2018.09.25>高血圧
高血圧を知ろう
高血圧は特に日本人に多い疾患で、2000年厚生労働省第5次循環器疾患基礎調査によると成人男性の51.7%、成人女性の39.6%もの人々が高血圧です。高血圧は死亡率が癌に続く上位の疾患である脳卒中や心筋梗塞を引き起こす重要な原因になっています。高血圧とはどのような疾患なのでしょうか?
血圧は心臓から送り出される血液の量と、血液が流れる時に生じる末梢動脈の抵抗により規定されています。最高血圧とは心臓が収縮している時の血液が血管にかける圧力、最低血圧は心臓が拡張して緩んでいる時の血液が血管にかける圧力です。
通常成人の最高血圧は140mmHg未満、最低血圧は90mmHg未満に調節されています。最高血圧と最低血圧のどちらか一方でもこの数値を持続して超えた場合、高血圧となります。血圧は運動や緊張などにより上昇しますがこの時に基準値を超えても高血圧とはいいません。高血圧かどうかは定期的に血圧を測り平均値を参考にする必要があります。生活の場で2週間ほど朝・夜を含め、数回測定し記録してみましょう。詳しい血圧値の分類は以下のようになっています。
高血圧は「沈黙の殺人者(silent killer)」と呼ばれます。
なぜそう呼ばれるのでしょうか?
血圧は急に上昇すると意識障害や頭痛など不快な症状が表れますが慢性的に高血圧状態が続いている場合にはほとんど症状が表れません。高血圧自体に自覚できる症状がないのです。そのまま放置、進行すると合併症を引き起こし、ある日突然命にかかわる状態に陥ってしまう可能性が・・・。 高血圧は命の危機を招く恐れがあるのです。
高血圧が進むと心臓は高い血圧に打ち勝って血液を身体の隅々にまで送らなくてはならない為大きな力が必要となり心筋は肥厚します。
この心肥大が進むと心臓のポンプとしての力が弱ってしまい血液を全身に送ることが難しくなり心不全となります。 一方圧負荷は動脈にも加わり、血管が厚くなっていきます。
また、高い圧力により血管の内側が傷つき、そこに血液中の諸成分や脂質がしみこんでいきます。血管が硬く、血管の内径が細くなり動脈硬化病変を形成してしまいます。
そして血行の力学的抵抗を受けやすい際動脈にその病変が進み、臓器の機能障害をもたらします。 特に脳動脈では細い動脈の壊死にもとづく出血を生じます。
また腎臓では糸球体、輸入動脈を中心とした硬化病変により腎臓が萎縮、硬化して機能不全に陥るなどの重大な合併症を生じます。 冠動脈の硬化が生じると血流が悪くなり、そこに血のかたまりが出来やすくなります。
結果心筋に充分に血液が行き届かなく虚血性心臓病を引き起こす可能性があります。
高血圧といっても様々な種類があります。 高血圧は原因不明の本態性高血圧症と原因となる病気がはっきりしている二次性高血圧症とに分類されます。 高血圧と診断されている方の90~95%は原因不明の本態性高血圧です。原因不明とはいっても様々な要素が複合して高血圧になっていることは明らかになっています。
本態性高血圧をまねく要因は遺伝・加齢・ストレス・過労・寒冷・アルコール・塩分・脂肪食・タバコなどがあげられます。
一方、二次性高血圧は、腎疾患、内分泌疾患、動脈疾患、急性ストレス反応、医原性、神経疾患、血液疾患などによるものであり、その原因となっている病気を治せば血圧も正常にもどる可能性が高いです。
女性では妊娠中に高血圧症候群に陥る可能性があります。
※二次性高血圧をきたす疾患例
・腎疾患:糸球体腎炎、腎盂腎炎、痛風腎、腎動脈硬化症、線維筋性異形成など
・内分泌疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など
・ 動脈疾患:大動脈縮窄症、大動脈解離など
・急性ストレス反応:心因性、低血糖、熱傷など
・ 医原性:経口避妊薬、エストロゲン補充療法、副腎皮質ステロイド、漢方薬(甘草)、コカイン、尿路結石砕石術など
・神経疾患:脳炎、脳腫瘍、睡眠時無呼吸症候群など
・血液疾患:真性多血症
