2018.09.25>不妊症の症状・原因・診断
不妊症(女性)の漢方医学診断に対する許志泉の見解
この部分は不妊症に対する漢方治療の許志泉個人の経験に基づく理解です。
漢方医学(中医学)では、体質診断は非常に大切です。同じ病気でも体質により、その人の症状や臨床表現が違ってきます。不妊症でも体質の要素も非常に重要になります。
不妊症の方の体質についての分類は難しいですが、少なくとも下記のような十種類のタイプが存在していると思います。これらのタイプに多く出現する主要症状をまとめます
発育不良、子宮過小、小型、体力が弱くて疲れやすい、精力性欲の弱い、活力が弱い、顔色の黒っぽいが多い、月経量が少ない、生理痛が出やすい、無排卵。
精力性欲のよわい、顔色・血色の不良、むくみやすい、冷えやすい、時にめまい、肩こり、頭痛。月経痛、月経中に体力がより低下する、尿不利(頻尿・少尿・夜間尿など)、おりものが多すぎる傾向。腹部軟弱無力。無排卵、卵巣のう腫
食欲がない、多く食べられない、少食傾向、食後に下腹が膨らんでくる、痩せて低体重、全身倦怠感、夕方に疲れて横になりたい、声も小さい、顔色不良、筋肉のしまりが弱い、活力はない、時に汗や寝汗がでる。上腹部圧痛があり、全体腹部軟弱無力
煩熱感、手足のほてり、おりものが少なく膣の乾燥感が出やすい、目やのどの乾燥、皮膚の乾燥、腰痛、寝つきが悪い、疲れやすい、基礎体温の低温期が若干高め、無排卵。
寒がり、手足やおなかの冷え、冬につらく感じる、薄い尿が多い、特に冷たいものを食べると腹痛や下痢しやすい、睡眠時間が多い(多眠傾向)、おりものが多い、むくみやすい、基礎体温が低め、高温期が低いかない、卵巣のう腫。
気分の変調が多い、イライラ・憂鬱・落ち込み・焦りなどが不定に来る、特に生理前や排卵期に顕著にでる。月経不順、寝つきが悪い、寒がり・暑がり、時に食欲不振、基礎体温の安定さは欠如、月経痛、頭痛、肩こり、胸や乳房の張り感、乳房のしこりなど。
気分変調・不定愁訴に疼痛(固定部位・疼痛が刺さられているような痛み)があり、不眠、偏頭痛、月経痛、生理不順、基礎体温の不安定、卵巣のう腫、子宮筋腫
疼痛(月経痛・子宮内膜症・頭痛)、肩こり、冷えのぼせ、下半身のむくみや太い、便秘傾向、イライラ、月経前緊張症、新陳代謝の低下(太りやすい)、子宮筋腫など。
疼痛(月経痛・頭痛)、むくみ、腹部の張り感、時に下痢しやすい、めまい、動悸、低力低下、続発性不妊症、冷えのぼせ、卵巣嚢腫、子宮筋腫など
疼痛(腹痛・月経痛・側腹痛)、腹部の張り感、においがきついおりもの、発熱の場合もある、皮膚湿疹・陰部掻痒、子宮頸管炎・子宮内膜炎・卵管炎・骨盤炎、卵管性不妊、子宮筋腫など
これらの体質をしっかり鑑別したうえ漢方治療を行えば、不妊治療および妊娠しやすい体質づくりには大いに役に立ちます。
不妊症に対する中医学(漢方医学)の診断はもちろん五臓六腑および精気血の診断をする必要があります。
すべて書けませんが、次のことについて大まかに述べます。
女性不妊症にとっては、肝腎は一番大事ですね。
腎は生殖をつかさどる。腎の強さは直接に不妊に関係します。腎の精(気)が十分であれば、月経周期・排卵・妊娠などが正常にできます。腎が弱くなれば、月経不順・不正出血・無排卵・妊娠しても流産しやすいなどがでやすいです。
肝は血液を貯蔵調節し、気血の流れを調節する。肝血の不足になれば、月経不順・不正出血・めまい・血色がわるいなどになります。肝気のうっ滞になれば、排卵障害、高温期に転化しにくい、月経前緊張症、黄体機能不全、不定愁訴、イライラ、憂鬱、気分変調などになります。
心は精神・心理・血液循環などに相当します。ストレスや不妊治療などのプレッシャーなどは不妊に対するマイナスな影響が多々あります。心血や心気が十分に機能すれば循環にも良いし、よい精神になれます。
脾は胃腸消化・腸管などの免疫・血液のコントロール脾臓などに関与します。脾が強ければ栄養消化吸収できますし、精気血が十分に補充できます。また出血しすぎないようになります。
肺は気の逆上せをコントロールして、気の正常運行を保つようにする役割があります。
婦人、特に生殖年齢の女性、もちろん不妊症でも、瘀血の有無、性質およびその度合いなどについて、十分に考えなければならない要素です。
瘀血は二つの意味があります。①塊り・血栓・出血による固くなるもの ②循環の停滞・不十分さまということですが、いずれか有する場合もあれば、いずれもある場合もあります。
