2018.09.25>不妊症の症状・原因・診断
不妊症(女性)の西洋医学診断
不妊症とは通常の夫婦生活があるにもかかわらず、2年以内に妊娠しないことをいいます。一般的には、夫婦の90%以上が2年以内に妊娠することができます。
不妊症の原因診断をしなければなりません。もちろん、すべて検査をしても、原因不明の不妊症もあります。
不妊症の診断は具体的に下記の通りに分けて説明します。男性不妊について別に述べます。
下垂体ホルモンの周期、卵巣の排卵周期、エストロゲン・ブロゲステロンの女性ホルモン周期、子宮内膜の周期は正常に働いていることが排卵・受精・妊娠の基本となります。
まずは、排卵障害の有無、以下のことが診断には重要です。
一番大事なことはやはり問診ですね。月経不順・月経遅延・無月経・不正出血・おりもの・溢乳・ストレスや精神面・全身状態などの状況を詳しく聞くことですね。これらの症状があれば、排卵障害にかかわる可能性があります。
毎日測った基礎体温でできたグラフ(基礎体温表)からホルモンの状態・排卵の有無、黄体機能などの様子が見ることができます。
正常の基礎体温のグラフでは、①低温相と高温相があり、その境界線が36.7℃である; ②低温相と高温相の温度差は0.3℃以上;③高温相の持続期間は10日以上という三つのことを満たすものです。
基礎体温が一相性(体温の温度差がないこと)であれば、無排卵となります。この場合は月経不順がほとんどですが、月経が正常に来ても、無排卵性月経といいます。この場合、当然妊娠ができません。
高温相が9日以内、または高温相と低温相の温度差が0.3℃未満の場合、黄体機能不全となります。黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用は、子宮内膜の状態を柔らかく厚くして(フカフカのベッドと言われる)、受精卵が着床しやすい状態にしてくれます。この黄体ホルモンの分泌が少ないと、子宮内膜が薄かったり(着床しにくい)、高温期が短かったり、高低の温度差がなかったりします。この黄体ホルモンの分泌が少ない状態を黄体機能不全といい、不妊症の原因の一つです。
ホルモン正常値 {卵胞期(月経3~7日目)黄体期(排卵後6~7日目)}
LH(mIU/ml): 1.8~7.0卵胞期 ;1.0~7.8黄体期
FSH(mIU/ml) :5.2~14.4卵胞期 ; 2.0~8.4黄体期
E2(pg/ml) : 50以下卵胞期; 100以上黄体期
P4(ng/ml) : 1以下卵胞期; 10以上黄体期
PRL(ng/ml): 2.4~8.1卵胞期; 2.6~11.6黄体期
T(ng/ml): 0.2~0.8卵胞期; 0.2~0.8黄体期
LHとFSHの2つの下垂体ホルモン。卵巣の刺激をして卵胞を育成や排卵を促し、また卵巣性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を分泌させる働きをします。
ゴナドトロピンが異常低値を示すときは、低ゴナドトロピン性卵巣機能低下症とよばれ、間脳や脳下垂体が原因の排卵障害が疑われます。
またゴナドトロピンが異常高値を示すときは、高ゴナドトロピン性卵巣機能低下症とよばれ、卵巣機能に原因がある排卵障害が疑われます。
下垂体から分泌され、卵胞の発育や排卵を促すホルモンです。FSHが低めでLHがやや高いと、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。
下垂体から分泌され、卵巣を刺激して卵胞の発育を促すホルモンです。FSHが高いと早発性卵巣機能不全(POF)が疑われます。
子宮内膜の肥厚、子宮頸管粘液の分泌など、女性を妊娠しやすい状態に整えるホルモンです。卵胞ホルモン(エストロゲン)は、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)が3大エストロゲンと呼ばれ、中でもエストラジオール(E2)が最も活性が強く、エストロゲン=エストラジオール(E2)と表記されることも多いでしょう。
