2018.09.25>気管支喘息
喘息における漢方医学の診断と治療
1.喘息について
喘鳴、呼吸困難、咳嗽、胸部の絞扼感など多彩な症状を呈する喘息は、わが国の総患者数が109万人(H17年厚生労働省患者調査)その中に男性55万人、女性54万人です。
喘息は、重症度にかかわらず、気道の慢性炎症性疾患です。
つまり、空気の通り道である気道に炎症が起き、部分的または完全に可逆的な気管支収縮を生じて、空気の流れが制限される病気です。
喘息は古くから知られていた疾患です。西洋では,西暦前,Hippocrates(BC460~377 年)が“息切れ,喘ぎ”という言葉を用いていたと言われています。
東洋では中国最古の医書である「霊枢,素問」〔紀元前 2世紀頃の書〕にも喘息の記載があります。
2.喘息の原因
① 喘息の西洋医学的な原因
喘息の原因は大きく二つに分けられます。
発作の誘因としてアレルギー反応が関与するのはアトピー型喘息で、関与しないのは非アトピー型喘息です。
アトピー型喘息はアレルギーを起こし易い体質のことで、花粉症、蕁麻疹、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などと同じ、アレルギーです。
家族に多発することから、遺伝的素因に基づいて発症する生まれつきのアレルギーとなります。
非アトピー型喘息は「風邪」、「タバコの煙」、「ストレス」、「香水の香り」、「気候の変化」など、外部の刺激によって発作が起こってしまうタイプの喘息です。
また薬(アスピリンなど)、食品添加物(黄色4号)や防腐剤(安息香酸ナトリウム)により喘息を誘発する場合もあります。
② 喘息の東洋医学的な原因
喘息の原因は外部の原因(水毒など)と内部の原因(虚弱など)があります。
外部の原因はいろいろな毒です。簡単に言うとすべてのアレルギー源と思われるものや、環境の変化、食べ物や薬などが誘発の原因になりえます。
内部の原因は内臓、主に腎と肺が弱いということです。特に小児喘息は、肺や腎が生まれつき弱く、漢方治療と子供の発育と伴って、成年後に喘息が治るケースも少なくありません
気血水の視点から見ると、水分代謝の異常と気逆とされています。その異常と関連性が深い臓器も腎と肺です。水分代謝が悪く、余っている水分が肺に溜まっり、溜まっている水が水毒になる。
その水毒が肺を刺激し、気が上がって、咳・痰や喘鳴が出るようになります。
3.喘息の症状
喘息発作の頻度や重症度はさまざまです。
発作がないときは健康な人と変わらず元気な状態が続きます。数々の誘因で発作が起こると激しい咳によって息がつけなくなります。
喘息の主な症状は、激しい咳き込み、痰をしたときに出る粘り気のある痰、息苦しさなどです。
息をするたびに喉や胸から「ヒューヒュー」「ゼイゼイ」と音がする喘鳴(ぜんめい)です。
痰をともなわず、激しい咳だけが出る場合があります。
また、痰だけが多くなったり、痰がからんで取れないこともあります。あるいは、胸の痛み、息切れ、喉や胸のあたりの不快感や違和感、息苦しさのみと感じる人もいます。
喘息の発作が起こりやすい時間帯があります。
①深夜や明け方、寝ている時
②季節の変わり目、寒暖の差が激しい時
③天気が良くない時、変わりやすい時
が挙げられます。
4.喘息の診断と鑑別診断
① 喘息の西洋医学診断
喘息の多くは症状のみでほぼ診断が可能です。 しかし、発病初期で呼吸困難や喘鳴が認めない軽い状態では診断するのが難しい時もあります。
受診されるときに、ゼーゼー、ヒューヒューがあるか、呼吸困難があるか、咳や呼吸困難などの症状が夜間や早朝にあるかなどを先生にお話されると良いと思います。
喘息かどうかわからない方は、下の表を参考にしてください。喘息かどうかわかっていない方では、5点以上なら喘息の可能性が高いと考えられます。
☑喘息の簡易自己診断表
あなたの喘息度は?--喘息度チェック--
引用元:インフォームドコンセントのための図説シリーズ 喘息 (監修:足立満)
気管支喘息の診断と重症度判定 佐野靖之
②喘息の鑑別診断
下記の疾患について鑑別する必要があります。
A.上気道疾患:喉頭炎、咽頭蓋炎
B.中枢気道疾患:気道内腫瘍、気道異物、気管軟化症、気管支結核
C.肺胞領域の疾患:慢性閉塞性肺疾患(COPD)、びまん性汎細気管支炎、肺線維症、過敏性肺炎
D.循環器疾患:うっ血性心不全、肺血栓塞栓症
E.薬物による咳:アスピリン製剤やほかの薬剤
F.その他の原因:自然気胸、迷走神経刺激症状、過換気症候群、心因性咳嗽
G.アレルギー性呼吸器疾患:アレルギー性気管支症、アレルギー性肉芽腫性血管炎、好酸球性肺炎など
5.喘息における漢方医学治療
西洋薬で喘息に対症治療を行い、小児喘息を除き、成人喘息を根治するのは容易ではないでしょう。
漢方で体質改善をすることで、発作をコントロールすることは可能です。
漢方薬は中度以下の喘息発作に対して十分に有効です。また、発作のない時期に体質の改善、痰飲の除去、臓腑機能の強化をすることで、根本的な改善が期待できます。
漢方治療は喘息が発症している急性期と発症していない緩解期、二つに分けて行います。
急性期には寒哮(かんしょう)と熱哮(ねっしょう)があります。緩解期には腎虚(じんきょ)、肺虚(はいきょ)、肺腎陰虚(はいじんいんきょ)、脾虚(ひきょ)などのタイプがあります。
①急性期喘息の漢方治療
A.寒哮(かんしょう)型
症状:呼吸困難、胸苦しい、横になれない、痰は出にくい、水っぽい鼻水、顔色蒼白
漢方生薬:麻黄・射干・生姜・細辛・紫苑・款冬花・五味子・大棗・半夏など
B.熱哮(ねっしょう)型
症状:呼吸困難、息が荒い、痰鳴、胸が張る、黄粘痰、口粘、口乾
漢方生薬:麻黄・杏仁・甘草・石膏・白果・蘇子・款冬花・桑白皮・黄芩・半夏など
②緩解期喘息の漢方治療
A.腎虚(じんきょ)型
症状:呼吸が短い・吸いにくい・動くと悪化・ 耳鳴・四肢冷え
漢方生薬:地黄・山薬・山茱萸・茯苓・沢瀉・牡丹皮・桂皮・附子など
B.肺虚(はいきょ)型
症状:風邪引きやすい・季節の変化に影響受けやすい
漢方生薬:黄耆・白朮・防風・人参・麦門冬・五味子など
C.肺腎陰虚(はいじんいんきょ)型
症状:痩せ・咽や口の乾燥・足腰だるい・寝汗
漢方生薬:地黄・山薬・山茱萸・茯苓・沢瀉・牡丹皮・麦門冬・五味子など
D.脾虚(ひきょ)型
症状:食が細い・下痢しやすい・飲食不節で発症
漢方生薬:人参・白朮・茯苓・甘草・半夏・陳皮・生姜・大棗など
上記は典型的なものを挙げていますが、症状や体質により、同じタイプであっても、違う漢方生薬で治療する場合も多々ありますので、ぜひあきらめる前に一度、漢方相談をお試しください。
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