瘀血があれば、下記のことがよく出現します。 ①疼痛。おけつの強いほど、疼痛がひどく、場合により刺さられているような痛み。②瘀血による塊り・血栓・出血が出ることもあります。たとえば下腹部の腫瘤(子宮筋腫・子宮腺腫・卵巣のう腫・不正出血・血管のづまり) ③瘀血による水滞・むくみ・局部の張り感・痔・はれなどが出ることがあります。 ④瘀血は寒冷・炎症・圧迫・気の逆乱などにより増悪する。たとえば、冷えや寒冷飲食で生理痛の増悪、感染により疼痛の増悪、圧迫による疼痛の増悪、気の逆乱により瘀血衝心(動悸・不安・呼吸困難)などの精神症状が出ることもあります。
これらの瘀血症状は不妊症の治療の中、よく遭遇します。
痰湿水毒は不妊症病態に関与するもう一つの重要な要素です。
痰湿水毒の臨床症状は多くみられます。たとえば、①肥満・体重増加(痰湿) ②浮腫 ③尿不利(多尿・頻尿・少尿・夜間尿・) ④全身の倦怠感・気分の憂鬱・筋肉のもやもや感 ⑤おりものの増多 ⑥鼻水・くしゃみ ⑦心窩部のちゃぽちゃぽ感 ⑧腹部のごろごろに鳴る(腹鳴) ⑨下痢・軟便しやすい ⑩筋肉のしまりは弱い、ぶよぶよ感 ⑪皮膚の艶がない ⑫乳汁分泌などが挙げられます。
痰湿水毒は気の運行(肝)、消化吸収(脾)、排卵、黄体機能、ホルモンなどに多く影響します。
痰湿水毒の病態症状を適切に鑑別・治療できることは不妊症治療成功の鍵の一つとなります。
ここで、私の漢方医学の臨床経験で、下記のものについて述べます。
虚証か虚実錯雑証が多い。単純な実証は少ないと思います。
精血不足、陰精不足が一番多いです。瘀血や水毒を重ねて有することも少なくはないです。
気滞、陽気不足、痰湿、精血虚弱などによって、陰陽の転化はうまくできない。精から気への気化機能が弱いことです。
痰湿水毒・瘀血・肝鬱気滞、陽気不足などにより排卵がうまくできないことです。
体質・症状などから、排卵障害の原因を鑑別して治療することが肝心です。
1.不妊症の漢方医学体質診断
漢方医学(中医学)では、体質診断は非常に大切です。同じ病気でも体質により、その人の症状や臨床表現が違ってきます。不妊症でも体質の要素も非常に重要になります。
不妊症の方の体質についての分類は難しいですが、少なくとも下記のような十種類のタイプが存在していると思います。これらのタイプに多く出現する主要症状をまとめます
A.腎気虚弱型
発育不良、子宮過小、小型、体力が弱くて疲れやすい、精力性欲の弱い、活力が弱い、顔色の黒っぽいが多い、月経量が少ない、生理痛が出やすい、無排卵。
B.精血水毒型
精力性欲のよわい、顔色・血色の不良、むくみやすい、冷えやすい、時にめまい、肩こり、頭痛。月経痛、月経中に体力がより低下する、尿不利(頻尿・少尿・夜間尿など)、おりものが多すぎる傾向。腹部軟弱無力。無排卵、卵巣のう腫
C.脾虚気陥型
食欲がない、多く食べられない、少食傾向、食後に下腹が膨らんでくる、痩せて低体重、全身倦怠感、夕方に疲れて横になりたい、声も小さい、顔色不良、筋肉のしまりが弱い、活力はない、時に汗や寝汗がでる。上腹部圧痛があり、全体腹部軟弱無力
D.陰精不足型
煩熱感、手足のほてり、おりものが少なく膣の乾燥感が出やすい、目やのどの乾燥、皮膚の乾燥、腰痛、寝つきが悪い、疲れやすい、基礎体温の低温期が若干高め、無排卵。
E.陽気不足型
寒がり、手足やおなかの冷え、冬につらく感じる、薄い尿が多い、特に冷たいものを食べると腹痛や下痢しやすい、睡眠時間が多い(多眠傾向)、おりものが多い、むくみやすい、基礎体温が低め、高温期が低いかない、卵巣のう腫。
F.気滞鬱阻型
気分の変調が多い、イライラ・憂鬱・落ち込み・焦りなどが不定に来る、特に生理前や排卵期に顕著にでる。月経不順、寝つきが悪い、寒がり・暑がり、時に食欲不振、基礎体温の安定さは欠如、月経痛、頭痛、肩こり、胸や乳房の張り感、乳房のしこりなど。
G.気滞瘀血型
気分変調・不定愁訴に疼痛(固定部位・疼痛が刺さられているような痛み)があり、不眠、偏頭痛、月経痛、生理不順、基礎体温の不安定、卵巣のう腫、子宮筋腫
H.瘀血気逆型
疼痛(月経痛・子宮内膜症・頭痛)、肩こり、冷えのぼせ、下半身のむくみや太い、便秘傾向、イライラ、月経前緊張症、新陳代謝の低下(太りやすい)、子宮筋腫など。
I.瘀血水毒型
疼痛(月経痛・頭痛)、むくみ、腹部の張り感、時に下痢しやすい、めまい、動悸、低力低下、続発性不妊症、冷えのぼせ、卵巣嚢腫、子宮筋腫など
