘草
【葛根湯】
発熱、悪寒があり、項背部がこわばるもの。自汗はない。比較的に体力充実したもののカゼの初期に用いられる。
麻黄湯ほど関節痛、筋肉痛が著明しないで、項背部のこわばりがあること。
配伍:葛根・麻黄・桂皮・甘草、芍薬・生姜・大棗
【葛根湯加桔梗石膏】
葛根湯の使用目標に、咽頭痛、咽頭発赤などを伴った場合に用いる。
【葛根湯か川芎辛夷】
鼻閉、鼻漏、後鼻漏に用いる。
【葛根黄芩黄連湯】
下痢(裏急後重)が伴う胃腸型感冒。
【藿香正気散】
夏風邪、下痢や嘔吐が伴う、全身倦怠感、食欲不振、夏バテ。
配伍:白朮・茯苓・陳皮・白芷・藿香・大棗・甘草・半夏・厚朴・桔梗・蘇葉・大腹皮・生姜
【桂枝湯】
比較的に身体の虚弱なもので、自汗があり、脈は浮弱で、発熱、悪寒、頭痛、身体痛があるものに用いる
麻黄湯や葛根湯証より体力が低下し、腹力、脈とも弱く。自汗を伴う。
配伍:桂枝・芍薬・大棗・生姜・甘草
【桂枝加葛根湯】
桂枝湯症で、項背部のこわばりが強い。
【桂枝加厚朴杏仁湯】
桂枝湯症で、咳や咳喘息の人、痰がある。
配伍:桂枝湯+厚朴・杏仁
【升麻葛根湯】
感冒の初期で、頭痛、発熱があり、熱感の強いかぜに用いる。またインフルエンザなどで熱が激しく、目や鼻の充血がある場合に用いる。麻疹・風疹や蕁麻疹にも使います。
配伍:升麻・葛根・芍薬・甘草・生姜
【川芎茶調散】
頭痛を伴う感冒の初期に用いる。
配伍:香附子・川芎・羗活・荊芥・薄荷・白芷・防風・甘草・茶葉
【香蘇散】
平素より胃腸虚弱で、憂うつ傾向のある方、また不眠や気分が沈みがちなものの感冒の初期に用いる。
配伍:香附子・蘇葉・陳皮・甘草・生姜
【麻黄附子細辛湯】
虚弱者や高齢者、元から虚弱冷え性体質の方、寒気が強くて熱感がほとんどなく、顔面蒼白、全身倦怠感が強く無気力なものに用いる。
配伍:麻黄・附子・細辛
【真武湯】
老人や体力虚弱なもので、風邪で全身倦怠感、四肢の冷感(裏急後重なし)、下痢・腹痛などを訴える場合に用いる。めまい・身体動揺感(ふらふら)・心悸亢進もみることもある。
配伍: 茯苓・芍薬・蒼朮・生姜・附子
麻黄附子細辛湯は下痢はない
【桔梗湯】【甘草湯】
咽頭部の疼痛、発赤、腫脹に用いる。
配伍: 甘草・桔梗/甘草
【小青竜湯】
水様性の鼻水、鼻閉、くしゃみを伴い、泡沫様の痰が出るものを目標をする。
配伍: 半夏・甘草・桂皮・五味子・細辛・芍薬・麻黄・乾姜
【麦門冬湯】
痰が切れにくく、痙攣性の咳嗽(空咳)が続く場合に用いる。
配伍:麦門冬・半夏・大棗・甘草・人参・粳米
【銀翹散】
インフルエンザのような熱っぽい症状が強い感冒や、のどの痛みや口渇で、頭痛などがある場合に用いる。
配伍:金銀花・連翹・薄荷・桔梗・甘草・淡竹葉・荊芥・淡豆し・牛蒡子・羚羊角
【辛夷清肺湯】
鼻詰まりの改善を目的とする場合や副鼻腔炎を併発している場合
配伍:石膏・麦門冬・黄芩・山梔子・知母・升麻・百合・辛夷・枇杷葉
【小柴胡湯】
感冒やや長引いている時に、口の粘り、食欲不振、疲れやすさ、寒熱往来に対してよく用いられる
配伍:柴胡・半夏・黄芩・大棗・人参・甘草・生姜
【竹茹温胆湯】
比較的体力の低下した人の長引いた呼吸器症状が対象である、気分がさっぱりせず、咳や痰が多く、不安・不眠といった精神症状を訴える者。
配伍:半夏・柴胡・麦門冬・茯苓・桔梗・枳実・香附子・陳皮・黄連・甘草・生姜・人参・竹茹
使用注意
副作用・禁忌:麻黄剤は重症高血圧、虚血性心疾患の患者などには禁忌である。また時に尿閉の患者を起すことがあるので、前立腺肥大症の患者でも要注意。
富士堂漢方薬局 張冬
Category
Archive
- 2024年11月
- 2024年10月
- 2024年9月
- 2024年8月
- 2024年7月
- 2024年6月
- 2024年5月
- 2024年4月
- 2024年3月
- 2024年2月
- 2024年1月
- 2023年12月
- 2023年11月
- 2023年10月
- 2023年9月
- 2023年8月
- 2023年7月
- 2023年6月
- 2023年5月
- 2023年4月
- 2023年3月
- 2023年2月
- 2023年1月
- 2022年12月
- 2022年11月
- 2022年10月
- 2022年9月
- 2022年8月
- 2022年7月
- 2022年6月
- 2022年5月
- 2022年4月
- 2022年3月
- 2022年2月
- 2022年1月
- 2021年12月
- 2021年11月
- 2021年10月
- 2021年9月
- 2021年8月
- 2021年7月
- 2021年6月
- 2021年5月
- 2021年4月
- 2021年3月
- 2021年2月
- 2020年11月
- 2020年10月
- 2020年9月
- 2020年8月
- 2020年7月
- 2020年6月
- 2020年5月
- 2020年4月
- 2020年3月
- 2020年2月
- 2020年1月
- 2019年12月
- 2019年11月
- 2019年10月
- 2019年9月
- 2019年8月
- 2019年7月
- 2019年6月
- 2019年5月
- 2019年4月
- 2019年3月
- 2019年2月
- 2019年1月
- 2018年12月
- 2018年11月
- 2018年10月
- 2018年9月
- 2018年8月
- 2018年7月
- 2018年6月
- 2018年5月
- 2018年3月
- 2018年2月
- 2018年1月
- 2017年11月
- 2017年6月
- 2017年5月
- 2017年4月
- 2017年3月
- 2017年2月
- 2017年1月
- 2016年10月
- 2016年6月
- 2016年4月
- 2016年3月
- 2016年2月
- 2016年1月
- 2015年12月
- 2015年11月
- 2015年10月
- 2015年6月
- 2015年3月
- 2015年2月
- 2014年7月
- 2014年3月
- 2013年12月
- 2013年8月
- 2012年12月
- 2012年10月