エストラジオールの検査時期は卵胞初期、排卵直前、黄体期があり、プロラクチンやLH、FSHと総合的に判定していくことになります。
基礎体温で高温を維持させるホルモンで、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を肥厚させます。(分泌期内膜)
黄体中期に血中プロゲステロンレベルが10ng/ml以下だと、黄体機能不全と診断されることがあります。ただしプロゲステロンレベルは、17ng/ml以上が理想とされています。
乳汁を分泌するホルモン「プロラクチン」が高値になり、排卵を邪魔することがあります。妊娠中や授乳中(生理が止まる)に放出されるプロラクチンが、妊娠していないのに大量に分泌されてしまうことを高プロラクチン血症といいます。
血中プロラクチンレベルは15ng/ml以下が正常とされています。しかし高プロラクチン血症と診断される人はかなりの高値を示し、多いときには100ng/ml以上になる人もいます。
日中に測定したPRLレベルが正常でも、夜間にプロラクチンの分泌量が上昇する人がいます。これを潜在性高プロラクチン血症といい、隠れた不妊原因の1つとしてあげられます。
潜在性高プロラクチン血症の診断方法は、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を投与して、脳下垂体からのPRLの放出を観察します。
副腎や卵巣から分泌される男性ホルモン。高値になると体毛が濃くなったり、多毛やにきびなどの男性化兆候、あるいはPCOによる排卵障害が起こることもあります。”
基礎体温が高温相になったからといって、かならずしも排卵が起こっているとは限りません。黄体化未破裂卵胞といって卵胞は成熟するものの排卵には至らない場合が時々認められます。排卵が起こらなくても黄体化に伴いプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されれば、体温調節中枢が刺激されて基礎体温は高温相となります。したがって、単に基礎体温だけで排卵を推定するのは不十分であり、高温相に移行した時点で超音波検査で成熟卵胞が消失したことを確認して初めて排卵があったと判断されます。
正常な排卵が行われている健康な女性では、基礎体温は、生理周期内で「低温期」と「高温期」に分かれた二相性になる。
卵胞期:生理開始~排卵までの間。基礎体温は低温相を示す。次の排卵のための卵胞が卵巣内で育っていき、子宮内膜を厚くするための卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌される。低温期が続く日数は、各人の生理周期の長さによって異なる。
排卵期:排卵を境に、基礎体温は約0.3~0.5℃上昇し、低温相から高温相へと移行する。
黄体期:排卵後~次の生理開始までの間。基礎体温は高温相を示す。正常なら、生理周期の長さの個人差にかかわらず、誰でも約2週間。排卵後の卵巣で卵胞が黄体へと変化し、子宮内膜を成熟させて妊娠に適した状態を維持する黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、これが基礎体温の高温相をもたらす。妊娠が成立すればそのまま黄体ホルモンの分泌が維持されて高温相が続くが、妊娠しなければ黄体の寿命が尽きたところで子宮内膜が剥がれ落ちて月経が開始し、それとともに基礎体温も下がる。人間が一定時間安静を保った後に、安息の状態で測った体温を「基礎体温」といいます。
排卵のある女性の基礎体温は、一般的に、基準体温を境にして、生理が始まった日から排卵日までは低温期が続き、排卵日を境に体温は0.3℃~0.5℃上昇し高温期となります。そして約2週間後に再び体温は低下して生理になるのです。”
卵管は子宮の左右に1つずつあり、長さは約10㎝、直径は狭いところで1mm程度しかありません。この卵管が「詰まっている」「癒着している」状態を「卵管障害(卵管性不妊)」といい、精子や受精卵が通れなくなり不妊の原因となります。