J.湿熱瘀血型
疼痛(腹痛・月経痛・側腹痛)、腹部の張り感、においがきついおりもの、発熱の場合もある、皮膚湿疹・陰部掻痒、子宮頸管炎・子宮内膜炎・卵管炎・骨盤炎、卵管性不妊、子宮筋腫など
これらの体質をしっかり鑑別したうえ漢方治療を行えば、不妊治療および妊娠しやすい体質づくりには大いに役に立ちます。
2.不妊症の漢方医学臓腑精気血についての診断
不妊症に対する中医学(漢方医学)の診断はもちろん五臓六腑および精気血の診断をする必要があります。
すべて書けませんが、次のことについて大まかに述べます。
女性不妊症にとっては、肝腎は一番大事ですね。
腎は生殖をつかさどる。腎の強さは直接に不妊に関係します。腎の精(気)が十分であれば、月経周期・排卵・妊娠などが正常にできます。腎が弱くなれば、月経不順・不正出血・無排卵・妊娠しても流産しやすいなどがでやすいです。
肝は血液を貯蔵調節し、気血の流れを調節する。肝血の不足になれば、月経不順・不正出血・めまい・血色がわるいなどになります。肝気のうっ滞になれば、排卵障害、高温期に転化しにくい、月経前緊張症、黄体機能不全、不定愁訴、イライラ、憂鬱、気分変調などになります。
心は精神・心理・血液循環などに相当します。ストレスや不妊治療などのプレッシャーなどは不妊に対するマイナスな影響が多々あります。心血や心気が十分に機能すれば循環にも良いし、よい精神になれます。
脾は胃腸消化・腸管などの免疫・血液のコントロール脾臓などに関与します。脾が強ければ栄養消化吸収できますし、精気血が十分に補充できます。また出血しすぎないようになります。
肺は気の逆上せをコントロールして、気の正常運行を保つようにする役割があります。
3.不妊症のお血についての診断
婦人、特に生殖年齢の女性、もちろん不妊症でも、瘀血の有無、性質およびその度合いなどについて、十分に考えなければならない要素です。
瘀血は二つの意味があります。①塊り・血栓・出血による固くなるもの ②循環の停滞・不十分さまということですが、いずれか有する場合もあれば、いずれもある場合もあります。
瘀血があれば、下記のことがよく出現します。 ①疼痛。おけつの強いほど、疼痛がひどく、場合により刺さられているような痛み。②瘀血による塊り・血栓・出血が出ることもあります。たとえば下腹部の腫瘤(子宮筋腫・子宮腺腫・卵巣のう腫・不正出血・血管のづまり) ③瘀血による水滞・むくみ・局部の張り感・痔・はれなどが出ることがあります。 ④瘀血は寒冷・炎症・圧迫・気の逆乱などにより増悪する。たとえば、冷えや寒冷飲食で生理痛の増悪、感染により疼痛の増悪、圧迫による疼痛の増悪、気の逆乱により瘀血衝心(動悸・不安・呼吸困難)などの精神症状が出ることもあります。
これらの瘀血症状は不妊症の治療の中、よく遭遇します。
4.不妊症の痰湿水毒についての診断
痰湿水毒は不妊症病態に関与するもう一つの重要な要素です。
痰湿水毒の臨床症状は多くみられます。たとえば、①肥満・体重増加(痰湿) ②浮腫 ③尿不利(多尿・頻尿・少尿・夜間尿・) ④全身の倦怠感・気分の憂鬱・筋肉のもやもや感 ⑤おりものの増多 ⑥鼻水・くしゃみ ⑦心窩部のちゃぽちゃぽ感 ⑧腹部のごろごろに鳴る(腹鳴) ⑨下痢・軟便しやすい ⑩筋肉のしまりは弱い、ぶよぶよ感 ⑪皮膚の艶がない ⑫乳汁分泌などが挙げられます。
痰湿水毒は気の運行(肝)、消化吸収(脾)、排卵、黄体機能、ホルモンなどに多く影響します。
痰湿水毒の病態症状を適切に鑑別・治療できることは不妊症治療成功の鍵の一つとなります。
5.よくみられる病態に対する漢方医学(中医学)認識
ここで、私の漢方医学の臨床経験で、下記のものについて述べます。
A.基礎体温一相性の無排卵
虚証か虚実錯雑証が多い。単純な実証は少ないと思います。
精血不足、陰精不足が一番多いです。瘀血や水毒を重ねて有することも少なくはないです。
B.黄体機能不全症
気滞、陽気不足、痰湿、精血虚弱などによって、陰陽の転化はうまくできない。精から気への気化機能が弱いことです。
C.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
痰湿水毒・瘀血・肝鬱気滞、陽気不足などにより排卵がうまくできないことです。
体質・症状などから、排卵障害の原因を鑑別して治療することが肝心です。
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