治療の目的は心血管系疾患発症率や総死亡率を減少させることにあり、他の危険因子の治療も含めて進めていく必要があります。降圧治療の目標は、血圧を正常あるいは至適なレベル(表1参照)に戻すことにあります。治療は次のように進めていきます。
血圧値を正しく評価することが重要です。1回の外来随時血圧測定だけでなく2週間ほど家庭でも朝夕含め数回測定して、それらの数値と外来時の数値を比べながら判断します。
本態性高血圧の発症は遺伝子と子供の頃からの生活習慣と密接な関係があります。治療は生活習慣の是正からはじまります。
禁煙:喫煙は精神的ストレスの解消ですが、肉体的には血液を濁化させ毛細血管に抵抗を引起し、血圧を上昇させます
肥満があれば適性体重まで減量:減量は血圧低下だけでなくインスリン抵抗性糖尿病、高脂血症などの合併する危険因子に対しても有益な効果があります
睡眠不足の是正:ストレスは高血圧と直接関係あります。良質な睡眠はストレスの解消につながります
減塩(1日6g以下):食塩及びナトリウム摂取の減量はもちろんのことカリウム摂取が不足しないよう留意する
野菜や果物を取り入れた食事(但し腎機能障害が進行している場合は高カリウム血症をひきおこしてしまうので注意)
アルコール制限(アルコール換算で20g以下):ビールなら中瓶1本、日本酒なら1.5合など
緩やかな有酸素運動を行う:早歩きや水泳など
お薬の服用なしで3ヶ月試みても140/90mmHgのラインにまで血圧が下がらない時にお薬の服用がはじまります。
ただし血圧値および心血管系の危険因子、標的臓器障害、糖尿病、循環器合併症の有無などにより、高血圧以外の心血管病のリスクがどのくらいあるかを評価して低リスク群、中等リスク群、高リスク群ならびに超高リスク群にクループ分けします。3つ以上の危険因子をもつ場合、糖尿病・慢性腎臓病・標的臓器障害ないし循環器関連合併症がある場合は高リスク群ならびに超高リスク群とされ、血圧値の反復測定での確認後すぐに薬物療法を開始する必要があります。
① 単一のお薬を少量から始め1回服用で効果の持続するお薬が勧められます
② 個々のお薬には積極的な適応と禁忌があります しばしば2種類以上のお薬の併用も行われます
※投与されるお薬の種類
・利尿薬:血液量の減少させる
・β遮断薬:心臓の収縮を抑制して血液排出量を低下させる
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬:末梢血管抵抗を減少させる
・カルシウム拮抗薬:末梢血管を拡張させる
・α遮断薬:末梢血管収縮抑制により血管抵抗を減少させる
・アンジオテンシンⅡレセプター拮抗薬:末梢血管の収縮を抑制
各人が自立して生きてゆくためには、動脈硬化性疾患と無縁でいることが重要です。その為にも高血圧の治療は必要ですね。もし健康診断での血圧値が高かった場合は自覚症状がないからと放置するのではなく外来受診をしていただき、必要があれば生活習慣の改善とともに治療をはじめしょう!
【血圧】
血圧は心臓から送り出される血液の量と、血液が流れる時に生じる末梢動脈の抵抗により規定されています。最高血圧とは心臓が収縮している時の血液が血管にかける圧力、最低血圧は心臓が拡張して緩んでいる時の血液が血管にかける圧力です。
【血圧の値およびその分類】
通常成人の最高血圧は140mmHg未満、最低血圧は90mmHg未満に調節されています。最高血圧と最低血圧のどちらか一方でもこの数値を持続して超えた場合、高血圧となります。血圧は運動や緊張などにより上昇しますがこの時に基準値を超えても高血圧とはいいません。高血圧かどうかは定期的に血圧を測り平均値を参考にする必要があります。生活の場で2週間ほど朝・夜を含め、数回測定し記録してみましょう。詳しい血圧値の分類は以下のようになっています。
表1 成人における血圧値の分類(高血圧治療ガイドライン2009)
【高血圧の症状】
高血圧は「沈黙の殺人者(silent killer)」と呼ばれます。
なぜそう呼ばれるのでしょうか?