卵管障害は不妊症の30%とも言われていて近年増え続けている不妊原因です。卵管障害の問題は、「精子や受精卵が移動できずに受精、着床が出来にくい」ということだけではなく、受精卵が卵管に着床してしまう「子宮外妊娠」を引き起こす可能性もあります。
卵管障害による不妊症(卵管性不妊)の原因はには、①膣内の炎症が卵管へ移行; ②腹腔内の虫垂炎などの炎症が卵管へ移行; ③細菌感染; ④性感染症(STD)のクラミジア、トリコモナス、淋病など; ⑤子宮内膜症; ⑥腹部手術後の癒着などが挙げられます。近年とくに増え続けているのが、「クラミジア感染症」によるものです。クラミジア感染症は最も頻繁に見られる性感染症(STD)で、子宮頸管炎から子宮内膜炎、そして卵管炎と徐々に被害が広がっていきます。
卵管障害は子宮卵管造影検査、卵管通気検査、卵管通水検査、腹腔鏡検査などの検査で確認しますが、最も一般的に行なわれている検査は「子宮卵管造影」というもので、子宮の中に造影剤を注入することで、子宮腔~卵管~腹腔内の通気性を調べます。
通常、精子が子宮頸管を通過して「子宮腔」まで泳いで行くためには、2つの重要な条件があります。その1つ目は精子自体に問題がないということです。精子の運動や形態に異常があると、卵子に会うための過酷な移動は難しくなります。
そしてもう1つ、子宮頸管に問題がある「頸管不妊因子」です。これは主に頸管粘液の性状が悪いときに起こり、精子の通過を拒みます。頸管粘液は、上記にも説明した「粘度が少ないよく伸びる(糸を引く)卵白のような状態」こそ、もっとも精子の活動を活発にしてくれるのです。
また頸管粘液が正常に分泌されないこともあります。もともと卵胞の発育不全でエストロゲンの分泌が少なく、「頸管粘液を分泌しなさい」という卵巣からの指令が行き届かないとき。あるいは指令は行き届いているものの、子宮頸管側が「それ」に反応をしてくれないときなどです。
その他にも子宮頚管内に、感染、炎症などのトラブルが起こっていることもあります。最近になって増え続けている「クラミジア」は子宮頸管に炎症を起こして、頸管粘液の性状を悪化させる原因となります。
検査は子宮頸管炎の有無、およびその原因の特定、また子宮頸管粘液(粘液量・牽糸性・羊歯状結晶形成・外子宮口状況から)の検査で調べます。
この着床障害が起こる原因としては、日常の食生活などによるホルモンバランスの乱れや、子宮内膜症の悪化などが原因となったものなど、様々な原因が挙げられます。その中でも、着床障害の原因の中で多いと思われるものをお話したいと思います。
排卵後の重要なホルモンのひとつに、プロゲステロンという黄体ホルモンがあります。これは、排卵前に比べると30倍近く分泌され、子宮内膜を妊娠に適した状態にする働きがあります。ですが、黄体機能の不全などによりホルモンの分泌やバランスなどが悪いため、子宮内膜が厚くならない (妊娠の準備ができない) ことがあります。そうなってしまうと、受精卵が着床しづらくなり、なかなか妊娠できないという可能性がでてきます。
クラミジアの感染・人工中絶、または、出産時の帝王切開などの原因により子宮内膜が癒着を起こしている状態です。子宮内膜は、本来、子宮内にあるのですが、前述の原因や月経のときの血が逆流して起こる場合もあります。癒着している場所にもよりますが、卵管や卵巣などの妊娠に関係する器官に出来てしまった場合、妊娠しづらくなる可能性があります。
良性の腫瘍が、子宮の筋層や内部に出来ている状態です。しかし、子宮筋腫のすべてが不妊に結びつくのではありません。 不妊の原因になるかどうかは、主に筋腫が出来た場所、大きさによって左右されます。子宮の内腔に、突き出すように出来たり (粘膜下筋腫)、筋腫が大きくて、卵管を圧迫している場合は不妊の原因になります。
この症状は、子宮が胎児形成期にうまく作られなかった為に起こると言われています。子宮の形が変形していたり、子宮が二つあったりした場合には、子宮内自体が狭くなってしまうため受精卵が着床しにくくなり、不妊や流産の原因になる可能性もあります。子宮奇形で妊娠した場合には、安静にしているのが一番です。”
精液が正常で頚管粘液の状態が良好であっても、精子と頚管粘液の適合性がないと精子は子宮腔から卵管へと進入することができません。
性交後試験(フーナーテスト):排卵の頃に行います。検査前は4~5日間の禁欲を守って下さい。性交指導日の深夜または検査当日の早朝に性交渉を持ち、性交後12時間以内に来院して下さい。性交後3時間以上経っていれば精子は頚管内に進入していると考えられますから検査は可能です。
頚管内の粘液を吸引し、頚管スコアにより排卵期の頚管粘液であることをまず確認します。その後、顕微鏡(×400倍)で運動精子数と全精子数を最低10ヶ所以上観察して数えます。
“ 正常…………運動精子数15個以上/1視野
異常(陰性)… 運動精子数10個以下/1視野で非運動精子が 多い場合”
免疫学的な検査:抗精子抗体の有無など
正常精液測定基準値:精液量 2.0ml/以上; pH 7.2以上; 精液濃度 2000万個/ml 以上 総精子数 4000万個以上; 精子運動率 運動精子が50%以上、もしくは高速運動精子が25%以上(射精後60分以内) 精子奇形率 15%以下; 精子生存率75%以上; 白血球 100万個/ml 未満
血液型・不規則抗体:特殊な血液型でないか、問題のある不規則抗体がないかどうかを調べます。
貧血検査・一般的検査:女性は鉄欠乏性貧血の頻度が高いため、検査を行い貧血であれば治療を行います。また、血液生化学検査にて一般的な病気のスクリーニングも行います。
感染症検査:風疹、梅毒、肝炎ウイルス(B型肝炎・C型肝炎)、エイズ、クラミジアなど、基本的にはブライダルチェックで行われる検査や妊娠初期に行われる検査とほぼ同じ測定内容となります。検査結果で異常が見つかれば、当然不妊症と平行して治療が行われます。特に、罹患率が高く、卵管閉塞などを起こして不妊症の原因となりやすいクラミジア感染症や妊娠してから胎児奇形の原因となる風疹については初診時にチェックを受けておくことが大切です。
内分泌機能検査: 必要に応じてプロラクチン・甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモンなどの測定を行い、不妊症の原因となるような内分泌疾患がないかどうかを調べます。高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症、副腎機能異常症などの基礎疾患があればその治療を平行して行うことになります。
---以下は張冬(チョウ・トウ)先生の症例集です、ご参考にしてください---
■不妊症から卒業の道(不妊症症例・卒業したママ達の体験談など登載)随時更新
●【不妊症】31歳体外受精で妊娠!低AMH(40歳相当)漢方5か月で改善し採卵大成功(2021.3)New
●【不妊症】41歳、顕微授精で受精できなくても、3か月漢方で卵巣機能改善、体外受精成功(2020.8)
●【不妊症・卵巣機能不全】34歳、採卵で受精卵が全滅、7カ月漢方で卵巣機能改善、自然妊娠成功(2020.3)
●【不妊症・子宮筋腫】42歳、子宮筋腫3cm、漢方5カ月、体外受精で妊娠(2020.2)
●【卵巣機能不全】45歳、排卵誘発反応が無かった卵巣から採卵成功!2症例の報告(その1)(2019.11)
●【卵巣機能不全】39歳、漢方服用5か月でAMH値が1.32→5.23に改善しました。(2019.10)
●【不妊症】31歳、早期妊娠希望、漢方3ヶ月服用して、自然妊娠成功(2019.8)
●【不妊症・子宮筋腫・着床障害】34歳、子宮筋腫6㎝、潜在性甲状腺機能低下、着床障害、漢方4ヶ月服用、妊娠成功(2019.7)
不妊症の原因診断をしなければなりません。もちろん、すべて検査をしても、原因不明の不妊症もあります。