血圧は急に上昇すると意識障害や頭痛など不快な症状が表れますが慢性的に高血圧状態が続いている場合にはほとんど症状が表れません。高血圧自体に自覚できる症状がないのです。そのまま放置、進行すると合併症を引き起こし、ある日突然命にかかわる状態に陥ってしまう可能性が・・・。 高血圧は命の危機を招く恐れがあるのです。
【高血圧が全身に及ぼす影響】
高血圧が進むと心臓は高い血圧に打ち勝って血液を身体の隅々にまで送らなくてはならない為大きな力が必要となり心筋は肥厚します。
この心肥大が進むと心臓のポンプとしての力が弱ってしまい血液を全身に送ることが難しくなり心不全となります。 一方圧負荷は動脈にも加わり、血管が厚くなっていきます。
また、高い圧力により血管の内側が傷つき、そこに血液中の諸成分や脂質がしみこんでいきます。血管が硬く、血管の内径が細くなり動脈硬化病変を形成してしまいます。
そして血行の力学的抵抗を受けやすい際動脈にその病変が進み、臓器の機能障害をもたらします。 特に脳動脈では細い動脈の壊死にもとづく出血を生じます。
また腎臓では糸球体、輸入動脈を中心とした硬化病変により腎臓が萎縮、硬化して機能不全に陥るなどの重大な合併症を生じます。 冠動脈の硬化が生じると血流が悪くなり、そこに血のかたまりが出来やすくなります。
結果心筋に充分に血液が行き届かなく虚血性心臓病を引き起こす可能性があります。
【高血圧の分類】
高血圧といっても様々な種類があります。 高血圧は原因不明の本態性高血圧症と原因となる病気がはっきりしている二次性高血圧症とに分類されます。 高血圧と診断されている方の90~95%は原因不明の本態性高血圧です。原因不明とはいっても様々な要素が複合して高血圧になっていることは明らかになっています。
本態性高血圧をまねく要因は遺伝・加齢・ストレス・過労・寒冷・アルコール・塩分・脂肪食・タバコなどがあげられます。
一方、二次性高血圧は、腎疾患、内分泌疾患、動脈疾患、急性ストレス反応、医原性、神経疾患、血液疾患などによるものであり、その原因となっている病気を治せば血圧も正常にもどる可能性が高いです。
女性では妊娠中に高血圧症候群に陥る可能性があります。
※二次性高血圧をきたす疾患例
・腎疾患:糸球体腎炎、腎盂腎炎、痛風腎、腎動脈硬化症、線維筋性異形成など
・内分泌疾患:甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など
・ 動脈疾患:大動脈縮窄症、大動脈解離など
・急性ストレス反応:心因性、低血糖、熱傷など
・ 医原性:経口避妊薬、エストロゲン補充療法、副腎皮質ステロイド、漢方薬(甘草)、コカイン、尿路結石砕石術など
・神経疾患:脳炎、脳腫瘍、睡眠時無呼吸症候群など
・血液疾患:真性多血症
【高血圧症の治療】
治療の目的は心血管系疾患発症率や総死亡率を減少させることにあり、他の危険因子の治療も含めて進めていく必要があります。降圧治療の目標は、血圧を正常あるいは至適なレベル(表1参照)に戻すことにあります。治療は次のように進めていきます。
《1治療は必要な高血圧であるかどうかを判断》
血圧値を正しく評価することが重要です。1回の外来随時血圧測定だけでなく2週間ほど家庭でも朝夕含め数回測定して、それらの数値と外来時の数値を比べながら判断します。
《2生活習慣の是正》
本態性高血圧の発症は遺伝子と子供の頃からの生活習慣と密接な関係があります。治療は生活習慣の是正からはじまります。
禁煙:喫煙は精神的ストレスの解消ですが、肉体的には血液を濁化させ毛細血管に抵抗を引起し、血圧を上昇させます
肥満があれば適性体重まで減量:減量は血圧低下だけでなくインスリン抵抗性糖尿病、高脂血症などの合併する危険因子に対しても有益な効果があります
睡眠不足の是正:ストレスは高血圧と直接関係あります。良質な睡眠はストレスの解消につながります
減塩(1日6g以下):食塩及びナトリウム摂取の減量はもちろんのことカリウム摂取が不足しないよう留意する
野菜や果物を取り入れた食事(但し腎機能障害が進行している場合は高カリウム血症をひきおこしてしまうので注意)
アルコール制限(アルコール換算で20g以下):ビールなら中瓶1本、日本酒なら1.5合など
緩やかな有酸素運動を行う:早歩きや水泳など
《3薬物療法》
お薬の服用なしで3ヶ月試みても140/90mmHgのラインにまで血圧が下がらない時にお薬の服用がはじまります。
ただし血圧値および心血管系の危険因子、標的臓器障害、糖尿病、循環器合併症の有無などにより、高血圧以外の心血管病のリスクがどのくらいあるかを評価して低リスク群、中等リスク群、高リスク群ならびに超高リスク群にクループ分けします。3つ以上の危険因子をもつ場合、糖尿病・慢性腎臓病・標的臓器障害ないし循環器関連合併症がある場合は高リスク群ならびに超高リスク群とされ、血圧値の反復測定での確認後すぐに薬物療法を開始する必要があります。
① 単一のお薬を少量から始め1回服用で効果の持続するお薬が勧められます
② 個々のお薬には積極的な適応と禁忌があります しばしば2種類以上のお薬の併用も行われます
※投与されるお薬の種類
・利尿薬:血液量の減少させる
・β遮断薬:心臓の収縮を抑制して血液排出量を低下させる
・アンジオテンシン変換酵素阻害薬:末梢血管抵抗を減少させる
・カルシウム拮抗薬:末梢血管を拡張させる
・α遮断薬:末梢血管収縮抑制により血管抵抗を減少させる
・アンジオテンシンⅡレセプター拮抗薬:末梢血管の収縮を抑制
~最後に~
各人が自立して生きてゆくためには、動脈硬化性疾患と無縁でいることが重要です。その為にも高血圧の治療は必要ですね。もし健康診断での血圧値が高かった場合は自覚症状がないからと放置するのではなく外来受診をしていただき、必要があれば生活習慣の改善とともに治療をはじめしょう!
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