不妊症の診断は具体的に下記の通りに分けて説明します。男性不妊について別に述べます。
A.排卵障害についての診断
下垂体ホルモンの周期、卵巣の排卵周期、エストロゲン・ブロゲステロンの女性ホルモン周期、子宮内膜の周期は正常に働いていることが排卵・受精・妊娠の基本となります。
まずは、排卵障害の有無、以下のことが診断には重要です。
①問診
一番大事なことはやはり問診ですね。月経不順・月経遅延・無月経・不正出血・おりもの・溢乳・ストレスや精神面・全身状態などの状況を詳しく聞くことですね。これらの症状があれば、排卵障害にかかわる可能性があります。
②基礎体温(BBT)のチェック
毎日測った基礎体温でできたグラフ(基礎体温表)からホルモンの状態・排卵の有無、黄体機能などの様子が見ることができます。
正常の基礎体温のグラフでは、①低温相と高温相があり、その境界線が36.7℃である; ②低温相と高温相の温度差は0.3℃以上;③高温相の持続期間は10日以上という三つのことを満たすものです。
基礎体温が一相性(体温の温度差がないこと)であれば、無排卵となります。この場合は月経不順がほとんどですが、月経が正常に来ても、無排卵性月経といいます。この場合、当然妊娠ができません。
高温相が9日以内、または高温相と低温相の温度差が0.3℃未満の場合、黄体機能不全となります。黄体ホルモン(プロゲステロン)の作用は、子宮内膜の状態を柔らかく厚くして(フカフカのベッドと言われる)、受精卵が着床しやすい状態にしてくれます。この黄体ホルモンの分泌が少ないと、子宮内膜が薄かったり(着床しにくい)、高温期が短かったり、高低の温度差がなかったりします。この黄体ホルモンの分泌が少ない状態を黄体機能不全といい、不妊症の原因の一つです。
不妊症の方の基礎体温表の例: 月経遅延、黄体機能不全
③ホルモンの検査
ホルモン正常値 {卵胞期(月経3~7日目)黄体期(排卵後6~7日目)}
LH(mIU/ml): 1.8~7.0卵胞期 ;1.0~7.8黄体期
FSH(mIU/ml) :5.2~14.4卵胞期 ; 2.0~8.4黄体期
E2(pg/ml) : 50以下卵胞期; 100以上黄体期
P4(ng/ml) : 1以下卵胞期; 10以上黄体期
PRL(ng/ml): 2.4~8.1卵胞期; 2.6~11.6黄体期
T(ng/ml): 0.2~0.8卵胞期; 0.2~0.8黄体期
◎ ゴナドトロピン(性腺刺激ホルモン)
LHとFSHの2つの下垂体ホルモン。卵巣の刺激をして卵胞を育成や排卵を促し、また卵巣性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を分泌させる働きをします。
ゴナドトロピンが異常低値を示すときは、低ゴナドトロピン性卵巣機能低下症とよばれ、間脳や脳下垂体が原因の排卵障害が疑われます。
またゴナドトロピンが異常高値を示すときは、高ゴナドトロピン性卵巣機能低下症とよばれ、卵巣機能に原因がある排卵障害が疑われます。
◎ LH(黄体形成ホルモン)
下垂体から分泌され、卵胞の発育や排卵を促すホルモンです。FSHが低めでLHがやや高いと、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。
◎ FSH(卵胞刺激ホルモン)
下垂体から分泌され、卵巣を刺激して卵胞の発育を促すホルモンです。FSHが高いと早発性卵巣機能不全(POF)が疑われます。
◎エストラジオール(E2)
子宮内膜の肥厚、子宮頸管粘液の分泌など、女性を妊娠しやすい状態に整えるホルモンです。卵胞ホルモン(エストロゲン)は、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、エストリオール(E3)が3大エストロゲンと呼ばれ、中でもエストラジオール(E2)が最も活性が強く、エストロゲン=エストラジオール(E2)と表記されることも多いでしょう。
エストラジオールの検査時期は卵胞初期、排卵直前、黄体期があり、プロラクチンやLH、FSHと総合的に判定していくことになります。
◎ プロゲステロン(P4)
基礎体温で高温を維持させるホルモンで、受精卵が着床しやすいように子宮内膜を肥厚させます。(分泌期内膜)
黄体中期に血中プロゲステロンレベルが10ng/ml以下だと、黄体機能不全と診断されることがあります。ただしプロゲステロンレベルは、17ng/ml以上が理想とされています。
◎ プロラクチン(PRL)
乳汁を分泌するホルモン「プロラクチン」が高値になり、排卵を邪魔することがあります。妊娠中や授乳中(生理が止まる)に放出されるプロラクチンが、妊娠していないのに大量に分泌されてしまうことを高プロラクチン血症といいます。
血中プロラクチンレベルは15ng/ml以下が正常とされています。しかし高プロラクチン血症と診断される人はかなりの高値を示し、多いときには100ng/ml以上になる人もいます。
◎ 潜在性高プロラクチン血症
日中に測定したPRLレベルが正常でも、夜間にプロラクチンの分泌量が上昇する人がいます。これを潜在性高プロラクチン血症といい、隠れた不妊原因の1つとしてあげられます。
潜在性高プロラクチン血症の診断方法は、TRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を投与して、脳下垂体からのPRLの放出を観察します。
◎ テストステロン(T)
副腎や卵巣から分泌される男性ホルモン。高値になると体毛が濃くなったり、多毛やにきびなどの男性化兆候、あるいはPCOによる排卵障害が起こることもあります。”
* 黄体化未破裂卵胞(LUF:Luteinized Unruptered Follicle)
基礎体温が高温相になったからといって、かならずしも排卵が起こっているとは限りません。黄体化未破裂卵胞といって卵胞は成熟するものの排卵には至らない場合が時々認められます。排卵が起こらなくても黄体化に伴いプロゲステロン(黄体ホルモン)が分泌されれば、体温調節中枢が刺激されて基礎体温は高温相となります。したがって、単に基礎体温だけで排卵を推定するのは不十分であり、高温相に移行した時点で超音波検査で成熟卵胞が消失したことを確認して初めて排卵があったと判断されます。
◎ 基礎体温について
正常な排卵が行われている健康な女性では、基礎体温は、生理周期内で「低温期」と「高温期」に分かれた二相性になる。
卵胞期:生理開始~排卵までの間。基礎体温は低温相を示す。次の排卵のための卵胞が卵巣内で育っていき、子宮内膜を厚くするための卵胞ホルモン(エストロゲン)が分泌される。低温期が続く日数は、各人の生理周期の長さによって異なる。
排卵期:排卵を境に、基礎体温は約0.3~0.5℃上昇し、低温相から高温相へと移行する。
黄体期:排卵後~次の生理開始までの間。基礎体温は高温相を示す。正常なら、生理周期の長さの個人差にかかわらず、誰でも約2週間。排卵後の卵巣で卵胞が黄体へと変化し、子宮内膜を成熟させて妊娠に適した状態を維持する黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌され、これが基礎体温の高温相をもたらす。妊娠が成立すればそのまま黄体ホルモンの分泌が維持されて高温相が続くが、妊娠しなければ黄体の寿命が尽きたところで子宮内膜が剥がれ落ちて月経が開始し、それとともに基礎体温も下がる。人間が一定時間安静を保った後に、安息の状態で測った体温を「基礎体温」といいます。
排卵のある女性の基礎体温は、一般的に、基準体温を境にして、生理が始まった日から排卵日までは低温期が続き、排卵日を境に体温は0.3℃~0.5℃上昇し高温期となります。そして約2週間後に再び体温は低下して生理になるのです。”
B.卵管障害についての診断
卵管は子宮の左右に1つずつあり、長さは約10㎝、直径は狭いところで1mm程度しかありません。この卵管が「詰まっている」「癒着している」状態を「卵管障害(卵管性不妊)」といい、精子や受精卵が通れなくなり不妊の原因となります。
卵管障害は不妊症の30%とも言われていて近年増え続けている不妊原因です。卵管障害の問題は、「精子や受精卵が移動できずに受精、着床が出来にくい」ということだけではなく、受精卵が卵管に着床してしまう「子宮外妊娠」を引き起こす可能性もあります。
卵管障害による不妊症(卵管性不妊)の原因はには、①膣内の炎症が卵管へ移行; ②腹腔内の虫垂炎などの炎症が卵管へ移行; ③細菌感染; ④性感染症(STD)のクラミジア、トリコモナス、淋病など; ⑤子宮内膜症; ⑥腹部手術後の癒着などが挙げられます。近年とくに増え続けているのが、「クラミジア感染症」によるものです。クラミジア感染症は最も頻繁に見られる性感染症(STD)で、子宮頸管炎から子宮内膜炎、そして卵管炎と徐々に被害が広がっていきます。
卵管障害は子宮卵管造影検査、卵管通気検査、卵管通水検査、腹腔鏡検査などの検査で確認しますが、最も一般的に行なわれている検査は「子宮卵管造影」というもので、子宮の中に造影剤を注入することで、子宮腔~卵管~腹腔内の通気性を調べます。
C.子宮頸部粘液の異常についての診断
通常、精子が子宮頸管を通過して「子宮腔」まで泳いで行くためには、2つの重要な条件があります。その1つ目は精子自体に問題がないということです。精子の運動や形態に異常があると、卵子に会うための過酷な移動は難しくなります。
そしてもう1つ、子宮頸管に問題がある「頸管不妊因子」です。これは主に頸管粘液の性状が悪いときに起こり、精子の通過を拒みます。頸管粘液は、上記にも説明した「粘度が少ないよく伸びる(糸を引く)卵白のような状態」こそ、もっとも精子の活動を活発にしてくれるのです。
また頸管粘液が正常に分泌されないこともあります。もともと卵胞の発育不全でエストロゲンの分泌が少なく、「頸管粘液を分泌しなさい」という卵巣からの指令が行き届かないとき。あるいは指令は行き届いているものの、子宮頸管側が「それ」に反応をしてくれないときなどです。
その他にも子宮頚管内に、感染、炎症などのトラブルが起こっていることもあります。最近になって増え続けている「クラミジア」は子宮頸管に炎症を起こして、頸管粘液の性状を悪化させる原因となります。
検査は子宮頸管炎の有無、およびその原因の特定、また子宮頸管粘液(粘液量・牽糸性・羊歯状結晶形成・外子宮口状況から)の検査で調べます。
D.着床障害の異常についての診断
この着床障害が起こる原因としては、日常の食生活などによるホルモンバランスの乱れや、子宮内膜症の悪化などが原因となったものなど、様々な原因が挙げられます。その中でも、着床障害の原因の中で多いと思われるものをお話したいと思います。
①黄体機能不全
排卵後の重要なホルモンのひとつに、プロゲステロンという黄体ホルモンがあります。これは、排卵前に比べると30倍近く分泌され、子宮内膜を妊娠に適した状態にする働きがあります。ですが、黄体機能の不全などによりホルモンの分泌やバランスなどが悪いため、子宮内膜が厚くならない (妊娠の準備ができない) ことがあります。そうなってしまうと、受精卵が着床しづらくなり、なかなか妊娠できないという可能性がでてきます。
②子宮内膜の癒着
クラミジアの感染・人工中絶、または、出産時の帝王切開などの原因により子宮内膜が癒着を起こしている状態です。子宮内膜は、本来、子宮内にあるのですが、前述の原因や月経のときの血が逆流して起こる場合もあります。癒着している場所にもよりますが、卵管や卵巣などの妊娠に関係する器官に出来てしまった場合、妊娠しづらくなる可能性があります。
③子宮筋腫
良性の腫瘍が、子宮の筋層や内部に出来ている状態です。しかし、子宮筋腫のすべてが不妊に結びつくのではありません。 不妊の原因になるかどうかは、主に筋腫が出来た場所、大きさによって左右されます。子宮の内腔に、突き出すように出来たり (粘膜下筋腫)、筋腫が大きくて、卵管を圧迫している場合は不妊の原因になります。
④子宮奇形による不妊
この症状は、子宮が胎児形成期にうまく作られなかった為に起こると言われています。子宮の形が変形していたり、子宮が二つあったりした場合には、子宮内自体が狭くなってしまうため受精卵が着床しにくくなり、不妊や流産の原因になる可能性もあります。子宮奇形で妊娠した場合には、安静にしているのが一番です。”
E.免疫性不妊についての診断
精液が正常で頚管粘液の状態が良好であっても、精子と頚管粘液の適合性がないと精子は子宮腔から卵管へと進入することができません。
性交後試験(フーナーテスト):排卵の頃に行います。検査前は4~5日間の禁欲を守って下さい。性交指導日の深夜または検査当日の早朝に性交渉を持ち、性交後12時間以内に来院して下さい。性交後3時間以上経っていれば精子は頚管内に進入していると考えられますから検査は可能です。
頚管内の粘液を吸引し、頚管スコアにより排卵期の頚管粘液であることをまず確認します。その後、顕微鏡(×400倍)で運動精子数と全精子数を最低10ヶ所以上観察して数えます。
“ 正常…………運動精子数15個以上/1視野
異常(陰性)… 運動精子数10個以下/1視野で非運動精子が 多い場合”
免疫学的な検査:抗精子抗体の有無など
F.ほかの原因についての診断
①男性精液の検査
正常精液測定基準値:精液量 2.0ml/以上; pH 7.2以上; 精液濃度 2000万個/ml 以上 総精子数 4000万個以上; 精子運動率 運動精子が50%以上、もしくは高速運動精子が25%以上(射精後60分以内) 精子奇形率 15%以下; 精子生存率75%以上; 白血球 100万個/ml 未満
②血液の検査
血液型・不規則抗体:特殊な血液型でないか、問題のある不規則抗体がないかどうかを調べます。
貧血検査・一般的検査:女性は鉄欠乏性貧血の頻度が高いため、検査を行い貧血であれば治療を行います。また、血液生化学検査にて一般的な病気のスクリーニングも行います。
感染症検査:風疹、梅毒、肝炎ウイルス(B型肝炎・C型肝炎)、エイズ、クラミジアなど、基本的にはブライダルチェックで行われる検査や妊娠初期に行われる検査とほぼ同じ測定内容となります。検査結果で異常が見つかれば、当然不妊症と平行して治療が行われます。特に、罹患率が高く、卵管閉塞などを起こして不妊症の原因となりやすいクラミジア感染症や妊娠してから胎児奇形の原因となる風疹については初診時にチェックを受けておくことが大切です。
内分泌機能検査: 必要に応じてプロラクチン・甲状腺ホルモン・副腎皮質ホルモンなどの測定を行い、不妊症の原因となるような内分泌疾患がないかどうかを調べます。高プロラクチン血症、甲状腺機能低下症、副腎機能異常症などの基礎疾患があればその治療を平行して行うことになります。
---以下は張冬(チョウ・トウ)先生の症例集です、ご参考にしてください---
■不妊症から卒業の道(不妊症症例・卒業したママ達の体験談など登載)随時更新
●【不妊症】31歳体外受精で妊娠!低AMH(40歳相当)漢方5か月で改善し採卵大成功(2021.3)New
●【不妊症】41歳、顕微授精で受精できなくても、3か月漢方で卵巣機能改善、体外受精成功(2020.8)
●【不妊症・卵巣機能不全】34歳、採卵で受精卵が全滅、7カ月漢方で卵巣機能改善、自然妊娠成功(2020.3)
●【不妊症・子宮筋腫】42歳、子宮筋腫3cm、漢方5カ月、体外受精で妊娠(2020.2)
●【卵巣機能不全】45歳、排卵誘発反応が無かった卵巣から採卵成功!2症例の報告(その1)(2019.11)
●【卵巣機能不全】39歳、漢方服用5か月でAMH値が1.32→5.23に改善しました。(2019.10)
●【不妊症】31歳、早期妊娠希望、漢方3ヶ月服用して、自然妊娠成功(2019.8)
●【不妊症・子宮筋腫・着床障害】34歳、子宮筋腫6㎝、潜在性甲状腺機能低下、着床障害、漢方4ヶ月服用、妊娠成功(2019.7)
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